アレッポで暮らす子供たち

アレッポの街中をうろうろしていると必ず子供たちに囲まれます。銃声が鳴り響き、迫撃砲の重い音が木霊しても、上空をヘリが旋回して、瓦礫の山が築かれても、子供たちは笑顔で走り寄ってきます。僕自身はあまり子供をテーマにして取材はしていません。「戦火の中で生きる子供たち」みたいなベタな内容の記事を書きたくないという理由もあります。それでも、ふとシリアでの生活を振り返ると、子供たちの姿が真っ先に浮かびます。

http://www.nytimes.com/2016/09/28/world/middleeast/syria-aleppo-children.html

そんな子供たちのお話しがNYTimesに掲載されていました。笑顔とは対照的な悲惨な光景が現在のアレッポで暮らす子供たちの姿です。

子供たちは遊ぶことも、眠ることも、学校に行くこともできません。些細な怪我や病気が死に至るケースもあります。窓のない地下室で恐怖に怯えながら、両親の懐で体を丸めています。アレッポ東部は殺戮場と化しています。250000人が暮らすアレッポ東部には100000人の子供たちが取り残されています。か弱い彼らはロシアとアサド政権による空爆の最大の犠牲者です。

周期的に子供たちの悲惨な状況はメディアを通じて世界に衝撃を与えます。しかし、それは今では当たり前のことであり、アレッポでは日常的な光景です。診療所には担架や床で空爆で負傷した子供たちが身もだえしています。停戦に希望を託した外交政策の結果、民衆蜂起から5年が経過して、アレッポは過去最大の被害を受けています。

「彼らは閉じ込められている。逃げることもできない」。Save the Childrenの広報官は答えます。「その結果、私たちは山のように積み重なった子供たちの犠牲を目の当たりにしている」。彼が言う子供たちとは反体制派だけでなく政権側でも犠牲が出ていることを伝えています。7月には反体制派が撃ち込んだ迫撃砲により49人の子供たちが亡くなっています。しかし、犠牲者の大半はアレッポ東部に集中しています。

停戦以後、犠牲者の半分が子供であるSave the Childrenは伝えています。空爆は激しさを増し、さらにはバンカーバスターなど破壊力が絶大な兵器の使用も確認され、もはや地下室ですら安全な領域とは言えなくなりました。そして、政府軍は上空だけでなく、地上でも戦闘態勢に入りつつあります。これはアレッポ全土を掌握しようとするアサド政権の意思が示されています。ただこれまでの各地での戦闘を見る限り、アレッポ制圧は困難を極めます。

Unicefは数週間前にアレッポ東部の子供たちが再び学校に行けるような計画を立てました。しかし、今はその計画は白紙に戻されました。「正確な数字は分かりませんが、間違いなくアレッポで行われている戦闘で犠牲になった子供たちは過去最大です。子供たちは学校に通うどころではありません」。Unicefの代表者は答えます。

アレッポ東部は戦闘だけでなくアサド政権に包囲されているため物資が行き届いていません。特に負傷した患者を手当てするにも十分な医療設備、医薬品が不足しているために、病院のフロアーには子供たちの遺体が寝かされたままです。35人の医師が働いていますが、一人が受け持つ患者は7143人と見積もられています。

アサド政権は安全に退去できるルートを住民に提示しましたが、住民の大半がアサド政権への不信感から拒絶しています。アサド政権は住民が退去しないのはできないからだ。テロリストが住民を人間の盾に利用していると非難しています。その他、故郷を離れることに未練がある住民も多くいます。

バンカーバスター、クラスター爆弾、焼夷弾、あらゆる兵器がアレッポには降り注いでいます。一般市民が暮らす居住区へのこうした殺傷兵器の使用は国際法に抵触し、西側陣営からも戦争犯罪だと言及されています。しかし、アサド政権、ロシアはうるさいハエどもだなあくらいにしか感じていないようです。アレッポを焦土(scorched earth)にしてでも支配権を反体制派から奪還したい強い意思が見られます。

アレッポで救助活動を続けるWhite Helmetsの隊員が言います。「アサドの攻撃は住民に恐怖を植え付けることだ。我々にとって住民の避難を手助けすることは難しい。空爆はランダムに行われるため、予測が難しい。夜中のときもあれば早朝のときもある。今行われている攻撃はアレッポに残ろうと決意した住民への報復という意味合いがある」。

NYTimesに限らず、他のメディアでもアレッポでの惨状は様々な角度から伝えられています。仮に本気でアサド政権がアレッポを支配下に置くことを目的としているのなら、恐ろしい殺戮がこの先も続きます。なぜなら今はまだアレッポを奪還する時期ではないからです。反体制派が根強いのもありますし、一般市民も多数取り残されています。仮に奪還するとなれば、反体制派の地域を木っ端みじんにするしかない。そんな選択肢を今のアサド政権は用意しています。