アサド政権の最大の支援者-国連の存在意義-

国際連合の世界での役割とは何なのか。第二次世界大戦の反省を踏まえて、国際連盟から国際連合へと形を変えて、国際平和を願い設立された組織。手元にある細谷雄一氏の「歴史認識とは何か」を参照にすれば、国連憲章第七章第三十九条において、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する」とあります。そして、第四十二条では「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる」と書かれており、軍事的な制裁も可能です。ただし、国際連合の常任理事国には拒否権という便利なツールがあり、実際に発動することは困難です。

そして時間の経過と共に、シリアでは国連の存在などまったく無視され、次から次へと様々な国が軍事介入に乗り出しています。トルコも先週から自由シリア軍と共闘して、ジャラブロス制圧、さらにイスラム国とは名ばかりに、クルド人撃退のためマンビジを奪還するとかしないとか、そんな情報まで飛び交っています。

僕が直接的に国連の無能さを思い知ったのは、初めて訪れたシリアでの取材、ドゥーマ滞在時でした。国連の停戦監視団が市内に入ると、住民はアサド政権の残虐性を彼らに訴えかけました。しかし、群衆に恐れをなして、停戦監視団はすぐさま撤退。数日後、再び訪れた際には、アサド政権の政府軍の護衛を引き連れていました。もちろん、住民は口を閉ざすしかない。さらに、忘れもしない2012年4月25日、国連の4WDを囮に使い、自由シリア軍が姿を消した間隙をついて、政府軍とシャッビーハが大量にドゥーマになだれ込みました。それが僕の国連に対するイメージです。

https://www.theguardian.com/world/2016/aug/29/un-pays-tens-of-millions-to-assad-regime-syria-aid-programme-contracts

こちらの記事は大きな影響を世界に与えています。アサド大統領の近親者、それを取り巻く勢力に国連が大量にお金をばらまいているという話です。その中にはアサド大統領の妻であるアスマ・アル=アサドが設立した慈善団体、アサド大統領の従兄弟のラミ・マフルーフが経営する会社も含まれています。なぜなのか。国連は説明します。

「シリアでの国連の活動は制限されています。そのためアサド大統領が許可している一部の団体に資金を渡しています。それらのお金は適切に使われていると確信しています」

果たしてそうなのだろうか。少なくともそれらの資金が使用される対象はアサド政権にとって都合の良い人々たちではないでしょうか。お金に色はありません。最悪、国連の資金が兵器に流用され、何十万人というシリアの人々の命を奪っている可能性も考えられます。

国連は農業の促進を名目として、アサド政権に1300万ドルを提供していますが、そもそも内戦が続いているシリアで農業政策をまともに出来る場所はアサド政権の支配地域くらいですし、輸出をするにもシリアには経済制裁が課されています。燃料の供給に関連した事業には400万ドルの提供。

WHOが血液バンクに500万ドルを提供。ただし、この血液バンクは国防省の管轄です。アサド大統領の夫人であるアスマ・アル=アサドが設立した「Syria Trust charity」には850万ドル。彼女はアメリカとEUの制裁対象者です。

UNICEFはラミ・マフルーフの経営する機関、「Al-Bustan Association」に267933ドルを提供。彼はアサド大統領の幼友達であり、従兄弟です。さらに彼は多数の民兵組織と繋がりがあります。さらに彼はビジネスマンであり、携帯電話会社の「Syriatel」の経営者の一人であり、国連はここ数年間で700000ドルを支払っています。

こうした関係を見ると、国連はシリア内部で個人的に組織的な繋がりを有しており、相手側が欧米の経済制裁の対象者であっても、関係なく支援しているという事実です。少なくとも国連と繋がりのある会社は258社にのぼり、合計で5400万ドルと3600万ポンドを提供しています。そして大半がシリア政権側の企業や団体になります。

国連はダマスカスの活動での拠点を「Four Seasons hotel」に置いています。もちろん、ここはアサド政権のお膝元であり、このホテルでの支払いもアサド政権の収入源になります。高級ホテルです。

国連には国連の都合があります。アサド政権に頭を下げなければ、反体制派地域への支援物資が運べない。そのため資金を提供する。ただ、こういった実情を見る限り、国連はアサド政権の手のひらです。長期化する内戦で、アサド政権と国連との繋がりが癒着へと発展しているのでしょう。「ふーん、そうなんだ」で済まされる問題ではありませんが。それにしても、ガーディアンすごいなあ。