クサイル攻防戦-追加-

5月19日から始まった政府軍と自由シリア軍との攻防戦が3週目に突入しました。ヒズボラの支援と圧倒的な火力を有する政府軍は徐々に自由シリア軍が築いた包囲網を侵食しています。懸念されるのがクサイル市内に取り残されている一般市民です。

今回の戦闘により、1500人ほどの負傷者がクサイルの医療施設で治療を受けています。クサイルの病院は真っ先に政府軍の標的にされ、負傷者は簡易 型の小さなクリニックに収容されています。数少ない医師と看護師による応急処置で辛うじて一命を取り留めている患者は少なくありません。どれだけ優秀な医 師でも治療するためには医薬品が必要です。しかし、クサイルの供給ルートは政府軍により完全に遮断されています。医薬品に限らず、日用品、食料すらも滞 り、インフラが破壊されているため、電気や水道の供給も脆弱です。

赤十字がシリアのアサド政権に、クサイルに取り残されている一般市民への救援物資の支援を申し入れていますが、外相のワリード・モアッレム(Walid Moallem)は「作戦が終了するまでは立ち入りを禁じる」と赤十字の提案を拒絶しています。

クサイルでは廃墟と化した家々の一部を改築して50軒ほどのクリニックを設置しています。それでも増え続ける負傷者に対応できるほどの人員も物資も ありません。今月スイスで開催予定のジュネーブⅡ。アサド政権の代表団が出席するはずですが、反体制派のシリア国民評議会は内部分裂が起きている上に、彼 らが申し入れている「ヒズボラのシリアからの撤退」と「アサド大統領の退陣」の条件を現政権が受け入れることは100パーセントありません。つまり、現時 点で会議が決裂することは目に見えています。対話で解決できるほどシリアの情勢は楽観的じゃない。誰の目から見ても明らかなはずなんだけど。

赤十字のアラブ版「赤新月(arab red crescent)」がシリア国内で活動しています。政府の監視下にあることはもちろんですが、決して政権側の人々だけに手を差し伸べるわけではありませ ん。バニアスの虐殺の際にも、赤新月は現地入りして、遺体の処理や負傷者の手当てを行っています。中立的に活動をしている国際医療団体です。反体制派が牛 耳っている町にも潜り込み、そこで暮らす人々の診療や物資の供給を行っています。そのため政府軍に拘束される職員も少なくありません。それでも彼らはシリ ア国内、ダマスカスを含めた危険な地域での活動を積極的に行っています。

“You save one soul, you see the smile of one child, it gives you power for months,”

命に貴賎はありません。体制派だろうと反体制派だろうと、彼らの仕事は命を救うことです。アレッポのダル・シファ病院での取材中、政府側の民兵 (シャッビーハ)が3名運び込まれてきました。頭や手足から血を流した瀕死の彼らを医師は当たり前のように治療を施していました。その様子を見て、思わず 涙が溢れ出た。でも、その1ヵ月後にダル・シファ病院は空爆され、その際に医師が1名と看護師が数人、犠牲になった。

参考サイト

http://www.reuters.com/article/2013/06/03/us-syria-crisis-icrc-idUSBRE9520MG20130603?feedType=RSS&feedName=worldNews

http://www.dailystar.com.lb/News/Middle-East/2013/Jun-03/219302-battle-for-qusair-enters-third-week-civilians-remain-trapped.ashx#axzz2V8l8ztBU

http://www.nytimes.com/2013/06/03/world/middleeast/syrian-red-crescent-volunteers-sidestep-a-battle.html?pagewanted=1&_r=0&ref=middleeast