誰が味方で誰が敵なのか-アレッポ・イドリブ-

反体制派の地域であれば、誰もが手を取り合って「反アサド」を標榜している。そんな希望のある時代は終わりました。イスラム国の台頭により、「反アサド」に「反イスラム国」が加わりました。そして、現在はさらに「反ヌスラ戦線」、「反ジュンディ・アルアクサ」などのアルカイダ系勢力が市民の中に浸透しつつあります。こちらの記事を詳しく見ていきます。

http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/06/syria-aleppo-idlib-assassinations-oppposition.html

タイトルは「Who is killing Syrian opposition figures in Aleppo, Idlib?」です。答えは簡単じゃないかと思われる方もいるかもしれません。反体制派の重要人物を殺害するなんてアサド政権とそれに追随するロシア、イラン、ヒズボラだろ。あとはイスラム国か。でも、反体制派が殺害されている場所は反体制派地域であり、暗殺は空からではなく、仕掛け地雷だったりします。明らかに反体制派内に修復できない亀裂が走っています。政権側の人間は手を叩いて喜んでいることだろうと思われます。

6月に入り、暗殺事件が頻発しています。6月15日、仕掛け地雷によってヌスラ戦線の指揮官、Abu Ali Muhajireenがイドリブ市で殺害されました。同日、アレッポへの帰還中に反体制派「Nureddin Zengi Brigade」の指揮官、Mayof Almayofが銃撃を受けましたが、失敗に終わりました。こちらは車が故障して、修理してる最中に、覆面を被った二人組に狙われました。すぐさま反撃し怪我はなかったのですが、相手はそのまま逃走しました。

Mayof Almayofは記者に言います。「アサド政権とイスラム国を除けば、我々を殺害して利益を得るような組織はいない。たぶん、アサド政権が送り込んだ工作員(sleeper cell)ではないだろうか」と推測します。彼らの組織は前線での戦闘が任務であり、前線はセキュリティーが脆弱であり、工作員が反体制派の地域に潜入することは可能だろうと述べます。反体制派が考える工作員は「アサド政権」、「イスラム国」、さらに現在、シリアでイスラム国を苦しめている「SDF(シリア民主軍)」です。

暗殺は戦闘員だけには限りません。6月16日の夜、アレッポで二人の市民記者を標的にした爆弾がさく裂しました。Hadi Abdullahと同僚のKhaled al-Essaです。二人はトルコの病院に搬送されましたが、Khaled al-Essaは9日後に亡くなりました。市民記者はシリアでの内情を世界に伝えます。それを暴露されては困る勢力の犯行だと市民記者の一人、Mujahid Abu al-Joudは話します。アサド政権かイスラム国が疑われていますが、実際のところ犯人は特定できていません。

6月21日、ヌスラ戦線の指揮官、Abu Abudullah Jabalが何者かに殺害されました。これに怒りを覚えたヌスラ戦線は、翌日、6人の人間を逮捕したとファトハ軍を通して発表されました。しかし、この6人がどの組織に属していたのかは明らかにされていません。アサド政権もイスラム国も今回の暗殺への犯行声明を出していないことから、別の反体制派組織による仕業の可能性も否定できません。

アレッポ、イドリブ、反体制派地域は非常に不安定です。この記事には書かれていませんが、先月末から今月初めに自由シリア軍系の組織「Jaish al-Tahrir 」が指揮官を含めた40人をヌスラ戦線に拘束されました。一部解放されたと報道はされていますが、自由シリア軍とヌスラ戦線との軋轢がイドリブで再熱しています。また数日前にファトハ軍の重要な構成員である「アハラール・アッシャーム」の本部が仕掛け地雷によって、爆破されて、広報官が死亡しています。暗殺は止む気配がありません。

僕は安田さんのことはメディアで報じられている以上のことは分かりませんが、まだイドリブで拘束されているのであれば、気がかりです。アレッポも重要な反体制派の補給ルートがアサド政権に奪還されたと報じられていたので、反体制派で結束する必要があるのですが、こんな状態ではそれも望めそうにないですね。