シリアに今も残る人々

ご無沙汰していました。日本は安保法案で揺れていますが、世界の関心は欧州へと流入する難民をどうすべきかに注目が集まっています。メディアでも連日のようにトップニュースで報じられています。シリアでは2300万人の人口の半数以上が住居を追われ、400万人以上が国外に逃れています。しかし、今もシリアに残る人々がいます。彼らはどのように暮らしているのでしょうか。NYTIMESの記事を紹介したいと思います。

http://www.nytimes.com/2015/09/16/world/middleeast/for-those-who-remain-in-syria-daily-life-is-a-nightmare.html

ダマスカス郊外ドゥーマではアサド政権による砲撃や空爆から逃れる市民で溢れています。ドゥーマはダマスカスでは最も早く反政府デモが行われた町でした。反体制派と政府軍との戦闘は常態化し、日々、状況は悪化の一途を辿っています。ここ数カ月でのドゥーマでの政府軍による激しい攻撃を見れば、それは明らかです。砲撃と空爆が雨のように降り注いでいます。

かつては人口50万を数える中規模の町も今では5家族のうち4家族が戦火を逃れるため町を離れています。先月だけで、550人が空爆や砲撃で命を落としました。大半が一般市民で、そのうち123人が子供です。8月中旬から末にかけては毎日150人の負傷者が医療施設で治療を受けました。

イスラム国のシリアでの台頭は国際社会の関心を呼び起こしました。しかし、シリアの内戦の根本的な原因であるアサド政権と反体制派との戦闘はあまり大きく報道されることはありませんでした。長期間に渡りシリア内戦を分析している人権団体などはイスラム国が殺害した市民の数よりアサド政権の攻撃による市民の死傷者数の方が遥かに高いことを指摘しています。

ドゥーマでは空爆だけでなく、政府軍による兵糧攻めも続いています。日用品、食料、医療品は密輸によって少ないながら運ばれています。人道支援物資も止められています。何より町から逃げ出したくても、包囲網がある限り、脱出することすら困難な状況です。また市民にとっての敵は政府軍ばかりでなく、ドゥーマに展開する反体制派の武装勢力、イスラム軍からも時には弾圧を受けます。それはイスラム軍への不平不満を口にしていた活動家が武装勢力に誘拐されている事例が見られるからです。

https://www.youtube.com/watch?v=oRaOWgOh0cc

8月16日、政府軍の空爆で少なくとも122人の人々が命を落としました。着弾地点は反体制派の拠点ではなく、野菜市場でした。犠牲者の大半が一般市民でした。簡易型の医療施設には十分な医薬品もなく、手当てができず亡くなる負傷者が後を絶ちません。

ドゥーマで暮らすDr. Tobajiと数百人の同僚はアサド政権への嘆願書にサインをしました。その内容は人権侵害の完全なる停止と戦争を終わらせるための話し合いです。そしてアサド大統領の処遇にはついては一切不問にするという内容でした。Dr. Tobajiは言います。

「我々にとってシリアという国家の運命はアサドの運命と比較にならないくらい重要だ。今このときだって、シリア人は殺戮されている。我々が本当に必要なことは何としてでもこの戦闘を終わらせることにある。この嘆願書は私を含めた多くのシリア人が望んでいることではない。しかし、私たちのためではなく、シリアのためを思ってのことなのだ」

記事をかなり端折りました。ただ最後のDr. Tobajiの言葉は重いです。ドゥーマで暮らしている現地の彼だからこそ、胸を打つのでしょう。