停戦の行方

http://www.aljazeera.com/news/2016/09/syria-scores-killed-air-strikes-truce-deal-160910135209691.html

昨日、イドリブ市でロシアによる空爆がありました。標的にされたのは住宅街と市場です。イード(犠牲祭)を目前にして、市場には多くの買い物客がいました。死者は55人に上りました。さらにアレッポでは9人の子供を含めた46人が政府軍の空爆で犠牲になりました。これらの攻撃はアメリカとロシアがシリア内戦の終結に向けた協議に進展があったことを告げた、数時間後の出来事です。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/syria-peace-russia-us-assad-isis-al-nusra-a7236361.html

アメリカとロシアとの協議、その結果で導き出されたシリア内戦終結への道。仮に実行に移されるとしたら、大きな進展です。ロシアはアサド政権に反体制派地域への空爆を止めるように圧力をかける。なぜならアサド政権の空爆の最大の犠牲者は戦闘員ではなく一般市民だからです。ケリー国務長官は述べます。

“should put an end to the barrel bombs, an end to the indiscriminate bombing of civilian neighbourhoods”(市街地への樽爆弾、無差別な爆撃は終わらせるべきだ)

ただ、同等にアメリカはトルコ、カタール、サウジアラビアに反体制派の支援を抑制するように圧力をかけなければいけません。さて今回の合意では12日からの1週間ほどの停戦の実現が盛り込まれています。ただし、以前から指摘されている重要な点が疎かにされています。停戦から除外されているレバント征服戦線(ヌスラ戦線)とイスラム国です。彼らは今後も継続して、アメリカとロシアの標的にさらされます。ヌスラ戦線は喧嘩上等と停戦を歯牙にもかけていません。

アメリカはこの停戦をきっかけにしてアサド政権と穏健派とされる反体制派との交渉に持ち込みたいようです。リヤドを拠点とする「High Negotiations Committee」は歓迎の意向を示しています。なぜなら、少なくとも停戦が実行に移されれば、その間だけでも市民の命が少しは救われるだろうという絶望の中での希望を抱いています。

停戦の利点はもう一つあります。アレッポでアサド政権に包囲されている反体制派の地域に支援物資が運べるかもしれないという希望です。一度は包囲を突破されたこの地域もすぐさまアサド政権に奪還され、再び250000人以上の市民が飢えにさらされています。

https://www.theguardian.com/world/2016/sep/10/syria-peace-ceasefire-deal-us-russia-doubts-remain

当初、アサド大統領の追放を支持していたアメリカがロシアに歩み寄り、今回の交渉の妥協点を見いだしました。これってどうなの?とロシアはもちろん、アメリカの姿勢を懐疑的に見ているのが反体制派側のシリア人の大半の見方だと思います。今回の停戦にヌスラ戦線が除外されていることにアレッポで政府軍の包囲網を打ち破ろうとしている反体制派の戦闘員は不満を漏らします。

「俺たちはヌスラ戦線と共闘しているよ。なぜって?ここに展開しているのはヌスラ戦線だからだよ。包囲網を打ち破るためにヌスラ戦線は戦っている。アメリカがここにいるのか。いないだろ?ロシアは?ロシアは俺たちを爆撃している。そんなやつらのことを信じろっていうのか?」

ガーディアンが記事の中で指摘しています。アルカイダに忠誠を誓っていたヌスラ戦線は「レバント征服戦線」と改称し、アルカイダから離脱しました。反体制派の多くは彼らの決定を好意的に見ており、共闘姿勢が強化されました。しかし、アメリカの姿勢は変わらず、イスラム国と同様に現在もヌスラ戦線をテロリスト指定しています。そして停戦を実現したければ、反体制派はヌスラ戦線から手を切れと伝えています。アサド政権にとっては反体制派が一致団結しかけている今、この誘い水は有利に働くものと思われます。

アサド政権に続いてロシアは恐怖でシリアを支配しようとしています。学校や病院も構わず標的にする。兵糧攻めをして住民を飢餓に陥れる。その恐怖を和らげようとアメリカは奮闘していますが、周囲から見れば、屈服や服従と映ります。国連は既に革命当初から一貫してアサド政権の前に跪いています。ロシアが停戦期間中、アサド政権の空爆を止めることが出来れば、恐怖による支配がまだ一段と加速することになるでしょう。それが悪いことなのかの判断は人それぞれでしょうが。