シリアへの素朴な疑問-支援とは何か-

ガーディアンのシリアに関する記事は着眼点が素晴らしいと思います。以前に紹介した国連の使途不明金もそうですが、今回はよく話題に上がる「支援」の行方について分析しています。国連への痛烈な批判です。原文を推奨します。

https://www.theguardian.com/world/2016/oct/28/syria-aid-relief-effort-key-questions-guardian-briefing

・シリアではどれほどの人々が支援を必要としているのか

支援が必要とは物資が届かないことであり、つまり包囲されている地域で暮らす人々がその判断基準になります。「包囲」の基準には3つあります。武装組織に包囲されている。人道支援が継続的に行き届かない。病人や負傷者が自由に出入りできない。

国連の推定では17の地域で586200人が包囲下で暮らしています。4880000人が厳しい状況下に置かれています。これに対して、民間団体のSiegeWatchは39の地域で996975人が包囲下で暮らしていますが、この数字にアレッポ東部の275000人は含まれていません。さらに21の地域でアサド政権によって包囲されるかもしれない可能性を指摘しています。さらにある別の団体によれば、アレッポを含めれば、1500000人が包囲下で生活を余儀なくされていると報告しています。同じ数字を出している組織にMSFもあります。

・どれくらいの支援物資が包囲下に搬入されているのか

国連はアサド政権に頭を下げて、何とか包囲網にある地域に物資を届けさせてもらえないだろうかと懇願しています。9月の停戦合意後、33の地域への搬入が許可されましたが、実際に6台のトラックが目的地にたどり着けたにすぎませんでした。許可はされたけど、物資の搬入を許さない。こうしたケースから支援が行き届いたのは20パーセントから33パーセントと推定されます。

それでも国連は許可された地域に関連して、物資の行方を見積もるがために、数字は高くなります。実際に届いていない地域があっても、許可された地域であれば、行き届いたことにしてしまうというアサド政権に肩を持つような統計を取っています。

・Cross-lineかCross-borderか

国境を越えて運ばれる物資がCross-border、シリア国内のアサド政権支配地域から反体制派支配地域に運ばれる物資がCross-line。国連が好むのがCross-lineですが、この方法は非常に効率が悪く危険です。

先月、アレッポに支援物資を運ぶ車列が空爆されました。ダマスカスを出発した車列は23の検問を通り、前線を駆け抜けて、結局は空爆され、6人の支援者の命を奪いました。ちなみに届ける地域はトルコから僅か35キロの地点でした。トルコから国境を越えて運ぶ手段はなかったのかと疑いたくなります。

しかし、国連はアサド政権の地域から反体制派の地域に運ぶ手法を好みます。なぜなら、それはアサド政権が喜ぶからです。国連はアサド政権に尻尾を振っています。それをいいことに、アサド政権はパフォーマンスとして、特にそれほど困窮していない地域を選んで、そこへの物資の搬送を国連に要求しました。

・問題なく供給される物資は何か

今年の1月から9月までに搬入予定の物資の20パーセント、50トン以上が目的地に到着する前にアサド政権に没収されています。主に医薬品が押収の対象品となっています。9月19日にダマスカス近郊のマーダミーヤ地区へICRCが物資を搬送しようとすると、搬入予定の物資の僅か10パーセントしか認められず、断念しています。WHOの医薬品の11.5トンも認められませんでした。その結果、1月から政府側支配地域に供給されている医薬品が64パーセントに上っています。

・国連の支援車両の到達点

これは文章ではなく、地図が掲載されています。9月の1カ月を記したものですが、ほとんどの地域には到着できていません。政府軍の支配地域、もしくは政府軍がほぼ制圧している地域だけに物資が送られています。

・誰が支援物資を送り届けているのか

アサド政権からの許可はギリギリまで出ません。そして包囲下の地域に物資の搬入が決まっても、時間はかなり制限されています。そのため、支援物資は国連が直接住民に手渡すのではなく、別の誰かに託されます。その誰かが信用できる人間なのかを国連は判断する術もなく。

