一枚岩が築けない反政府勢力-自由シリア軍vsアルカイダ系武装勢力

メディアでも大きく取り上げられているので、ブログでも一通り書き記しておこうかと。政府軍と反政府軍の争いは2年以上の月日が流れ、非常に厄介な様相を呈しています。双方共々、厄介です。政府軍の内部構造を把握しようとすると、正規軍、治安部隊、シャッビーハ、リジャーン・シャビーエと大小の組織が蠕動してるし、反政府軍も自由シリア軍の枠内でも、各県により構成されているメンバーや組織名が無数に存在しています。また政府軍にはヒズボラ、イランの革命防衛隊、イラクのシーア派部隊が、反政府軍には外国勢力と言われるイスラムに厳格な組織が、その外国人勢力にも多数の組織があり、自由シリア軍の士気の乱れにあきれ果てて、外国人部隊に志願するシリア人もいたり、頭がパンクします。パンクしたら使い物にならないので、僕は適当に受け流しています。

外国人武装勢力の代表格がヌスラ戦線かなと思います。よくシリア関連の記事でも目にします。彼らは主にシリア北部を拠点としています。イドリブ県、アレッポ県、ラッカ県に展開しており、特にラッカ県の政府軍を撃退したのはこのヌスラ戦線になります。しかし、ラッカが陥落して以降、この土地を巡る自由シリア軍とヌスラ戦線の双方がいがみ合いを始めました。銃撃戦にも発展し、多数の死者が出たり、この県で暮らす市民も自由シリア軍側とヌスラ戦線側とに支持派が分かれて、デモまで起きています。ということを、以前にどこかの新聞の記事で読んだ記憶があります。前置きはここまでにして、とりあえず、今回の事件を4つのメディアの記事から引用したいと思います。固有名詞、組織名などは英語表記にします。読み方分からないから。http://www.reuters.com/article/2013/07/11/us-syria-crisis-commander-idUSBRE96A10620130711?feedType=RSS&feedName=worldNews

まず初めに今回の件を知ったのが、ロイターの記事でした。自由シリア軍の「Free Syrian Army’s Supreme Military Council(SMC)」のメンバーの1人でありKamal Hamami氏(通称、Abu Bassel al-Ladkani)がラタキアで「Islamic State of Iraq and the Levant(ISIL)」に殺害された。自由シリア軍の広報官のQassem Saadeddine氏はISILから電話を受け、「Abu Basselを殺害した。SMCのメンバー全てを殺害してやる」と言われたという。当日、Abu Basselは体制派との戦闘に備えてISILとの作戦についての話し合いが持たれる予定だった。

https://now.mmedia.me/lb/en/nowsyrialatestnews/tension-soars-as-syria-rebel-chief-shot-dead-by-jihadists

AFPの記事では、このISILを「Islamic State of Iraq and Syria(ISIS)」と記しています。LEVANTをSYRIAと限定しているためかな。ロイターでもAFPでもこのISISをアルカイダ系の組織と報じています。事件の概要がこの記事には掲載されています。Abu Bassir(Abu Bassel)一団を率いた車列がISISの検問を通過する際に銃撃を受けた。銃撃が起きる前、検問所でISISのメンバーが「我々の司令官であるAbu Ayman氏にお前たちの通行を許可するなと命令を受けた」と警告を発した。するとAbu Bassirが「お前たちは我々を助けにきたのか、それとも我々の重荷になりに来たのか」と詰問する。しばらくしてAbu Ayman、本人が現場に到着し、「こいつらはイスラムとは無関係の奴らだ」と発すると、詳しい動機を説明することなく彼を殺害した。しかし、これとは別にThe Syrian Observatory for Human Rights(SOHR)はラタキア北部の自由シリア軍の検問所をISISが襲撃するところに出くわし、それを制止しようとしたAbu Bassirが巻き込まれ死亡したと伝えている。AFPがAbu Bassirにインタビューした際の発言も引用している(2013年5月)。

「聖戦に参加するため祖国を発ち、我々の国に来た者たち。しかし、ここ(シリア)は我々の国だ。外部の人間を必要としないし、彼らにこの国を任せるつもりはない。戦争が終わったその時は、祖国に引き返してもらわなければ」

彼は穏健派として知られ、強硬派の外国人勢力との対立が以前から指摘されていた。ちなみに今回の件以外にも、先週もイドリブ県で自由シリア軍がISISにより数十人殺害されている。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/death-of-key-free-syrian-army-commander-heralds-a-brutal-new-chapter-in-conflict-8705975.html

次は「The Independent」から。ISISの素性に触れています。彼らはその名の通り、イラクからの志願兵。今年初めに結成された。イラクでは政府へのテロ活動に従事し、シリアではヌスラ戦線の傘下で活動している。しかし、現在はヌスラ戦線から分裂し、独自で活動している。今年の4月にイラクのアルカイダを牽引する指揮官al-BaghdadiがISISとヌスラ戦線の統合を主張したが、ヌスラ戦線の指揮官 Abu Mohammed al-Golaniが拒絶し、統合は実現しなかった。しかし、両者共にal-Baghdadiの指揮系統に置かれていると言われている。

また今回の惨事にFSAの広報官Louay Mekdadは「ISISが我々を標的にしていることは決定的だ。彼らは分別のある地域(反体制派支配地域)で良識ある人々(自由シリア軍、または彼らの支持者)を拘束し始めている。これは許しがたきことである」と語った。そして、「ISISはAbu Bassirを殺害した犯人を我々に引き渡すべきである」と付け加えている。

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/10176996/Syria-moderate-rebels-accuse-al-Qaeda-groups-of-murdering-commander.html

最後にテレグラフ。こちらは活動家へのインタビューを掲載している。「Abu Bassirが殺害された報復としてISISへの攻撃を準備中である」とこの活動家は述べている。事件のあらましは他のメディアと変わりはないですが、記事の結びとして、自由シリア軍には外国人勢力と争う余力はないと書かれています。欧米からの武器援助は一向に届く気配がない。それに比べて外国人部隊は豊富な武器と資金の提供を受けている(カタール、サウジアラビアなどなど)。そして志願兵には給与まで支給している(その他に一般市民への食料の配布から医療や清掃などの公共サービスまで施されている事例も見受けられる)。自由シリア軍はすっからかん。シリアの行く末は真っ暗だ。そうイドリブの自由シリア軍は嘆いているとのことでした。

どの記事にも欧米の提案する自由シリア軍の強固な武装化に関する発言が見られます。悪影響が出るのは必至であると。確かに、内輪もめが目に余るほど深刻な事態に陥っています。自由シリア軍と外国人勢力を天秤にかけた場合、現段階ではどちらに傾くか予想できない状況です。これが外国人勢力に傾いたら、武器の支援は完全に反故にされるでしょう。となると、武器の支援を得るには、外国人勢力を批判、排除する必要性が自由シリア軍には出てくる。この辺り、複雑な駆け引きがありそうです。それと、ロシアがまた化学兵器を持ち出して、反体制派が使用したなどと公言するから、大国同士の駆け引きも面倒なことになってきました。ただここ最近、ホムスからの活動家からの報告を見てるんですが、こちらは内輪もめ云々より、とにかく政府軍が反政府軍を圧倒しています。世界遺産の城塞クラック・デ・シュヴァリエやハーリド・イブン・アル=ワリードの墓所にも容赦なく砲撃が着弾しています。もうシリアに行くことはないだろうなあ。そんな思いがふと頭をよぎる今日この頃です。