アルカイダを育てた肥沃な大地-ヌスラ戦線-

Charles Listerからのシリアの分析記事になります。たまに批判されたり、誤りを指摘されたりしていますが、内戦に陥ったシリアを継続的に分析されている一人かと思います。僕も学ばせていただいています。

http://www.thedailybeast.com/articles/2016/07/06/al-qaeda-reaps-rewards-of-u-s-policy-failures-on-syria.html

戦争と外交とは密接な関係にあります。しかし、一方でシリアの現状を見れば、もはや話し合いから有意義な結果を導き出すこと、ましてや解決など望めません。アサド政権は敵対勢力を嘲るか殺戮すること以外には政治的な解決など考えていません。一方で、彼を支持する側の人間に対しては、彼の身の安全を確保するために命を危険にさらしてでも防衛させます。

にもかかわらず、アサド政権の生存に大きな利益を施しているのは、アサド自身でもなく、ロシアでもイランでもヒズボラでも、さらにイスラム国でもなく、実はアルカイダなのです。5年の歳月が流れ、政略的な硬直状態に陥り、過激的な思想が徐々に表明化していく中で、シリア内戦の火種を沈静化しようとする欧米諸国の失策からアルカイダは利益を得ていました。アルカイダとはアルカイダ系のヌスラ戦線を示します。ヌスラ戦線は今年に入り、3000人以上のシリア人の戦闘員を獲得しました。

皮肉なことにアメリカよりもヌスラ戦線の方がシリア人にとっては守護者と映っているようです。一般市民の犠牲者の増加とモラルの低下をヌスラ戦線が正しているとシリアでは見られています。対イスラム国での欧米の参加もシリア人にとっては欧米は不確かながらも裏ではアサド政権と連携を取り、さらにロシアとも手を握っているのでは疑われています。対イスラム国への軍事介入は我々、欧米にとって安全保障上の重要な任務ではありますが、同時にシリア国内ではヌスラ戦線を勢力の拡大に寄与しています。

緊急の解決策はイスラム国一つに絞り切ったのでは十分ではありません。ヌスラ戦線の台頭によりシリア内戦は長期的な混乱が予想されます。何十年という単位です。イスラム国は支配地域を削られていくでしょう。しかし、彼らの支持者は生き続けます。一方で、アルカイダ系勢力はテロリストの要素をより深く攻撃的に根を張っていくことだろうと考えられます。

イスラム国と同様に軍事作戦でロシアと共にヌスラ戦線を叩けば、彼らの思うつぼです。ヌスラ戦線の戦力の拡大には二つの要素があります。長期化する内戦と治安の悪化、市民を大量殺戮するアサド政権、そして穏健派に属する反体制派への不十分な支援。この二つの要素が現在のシリアでのヌスラ戦線の台頭に繋がっています。

アメリカが最初に考えなければいけないのは、優先順位を決定し、必要であれば市民の保護を積極的に行うことで信頼を取り戻すことです。国境沿いに安全地帯を設置する、市民や医療施設への空爆を行った側への懲罰的な措置を施す。戦争犯罪を裁く用意があることを意思表示する必要があります。軍事介入より経済制裁等々の国連を通した緩やかな選択肢もありますが、これは期待はできません。

アメリカは市民の保護のために限定的で標的を絞った空爆を行うと同時に、市民の生命を守ることに貢献しなければいけません。より安定的な環境を市民に提供し、穏健な反体制派を育成しなければいけません。最も重要なことは、シリア内戦の元凶であるアサド政権を弱体化させ、彼を支援する国々、組織をアサド政権と組んでも利益がないことを思い知らせる必要があります。ヌスラ戦線の対抗勢力として穏健派を育成することは現在のアメリカの政策ではまるで効果はありません。結果、ヌスラ戦線の成長に繋がっていることから見てとれます。

ヌスラ戦線はシリアで戦闘を行っている限り、国際社会に大きな影響は与えません。しかし、20000人以上の戦闘員を擁し、さらに彼らが望むイスラム国家の建設を達成するならば、外国でのテロ活動に食指が動く可能性も否定できません。

大雑把に彼の記事に目を通してみました。イライラしたのが、言っていることは分かるんですが、解決法が提示されていないことです。これまでのシリアでのアメリカの政策が誤っていること、ヌスラ戦線が強大化していること、アサド政権の市民への虐殺を止めること、そうしたことが書かれているだけで結局、具体的にどうすればシリア内戦は収束に向かうのかは示されていません。確実な解決策が提示できれば、ノーベル賞どころではないですが。