アメリカの行き詰まり-クルド人勢力とスンニ派勢力-

シリアで勢力範囲を飛躍的に拡大している組織があります。それがクルド人部隊、YPGとYPJです。YPGとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Gel‎」、YPJとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Jin‎」、その頭文字を取っています。日本語であれば、人民防衛隊と訳されます。YPGが男性戦闘員、YPJが女性戦闘員となります。

去年の4月、私はシリアの小さな町、コバニを訪れました。コバニはクルド人の支配地域です。イスラム教には寛容というより、宗教の匂いは一切なく、彼らを結び付けている民族の力強い連帯感を肌身を通して感じました。ただアラブ人と同じで外からの人間に対してはとても優しく、歓待されました。そのクルド人がシリア内戦で非常に重要な立ち位置にいます。

http://www.bloombergview.com/articles/2016-02-23/obama-administration-fights-itself-over-role-of-syrian-kurds

アレッポ北部で戦闘が続いていますが、アサド政権の攻勢に乗じてクルド人勢力が支配地域を拡大させています。ロシアの空爆の援護がよりクルド人の野心を駆り立てています。地図を見れば一目瞭然なのですが、シリア北部に「アフリーン」と呼ばれているクルド人地域があります。そこからYPGとYPG主体で一部アラブ人が参加しているSDFが反体制派を攻撃しています。アサド政権とは中立もしくは共闘している節が見られます。

複雑なのはYPGはアメリカの支援を受けながらも、戦争犯罪と批難されているロシアからも援護してもらっている。さらにYPGが攻撃を与えている反体制派は欧米からは危険視されていない穏健派に属しています。そこにクルド人を敵視するトルコが絡んで、なおかつYPGはアメリカがテロリスト指定しているPKKと深い繋がりがあります。YPGはアサド政権と共闘している可能性もあり、その意味するところはヒズボラ、イランの戦闘員とも結託しているのだと疑われます。

この疑惑に対して、YPGはロシアと共闘はしていないと否定しますが、ロシアの空爆は我々に利益をもたらしていることは認めています。ちなみにロシアとアサド政権はYPGを援護していることを認めています。それでも、アメリカに選択肢はありません。なぜなら、イスラム国を追いつめている最大の勢力がYPGとSDFだからです。彼らを手放せばイスラム国の減退には繋がりませんが、今度はアメリカに自国の基地使用を認めているトルコが面白くないという状況に陥ります。

表向きではアメリカはスンニ派で構成される反体制派組織の支援の強化を訴えていますが、先日のケリー国務長官のロシアとのシリアでの一時的な停戦合意を見れば、それも疑わしい限りです。なぜなら、ロシアこそが反体制派を攻撃している主犯格だからです。YPGと平行してスンニ派勢力も支援するアメリカの戦略には限界がきているように思えます。中途半端な戦略はあらゆる勢力、国家からの信頼を失いかねません。その点、ロシアは容赦ない。ロシアの戦略は見習うべきではありませんが、残念ながらシリアで一歩、二歩、有利に事を運んでいるのはアサド政権とロシアになります。