クサイル陥落

政府軍が優勢なのは分かっていたけど、3週間足らずでクサイルが政府側の手に渡るとは。いや・・・3週間も持ちこたえたと言うべきなのだろうか。レバノンからクサイル経由でシリアに入国していた記者や写真家が多数いたけど、政府軍の手に落ちた以上、それも事実上不可能となる。これから先、政府軍と共闘したヒズボラがシリアの内戦にどこまで深入りしていくのかが、シリアの行方を大きく左右すると思う。既にアレッポには千人単位でヒズボラが集結しているという情報もあるし。

クサイルが制圧されたのが、水曜日の朝。前日に自由シリア軍が「町の50パーセントが政府側の手に渡った」と答えていたが、その時点で既に勝敗は決まっていたのだろう。自由シリア軍は市内からの撤退を決断し、クサイル郊外の村々を拠点に再びクサイルを奪還する腹積もりらしい。しかし、今回の戦闘で自由シリア軍を悩ませたのがモノ不足である。武器、弾薬、食料、医薬品、そして人員である。これまでのようにレバノンからクサイルを通じて流れていた人や物の流れが、クサイル自体が戦火に包まれ、補給ルートが完全に遮断された。逆ルートという発想もある。レバノンが駄目なら、シリア側からクサイルに人員や物資を送り込むという手段。しかし、これは不可能である。ホムス県唯一の反体制派地域がクサイルであり、周辺の都市は政府軍が守りを固めている。まさに陸の孤島。密輸ルートを確保しながら、クサイルから脱出するのが精一杯というのが実状だった。それでも、補給ルートが潰された状態で、3週間の踏ん張りはクサイルが地理的にも重要な都市だったからである。

クサイルが陥落したことは何を意味するのか。クサイル攻防戦で手柄を立てたヒズボラが今後、どのようにアサド政権と関わっていくのかが注目される。クサイルはシリア領内である。そこにヒズボラが展開することをシリア政府は歓迎するのか、それとも内心では苦々しく思っているのか。歓迎の意向を示せば、クサイルからさらにヒズボラがシリア各地に進軍する可能性が考えられる。しかし、ヒズボラがシリアに深入りしたことで、レバノン国内での宗派間抗争が激化している。また今回の戦闘でヒズボラの戦闘員が二百人近く殺されている。イスラエルとの関係もある。ヒズボラにどこまで余裕があるのか。そして、クサイルの陥落はシリアと周辺国の情勢をまた一段と複雑なものにしたことは確実である。

クサイルには活動家が何人もいる。彼らの悲痛な叫びは胸に響く。クサイルが陥落した後の彼らの言葉を一部抜粋してみた。

 “Now I lost everything. I cannot return to my town anymore.”

 “We are being exterminated by the Shiites,”

 “We are dying slowly. Everyone was martyred here and all that’s left is us.”

“I’m going to be honest with you, the battle will be transferred to Lebanon very soon,”

参考サイト

http://www.nytimes.com/2013/06/06/world/middleeast/syria.html?pagewanted=1&_r=0&hp