シリアの経済状況と内戦下で暮らす人々

長期化する内戦で、シリアの台所事情は火の車。物価の高騰、シリアポンド(SP)の急落、経済制裁。金持ちは祖国を捨て、中間層は貧困層に転落し、貧困層は死につつある国。経済が回らなければ、国家の運営が立ち行かなくなるし、そこで暮らす人々は飢えるしかない。

http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/plunging-currency-adds-to-syrias-gloom/2013/07/16/f0d53210-ed6b-11e2-bb32-725c8351a69e_story.html

海外に取材に行く際、銀行で円をドルに両替します。民主党政権下では未曾有の円高に見舞われ、日本経済は別にして、僕自身は大変助かりました。シリアの通貨はどうなんでしょうか。今回の民衆による革命が起こる(2011年3月)以前は1ドル=47SPでした。その1年後に僕がシリアを訪れた際のレートは1ドル=76SP(闇両替)。正規だと1ドル=61SPぐらいだったかな。そして現在のシリア、先週の闇両替でのレートは1ドル=300SPオーバーです。

ダマスカスでいくつかの商店を営むAbu Hashim(52)はSP安に不満を漏らします。「私が貯金していたお金はいざというときのための保険だった。しかし、これだけ通貨の価値が下がれば、貯金したお金も意味がなくなる」。紙切れになる日も近いかもしれませんが、先週、あまりの急落ぶりに政府が為替介入に踏み切りました。それで現在は1ドル=240SPで取引されているようですが、焼け石に水でしょう。

「どんな手段を講じようとも、十分な成果は得られない。生産力が低下している状態で、経済が回復するわけがない。流血が止まらなければ、いつまでも経済は落ち込んだままだろう」と経済に詳しいくSamer Kantakjiは答えています。

EU域内へのシリアの石油輸入を禁じる制裁により、毎月4億ドルの損出がシリアの経済を圧迫し、国内総生産の12パーセントを占めていた観光産業に至っては、壊滅状態です。この損出を穴埋めするため、ダマスカス市内のいくつかの検問所では市民から通行税を徴収しています。

シリアでの主要産業である農業も打撃を受けています。長引く内戦により農作物の生産が困難になり、生産高は落ち込み、国内への食物の供給が停滞しています。必需食料品である主食のパンには政府からの補助金で価格は一定を保っていますが、その他の野菜や果物に至っては、日々大きな変動が見られます。例えば、卵です。昨日は6つの卵が40SPだったのが、翌日には60SPに跳ね上がったりします。革命以前は12SPで購入できたものが。

インフレが顕著になればなるほど、国民の不満は高まります。そのため、パン以外の食料品の一部を補助金の対象に加えたり、公務員の給料を引きあがることを検討したり、様々な施策を講じていますが、仮に国民の不安が多少でも緩和したところで、シリアの経済は安定からは程遠いところに位置しています。紙幣の増刷を実施しなければ、ロシア、中国、イランとの信用取引にも亀裂が走る事態も予測されます。仮にこれらの国々からの物流が途絶えれば、ハイパーインフレに突入することになるでしょう。既にその兆候が現れていますが。

現在、ラマダンですが、ラマダン初日、多くの人々が友人や家族を招いて、盛大なパーティーを催しますが、その話もダマスカス市内ではあまり聞かれないそうです。日々の食べ物にも困っている人々がシリアには数多くいます。そういった記事はよく目にします。シリアで今最も必要なのは武器じゃなくて食料なんだろうなあ。腹が減っては戦はできぬ。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/jul/10/help-syria-now-tomorrow-too-late

こちらはダマスカス中心部から東グータ地区を訪れた人のお話です。東グータ地区を構成しているのはドゥーマ、ハラスター、あの辺りになるのかと思います。一時期、自由シリア軍が猪突猛進の勢いでダマスカスを目指し奮戦していましたが、ここ2、3ヶ月、完全に周囲を政府軍で囲まれて、身動きが取れない状態に陥っています。2百万にいた人口は半分の百万人にまで落ち込みました。また物資の供給が滞り、武器はもちろん、食料の不足にもあえいでいます。

毎日のように地上から空から砲弾が降り注ぎ、一般市民の多くが命を落としています。老若男女問わずです。死者が出ない日は一日たりともありません。ある日は9人、翌日は28人、また翌々日は11人といった具合です。

既に8ヶ月間、この地区には電気が来ていません。そのため安価な発電機を使用していますが、ガソリンを大量を使用するため、常に動かしているわけもいきません。固定電話、携帯共に電波が遮断されています。小麦の不足が深刻で、一日せいぜい2回の食事ができるかどうかです。

遺体は祈りを捧げることもなく、素早く埋葬します。なぜなら、墓地はしばしば政府軍によるミサイルの標的になることがあり、その場に長く居残ることを参列者は望まないからです。金曜礼拝の日、モスクから礼拝を告げるアザーンが市内に鳴り響きます。しかし、アザーンの時刻がそれぞれのモスクによって異なるのです。理由は一箇所のモスクに大勢の市民が集まることを防ぐためです。礼拝の時刻を狙ってモスクを狙い撃ちする政府軍から少しでも死傷者を減らすための方策です。この町では既に5つのモスクが破壊されています。

子供たちの3分の2以上が学校に通っていません。理由は親が常に目の届く範囲に子供がいないと不安だからです。また開校している学校が少なく、その大半が砲弾から身を守るために地下に設営されています。病院も同じです。

ここで暮らす人々は震える毎日を過ごしています。政府軍がこの町を支配することになったら、虐殺が起きることは目に見えているからです。そのため自由シリア軍は命がけで政府軍と戦っています。我々には残された選択肢は二つ。戦って死ぬか、ただ殺されるか。

正しい道はたった一つしかない。シリアが我々の土地であるかのように、シリア人が我々の奴隷であるかのように、そんな振る舞いをするアサド政権をシリアから引きずりおろすための手助けが必要なのです。欧米の政治家は軍事介入を忌避する。その代わりに政治的解決を求める。アサド政権下で28ヶ月間、既に10万人以上が殺されている、そんな状況で彼が反体制派と権力を分かち合うような真面目な交渉をすると思いますか。アサドが政権に居座る限り、政治的解決なんて無理でしょう。

私は今日にでも貴方の支援を期待しています。明日では遅すぎるかもしれないから。