国連によれば、今年に入り、4300000人に支援物資が行き渡ったと報告しています。しかし、ある人道活動家はこの数字は誤っていると指摘しています。国連は支援物資を届けるだけで、個人個人に手渡すわけじゃない。支援物資を必要とされる地域に置いていく。それが必要とされる人々に届くとは限らない。

またある活動家は反体制派地域に支援をする際に、支援物資のリストとさらに支援を受ける側の身元確認をアサド政権側から求められます。しかし、アサド政権の支配地域への支援物資の搬入はそういった手続きは一切必要とされません。

Siege Watchは国連の支援活動を監視するための第三者機関の設置が必要だと述べています。確かに上記のようないい加減な対応では、最も支援を必要としている人々に物資は行き渡らないだろうことは明白です。

・支援施設への攻撃の頻度は

国境なき医師団によれば、2015年は現地のシリア人スタッフ、23人が殺害され、58人が負傷しています。63の病院やクリニックが迫撃砲や空爆で損傷を受け、12の施設が完全に破壊されました。医療施設の攻撃の90パーセントがアサド政権側によるものとされています。医療施設のスタッフの死傷者であれば、95パーセントがアサド政権が犯行に及んでいます。

ここ数カ月は特にひどい状況が続き、国連の報告では、7月は44施設、8月は55施設が狙われました。赤十字赤新月社によれば、53人の医療従事者が内戦中に命を落としています。ロシアが軍事介入した昨年の9月末から、40以上の支援物資を運ぶトラックが攻撃を受けました。

・説明責任に問題があるのではないか

国連はシリアでの悲惨な現状に理解を示していますが、その根本、問題の本質、元凶は誰なのかは明確に示していません。全てが悪いという偏らない判断を行っています。国連の高官は言います。時々、我々は感じます。被害を受けている人々の憎悪は加害者に代わって、国連に直接向けられているのではないかと。しかし、我々はシリアで信じられないほどの努力をしていることをはっきりと示したい。我々はシリア内戦の悪化に手を貸しているわけではない。共犯者ではないのだと。

しかし、現地の人々は国連には批判的です。支援物資を運ぶ車列を狙った攻撃はあとを絶ちません。いったい誰が犯行に及んでいるのか。アサド政権とロシアである証拠は明確にもかかわらず、国連は決して主犯格については口にしません。そのため、支援物資はさらなら攻撃にさらされています。

国連の態度は煮え切らないものです。支援物資を行う活動は公平性を保つべきだ(だから攻撃されるべきではない)。こう発言する国連側に対して、救援活動を行うNGOは言います。シリア内戦の全てにおいて公平性を保つことはできない。しかし、我々が行う医療活動は厳しいほどの公平性を心掛けている。

ノルウェーの難民支援団体はダマスカスへの支援物資を運ぶためにアサド大統領の妻が運営するチャリティー団体を通しました。しかし、この難民支援団体の事務局長は国連でのシリア支援グループのアドバイザーも務めています。これに対してこの難民支援団体は答えています。私たちは体制派、反体制派、様々な側からの協力者を探した中で、ダマスカスに直接支援ができるチャリティー団体(アサド大統領の妻が運営する)を選んだんだ。

記事は以上です。これには大きな問題点があります。国連がアサド政権にこびている。共犯者に近い形です。しかし、アサド政権からそっぽを向かれたら、支援ができないという難しさもあります。ただ僕もシリアを取材していて、国連は完全にアサド側に立った中立性からは程遠い組織だなあと感じています。

最後になりましたが、突然ですが、明日、トークライブがあります。場所は代官山になります。直前の告知で申し訳ないのですが、何となく僕自身をアピールするのがすごく苦手なのと、何より人前で話すことが恐怖に感じるほどの口下手なので、何となく先延ばしにしてしまいました。ツイッターでは既に告知済みというのもあります。こちらになります。お時間がある方は気軽に立ち寄られてみてはと思います。

http://northpoleadventureproject.jimdo.com/大木ハカセのトークライブ-オトナ-の-ズカン/