アレッポ北部の攻防戦-追加-

ロシアの空爆による民間人の死者が多数報告されています。月曜日にはイドリブやアザズで少なくとも3つの病院と学校が空爆されました。ロシアは関与を否定していますが、この地域で空爆を行える、行うのはアサド政権かロシアに限定されます。今回はここ3週間ほどのシリア北部での勢力図の変化について紹介できればと思います。

http://www.vox.com/2016/2/16/11020140/russia-syria-bombing-maps

とても分かりやすい記事です。3つの地図を引用して、最近のロシアの空爆と各勢力の動きを分析しています。一つ目がISWの地図を基にして、ロシアがどの地域を激しく空爆しているかを説明しています。アレッポ北部、東部、イドリブ県、シリア南部のダラー県などに集中しています。停戦に向けてロシア、アメリカが協議をしている最中にも容赦なく爆弾は降り注いでいます。

二つ目の地図はアレッポの北部、トルコへと至る回廊の勢力圏争いをまとめたものです。この地図を見ると、ロシアの空爆支援がいかに反体制派を劣勢に追いやったのかが一目瞭然です。支配地域を最も失ったのは緑色の反体制派です。ピンクのアサド政権が奪還率が最も高いですが、黄色のクルド人勢力も巻き上げしています。しかし、アサド政権単独ではこれほど短期間に支配地域を拡大させることは不可能です。

ISWの分析官は述べています。ロシアの空爆は反体制派の前線と彼らの補給路を断絶を目的としている。地上部隊はアサド政権と共にヒズボラ、アフガニスタンとイラクのシーア派民兵、イランの革命防衛隊などが加わっている。

今回の北部での戦闘により反体制派地域に暮らす30万人から40万人が孤立しています。既に数万人が住む家を追われ、避難民となりトルコとの国境沿いの町アザズに押しかけています。また今回のアサド政権の前進により、現在行われている和平協議にも影響を与えそうです。つまりアサド政権が強気に出ることも考えられます。ロシアと共に譲歩の姿勢は見られないでしょう。

しかし、シリアは依然として混沌とした状況に変わりはありません。それが三つ目の地図になります。淡いピンクが今年1月以前のアサド政権、赤が1月以降に奪った支配地域です。しかし、アサド政権の快進撃がニュースで大々的に報じられていますが、それほど多くの領域を手に入れたわけではありません。

確かに今回の攻撃で戦略的に重要な町や村をアサド政権は反体制派から奪い取りました。しかし、奪還した分だけ領土が拡大され、そこを死守するだけの人員が必要になります。果たしてアサド政権と彼を支える支持勢力がどこまでその能力があるのかは疑問です。反体制派も相変わらず分裂したままです。イスラム国は欧米から敵視され、継続的な攻撃に疲弊しつつあります。現状ではシリアのモザイクを一色に塗り替えられる勢力は存在していません。

これからも月曜日に起きたような病院や学校への攻撃は続くでしょう。それにロシアやアサド政権ほど堂々と戦争犯罪に手を染めてはいませんが、アメリカもイスラム国を標的にしつつも、誤爆により民間人の死者が発生しています。これも決して見過ごすことはできません。ただどの勢力も大国による空からの援護なしには領土を広げられない。トルコやサウジアラビアの動向も気になるところです。