偽りの世界-理想と現実とのギャップ-

今月21日、アサド大統領がAPとのインタビューに応じました。そのAPがアサド大統領の発言の真偽を検証する記事を配信しました。以前、2015年2月、BBCのJeremyBowenが単独インタビューした際にはじっくりと彼の発言に耳を傾けましたが(http://t-sakuragi.com/?p=1901)、今回はこの記事にしか目を通していません。

https://apnews.com/2208a4c2eb384594af44ff49d158cfe7

アサド大統領が強調している点が三つ。一つ目はアレッポで住民を閉じ込めるような包囲網は築いていない。二つ目はアサド政権とロシアは支援物資を運ぶ車列を空爆していない。三つ目はアメリカ主導の有志連合がデリゾールで60人もの政府軍の兵士を空爆で殺害したのは偶然ではなく故意である。

二つ目の出来事に関してはアサド大統領は反体制派を非難すべきだ。空爆された場所は反体制派の支配地域である。当時は反体制派が政府軍にミサイル攻撃を仕掛けていたが、我々は反撃に出なかった。そして目撃者の証言は信用できるのかアサド大統領は疑問を呈します。映像には焼けた車や破壊されたトラックしか映り込んでいないじゃないか。

検証。国連から支援物資を受け取った赤新月社はアレッポに物資を運ぶためにトラックに積荷を上げていました。上空からの脅威を取り除くためにアサド政権、反体制派、ロシア、アメリカからは事前に了承を取り付けていました。しかし、20発以上のミサイルがトラック目がけて炸裂しました。ヘリコプターの羽音も聞こえ、樽爆弾が投下されました。目撃者の証言によります。

撮影された動画には夜空を走る閃光が映し出されており、巨大な爆発音が聞こえました。さらに焼け焦げた遺体、破壊された建物、焼失した支援物資も記録されていました。死者の中には赤新月社の他、駆け付けた救護隊も犠牲になりました。米軍のトップもロシアとアサド政権の仕業だと見ています。

アサド大統領は主張します。国連でさえ、トラックが空爆された事実はないと述べていると。しかし、国連は何が起きたのか述べないのは、誰が実行犯なのか名指しで非難できない立場にあります。アサド大統領はこれまで一度として支援物資を運ぶトラックを攻撃したことはないと公言します。これに関しては言葉を失うしかない。

アメリカはデリゾールで政府軍の兵士が60人以上殺害されたことに関して誤爆だと釈明しています。アサド大統領はその件について反論します。空爆された範囲は広く、1時間以上空爆され、近くにはテロリストはいなかった。つまり故意によって引き起こされたことを強調しています。

検証。状況証拠は現時点では少ないが、アメリカはイスラム国への空爆が誤って政府軍を狙ってしまった誤爆と説明しています。空爆にはイギリス、デンマーク、オーストラリアが加わっていました。アサド大統領の意図的に標的にしたという発言には「ばかばかしい」と述べています。

デリゾール市はアサド政権が40パーセントを支配下に治め、残りはイスラム国が陣取り、郊外もイスラム国が固めています。空爆された場所はアサド政権下に置かれた空港であり、イスラム国から猛攻撃を受けている最前線でした。

アレッポ東部がアサド政権に包囲されおり、支援物資の搬入は拒絶されている。アサド政権はそのことについて否定します。何年にもわたって支援物資の搬入はシリア各地で行われている。どうしてアレッポだけ阻止する必要があるのか。アレッポは包囲されていない。もし包囲されているとしたら、今頃住民は死んでいるだろう。でも生きているじゃないか。

検証。国連はこの1週間の停戦期間中のアレッポ東部への物資搬入の失敗はアサド政権にあると非難しています。その他の地域でも依然として物資の搬入は困難を極めています。今年初めから包囲されている18の地域で15の地域がアサド政権によって物資の搬送が拒絶されています。それらの地域で暮らす5百万の人々のうち支援物資を受け取ったのは僅か750000人を数えるだけです。国連の統計です。

今回取り上げたアレッポ東部の包囲網は7月17日に、ロシアの空爆支援を受ける形でアサド政権が東部に繋がる唯一の幹線道路「Castello road」を制圧したことによります。8月初めに一度は反体制派に包囲網の一部が破られましたが、再び制圧されました。そして現在は一切の物資が東部には供給されていません。40日ほど続いています。

病院を攻撃対象にしている理由をアサド大統領は答えます。「どうして病院を攻撃する必要があるんだ。病院には医療品を供給するものだろ?」。

検証。国境なき医師団は反体制派の支配地域にある病院、診療所への攻撃が頻繁に行われていることが報告されています。アメリカの人権団体は2011年から現在まで病院、診療所への攻撃は382回あったことを報告しています。そのうち293施設がアサド政権によって、16施設がロシアの空爆によるものです。

この記事を読むと、最初に紹介したBBCのときと比べてアサド大統領の態度に変化は一切ありません。しらばっくれているのか。それとも本当にそう信じているのか。今回のインタビューからアサド大統領の本音はうかがえていないようです。