ヌスラ戦線からレバント征服戦線へ

7月28日、ヌスラ戦線がアルカイダから決別し、新たな組織を立ち上げました。「Jabhat Fateh al-Sham, or “the Front for the Conquest of the Levant.”」。アラビア語だと「جبهة فتح الشام‎‎」。日本語だと「ジャブハ」が「戦線」、「ファトフ」が「征服」、「シャーム」が、、、ダマスカスを「アッシャーム」と言いますが、ここではシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを含めた地域の「シャーム」だから、「シャーム征服戦線」か「レバント征服戦線」ですか。頭文字を取って、「JFS」と記すことにします。ヌスラ戦線の最高司令官「Abu Mohammed al-Jolani」の素顔も公開されました。本名は「 Ahmed Hussein al-Shara」です。1984年生まれ、シリア南部のダラー出身です。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/nusra-al-qaeda-split-syria-jihad-jabhat-front-a7161321.html

ロシアとアメリカを筆頭に「ヌスラ戦線」はアルカイダ系に属するテロリスト集団に色分けされていました。それが、「ヌスラ戦線」を叩く理由にもなりました。しかし、今回、アルカイダから脱退したことで、この根拠は事実上は破綻しました。黒を基調とした国旗は柔らかな白へと変わりました。アルカイダの頭目であるザワヒリは今回の決定に神のご加護をと承諾しています。

今回の決定は長らくアルカイダ系と名指しされ、外国人の義勇兵がシリアの革命を利用しようとしているという疑いを払拭するために行われたという推測も可能です。誰のために?シリア人のためにです。同時に互いに反目していた反体制派との懐柔も期待されています。

アサド政権、ロシアは「ヌスラ戦線」から「JFS」に名前が変わろうと、現時点ではこれまでと変わらず、攻撃対象に指定しています。彼らがアサド政権打倒という目標を掲げている限り、変化はありません。アメリカは注視するという態度を示していますが、テロリストのレッテルは張り付いたままです。

https://www.theguardian.com/world/2016/jul/28/al-qaida-syria-nusra-split-terror-network

「Abu Mohammed al-Jolani」はビデオで発言しています。「我々は『ヌスラ戦線』の名の下で軍事作戦を行うことを停止した。他国の諸勢力とは関係を結ばない、新たな組織として誕生した」。海外で起こるテロにイスラム国が関与しているのとは異なり、「ヌスラ戦線」改め「JFS」はシリアでの内戦に全力を注ぐことを今回の決定で匂わせています。

非常に大きな出来事です。ただ、現時点でのJFSの評価はできません。アルカイダとの関係を解消しても、彼らの作戦には変化はないでしょう。それでも、イスラム国のような無差別テロをシリアの外で計画を立てるということは彼らの選択肢にはありません。アサド政権を打倒する。それに与する勢力を駆逐することが第一目標には変わりありません。

http://www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-syria-kerry-idUSKCN1091WV

そして今問題にすべきは人道に関する危機的な状況です。アレッポの反体制派地域がアサド政権によって封鎖されています。物資が搬入できない状況で、約300000人の一般市民が閉じ込められています。アサド政権側からは反体制派が市民を人間の盾として利用するため逃亡を阻止していると報じられています。ロシアが重要なカギとなります。アメリカが譲歩の姿勢を見せていますが、今回の人道危機のロシアの対応次第では関係の強化を見直す可能性もあるとケリー国務長官は述べています。