混迷するシリア情勢

数日前にシリアとの国境に近い町、ハタイ県に属するレイハンリで車爆弾が炸裂しました。市内の市民ホールと郵便局前で2度の爆発。死者は46名、負傷者は100名を越えます。僕は去年の11月、レイハンリからシリアのイドリブ県に入国しました。国境は鉄条網で覆われていますが、完全なザルです。検問に向かうと、トルコ兵が「ここは閉鎖中だから、入国は出来ない」と僕とフィクサーに告げました。「ただ、あそこからなら入れるけどな・・・」と指差した方向には鉄条網が捻じ曲げられて、ポッカリと穴が空いている。当時はそんな感じでした。ただ今回のテロを受けて、現在はレイハンリから容易くシリアに入国できるかは不明です。レイハンリ自体、シリアのような雰囲気です。イドリブやアレッポから逃れてきた難民、これから聖戦に向かう自由シリア軍、彼らを後方支援する医師や商人、そして彼らを快く思わない現地人。テロの実行犯が誰なのか、容易な判断は下せません。今のシリア、周辺諸国を巻き込み、様々な思惑が国家から個人に至るまで蠢いています。ちなみに、レイハンリに行きたい!ここからシリア入りしたい!そんな無謀な方のために、安価な交通手段を書き記します。イスタンブールから長距離バスでアンタキヤまで向かう。アンタキヤからミニバスでレイハンリ。以上です。

CNNが分かり易くシリアの情勢を説明していました。タイトルは「5 reasons Syria’s war suddenly looks more dangerous」と題された記事です。冒頭部分でシリアの状況をソマリアに例えています。ソマリアと言えば、「無政府国家」の代名詞のような存在。そのソマリアを押し退けて、今のシリアは「無政府国家」の頂点に君臨しています。

Israel and Hezbollah’s proxy war

つい先日、イスラエルがシリアの首都ダマスカスを空爆しました。イスラエルからの公式声明は出ていませんが、イスラエルがシリアに深い関心を寄せていることは明確です。その根拠はレバノンの武装組織「ヒズボラ」にあります。アサド政権がイランから輸送された「ファテフ110」をヒズボラの手に渡ることを怖れたイスラエルがその貯蔵庫を空爆しました。シリアのアサド政権の弱体化がイスラエルの本意ではなく、アサド政権を影で支えるイランとヒズボラへの警戒感が空爆という事態を引き起こしました。

More than ever, it’s sectarian

シリアでの内戦は「ボスニア紛争」の様相を呈している。ボスニアでの民族間の対立が、シリアでは宗派間の対立へと発展している。アサド政権はアラウィ派(シーア派系)、それに対する自由シリア軍は大半がスンニ派で構成されている。バニアスで起きた虐殺もアラウィとスンニとの亀裂から生じたものであると思われます。そしてアラウィを支えているのがヒズボラ。ヒズボラはシーア派であり、アサド政権とは仲睦まじき関係。この2年間、ヒズボラへのシリア内戦の関与は明確でありながらも、憶測の範囲内で報じられてきましたが、現在はヒズボラのトップであるナスラッラーが「我々はアサド政権が崩壊するのを黙って見届けることはできない」と公式に宣言し、レバノンから越境して主にホムス県周辺で自由シリア軍と激しい戦闘を繰り広げています。ちなみにイランもシーア派であることから、革命防衛隊がアサド政権を支えるためにシリア国内に展開しています。

Al-Assad goes for broke?

この2年余りの内戦で国家そのものが崩壊の危機に瀕しています。当初はデモ隊に発砲する程度が、自由シリア軍が結成されると、政府軍は戦車やロケット弾などの重火気で対抗し、反体制派が支配した地域には迫撃砲を撃ちこみ、戦闘機で爆弾を投下、さらにはスカッドミサイルを発射するという横暴へと変貌していきました。特に戦略的に重要な都市は徹底的に痛めつけられました。町は廃墟となり、瓦礫が山積し、住民は避難民として路頭に迷いました。空域は政府軍の手中にあり、飛行禁止区域の設定も周辺諸国や大国ロシアとの関係から欧米は躊躇しているの現状です。

Chemical Weapons

シリアには化学兵器があります。現在、この化学兵器の使用疑惑が多国間で盛んに議論されています。米国が軍事介入する動機の一つとして取り上げられるのが、化学兵器の使用に関してです。軍事介入とは明言しないものの、オバマは「RedLine」という曖昧な表現で、アサド政権に揺さぶりをかけました。それでも今年に入り、化学兵器が使われたのではないかという報告が様々な方面から聞こえるようになりました。しかし、誰が使用したのかは国連を含めた国家間で意見の食い違いがあり、結局うやむやなまま現在も調査は進行中です。

Players and Puppets: Iraq, Turkey, Lebanon and Jordan

イラクはスンニ派が少数でシーア派が多数で構成されています。アサド政権とは好意的ではないにしても、決して対立しているわけでもありません。しかし、シリアとイラクとの国境が自由シリア軍に脅かされ、シーア派として快く思っていない面もあります。またスンニ派は少数でありながらも、アルカイダを有している過激派の巣窟がイラクです。トルコは反体制派を支持しています。ただ反体制派にもクルド人勢力も絡んでおり、トルコも心境は複雑です。ヨルダンは難民の問題が最優先といったところです。既に45万人の難民が国内に流れ込み、ヨルダンの人口比率の7パーセントにまで迫っています。財政事情にもヨルダンは大きな負担を強いられており、支援金の不足に不満を募らせています。レバノンはシリアの内戦の波及を受けて、国内でも宗派間の対立が徐々に表面化してきました。

説明が雑で申し訳ないです。混迷するシリア情勢からは今後も目が離せません。とにかくシリアは地理的にマジでヤベえー国だということが分かりました。シリアの不安定化は中東全域も巻き込む、深刻な暴力装置となりえます。既に発動しちゃってますが。パンドラの箱は開かれてしまったので、何とか底の方にひっそり眠る希望を見つけ出してほしいと切に願います。ただ神話ではなく現実に起きていることなので、そんな都合の良い希望なんて今のシリアにはないと思います。

参考サイト

http://edition.cnn.com/2013/05/08/world/meast/syria-more-dangerous/index.html?hpt=wo_c1