戦闘とは異なった形で殺されていく人々

https://www.hrw.org/news/2015/12/16/syria-stories-behind-photos-killed-detainees

国際的な人権NGO「Human Rights Watch」からの報告書です。シリアから極秘裏に持ち出された28000枚以上の遺体の写真を9カ月に渡り調査した結果を報告しています。彼らはアサド政権によって拘束され、拷問の末に亡くなった人々です。遺族やその友人、拘束、監禁された経験者、軍の病院、尋問、拷問施設で働いていた看守、離反兵などから聞き取りを行い、幾人かの身元が判明し、死因もいくつか明らかになりました。詳細な報告書は86ページあるらしいですが、さすがにそこまで目を通せませんので、時間がある方は上記のアドレスからダウンロードしてください。

「ここにある全ての写真が誰かの愛する子供、夫、父親、友人であり、彼らを探すために何カ月、何年と費やしている家族の誰かなのである。私たちは何十もの話を入念に調査し、これが人道に対する罪であることを確信した」
中東支部の分析官、Nadim Houryは言います。和平交渉の可能性についての協議を行っている国々はまずはシリアで拘束されている何千もの人々の運命を決すべきであり、シリア政府は全ての尋問施設への国際的な監視団の派遣を認め、諜報機関は強制逮捕や拘束者の拷問を止めなければならない。「Human Rights Watch」は主張しています。
 
2013年8月、離反兵の「Caesar(コードネーム)」から反体制派の政治団体へと渡された写真は53275枚に上ります。それらの写真は「Human Rights Watch」によって解析され、利用可能な情報に基づいて、28707枚に焦点が当てられました。死亡した6786人は尋問施設、もしく尋問施設から軍病院へと移送された際に撮影されたものでした。
 
6786人の大半がダマスカスにある5つの諜報機関の収容所で拘束された者であると思われました。そして彼らの遺体は二つの軍病院に移送されました。ちなみに2011年3月以降、117000人以上が強制逮捕され拘束中だとシリア人権ネットワークは報じています。
 
写真には拷問、餓死、殴打、病死の痕が見られ、新しく判明した27人の遺体の中には逮捕時14歳だった少年や活動家の20代の女性も含まれていました。全ての家族が何カ月、何年とかけて捜索し、仲介者に多額のお金を払い、諜報機関と接触しました。その結果、諜報機関から渡されたのは心臓、もしくは呼吸器疾患により死亡という診断書だけであり、遺体が遺族に引き渡されることもありませんでした。
 
元看守人の証言によれば、拘束された者は空調設備もまともにない部屋にすし詰めにされ、ろくに食べ物を与えられず、衛生面も悪く、皮膚病や様々な感染症にかかりました。それでも治療は与えられませんでした。彼は今回明るみなった犠牲者は氷山の一角だと言います。今も同じような環境で殺されている人々が多数いると言います。アサド政権はこうした死者を記録しても、死因を特定することもなく、拷問にも目をつぶってきました。
 
Ahmad al-Musalmani は14歳でした。母の葬儀に出席するためレバノンからシリアに向かう途中で政府軍の検問で捕まりました。反アサドの歌が携帯電話に入っていたためでした。バスから降ろされた彼はそのまま連行され、拷問の末に亡くなりました。
 
Rehab al-Allawiは25歳の女性でした。膨大な写真の中で女性は彼女だけです。活動家と繋がりがあり、2013年1月に逮捕されました。家族は政府の役人に合計18000ドル支払い、彼女の情報と身の安全を求めましたが、その願いは叶いませんでした。
 
その他にも諜報機関の施設や軍の病院で働いていた医師や離反兵からの証言も取っています。拘束されている者が拷問を受けて、殺害されているのは現在進行形で今も行われています。イスラム国が残虐な手法で人質を殺害し、それをネットに上げて拡散させています。それとは対照的に、アサド政権によるこうした人道に対する罪を見えないところで平然と行われています。どちらも許しがたい行為には違いありませんが、イスラム国には空爆で、しかし、アサド政権には何もしない、むしろ和平プロセスのためにすり寄ろうという姿勢を今、国際社会は見せています。