最も成功を収めている者たち-クルド人の圧倒的な存在感-

マンビジが人民防衛隊(YPG)を主体としたシリア民主軍(SDF)によって解放されました。包囲された町で徹底抗戦を誓ったイスラム国は皆殺しにされたのでしょうか。それとも降伏したのでしょうか。映像をいくつか見ているのですが、陥落したマンビジの市内は戦闘の傷跡は生々しいですが、イスラム国の姿かたちは映像にはあまり出てきません。僕が訪れたコバニは戦闘が終結して2カ月が経過したにもかかわらず、ミイラ化したイスラム国の遺体が町中に数多く野ざらしにされていました。

https://www.theguardian.com/world/2016/aug/19/isis-civilians-syria-manbij-human-shield

昨日、金曜日にSDFが公開した写真です。車両が点在しており、周囲には無数の人影が見えます。イスラム国の戦闘員ですが、SDFの許可を得て、堂々と撤退しています。なぜSDFは許可を与えたのか。それは車両には戦闘員の他に一般市民も紛れています。イスラム国は住民を人間の盾、人質にして、マンビジからの安全な退路を確保したようです。

http://www.aljazeera.com/news/2016/08/civilians-evacuated-kurdish-forces-bombed-hasakah-160819141551451.html

こちらは一昨日の出来事です。今年に入ってから、シリア北東部ハサカ県のカミシリ、ハサカなどでアサド政権とクルド人が小競り合いをしていました。コバニを訪れた際にも見かけましたが、クルド人の支配地域にはYPGとは異なった組織、アサイシュが治安を守っています。YPGが前線で戦う兵士なら、アサイシュは治安を守る警察です。このアサイシュがしばしばアサド政権と対立しています。

クルド人とアサド政権との関係は中立だと思われています。しかし、時には結託して共同戦線を張ることもあります。例えば、アレッポにポツンと存在するクルド人地区のシェイフ・マクスードだったり、アザズとアレッポを繋ぐ地域だったり、協力して反体制派から支配地域を奪還している節が見られます。

事の発端は、アサイシュがアサド政権の支配地域に入り込み、アサド政権が彼らを拘束したことから戦闘に発展しました。場所はハサカです。ハサカは大半がクルド人に支配権を握られていますが、アサド政権も一部分を確保しています。この小競り合いは、過去の小競り合いとは異なります。戦闘はやがて、アサド政権の空爆に繋がりました。クルド人に対するアサド政権側からの空爆は初めてのことです。ハサカには米軍の特殊部隊が展開されているため、懸念したアメリカがスクランブルをかけると、2機のアサド政権の戦闘機は退避したようです。

空爆により住民22人が殺害され、数千人が安全な地区へと退避しています。YPGは今回の空爆に激怒し、YPGの広報官は「武器を持てる者はアサド政権、ギャングどもと戦うんだ」と述べています。まだ先行きは不透明です。

ちなみに、このサイトの下にシリアの地図が掲載されています。シリアのクルド人地域はアフリン、コバニ、ジャジーラと3地方に区分されていますが、コバニとジャジーラ(右側)は既につながっており、今後はアフリン(左側)に展開するものと思われます。マンビジ陥落はその布石です。その先のイスラム国の拠点、アルバーブの解放がSDFの新たな作戦でしょう。クルド人が民衆蜂起で最も成功しているように僕には思えます。