樽爆弾の脅威

アレッポに行くと、崩れ落ちた建物を至る所で目にします。樽爆弾の仕業です。アラビア語で「برميل متفجر」。その威力は甚大です。どれほど離れていたのか定かではありませんが、アレッポで投下された樽爆弾が地響きを上げて真っ青な空に向かって噴煙を巻き上げているのを目撃しました。それ以降、上空を旋回するヘリコプターの機影を見かける度に僕は不安な気持ちで眺めていたのですが、周りのムジャヒディーンは「ハロー!ハロー!」とヘリに向かって手を振っていました。マジで笑えなかった。

http://www.hrw.org/news/2015/02/24/syria-new-spate-barrel-bomb-attacks

今週の火曜日、24日にHuman Rights Watch(HRW)が樽爆弾についての詳細なレポートを公開しました。興味ある方はぜひ。少し文章が長いので、HRWの報告書に関する記事、アル・アラビヤを参考にしたいと思います。

http://english.alarabiya.net/en/perspective/analysis/2015/02/25/Assad-s-forces-continue-to-use-banned-barrel-bombs-report.html

アサド政府軍は樽爆弾を使用した空からの攻撃を何百回となく行っています。それは現在でも変わらず続ています。HRWの中東・北アフリカ担当のNadim Houry理事は「この問題への取り組みは何も行われていない」と憤っています。

2月22日、国連安保理決議2139が採択されました。決議の内容は「樽爆弾のような無差別殺傷兵器を人口密集地で使用しない」というものです。Houry氏は答えます。「何年間も安保理はアサド政権による殺人的な空からの攻撃を止めることはしなかった。アレッポでは一時的に空爆を停止することが可能かどうかの話し合いを進めているが、安保理で樽爆弾の使用を停止するために制裁を課すことをロシアと中国が通すかどうかが疑問です」。

シリア人権監視団は1月20日までの過去4か月間で2432発の樽爆弾が投下されたと報告しています。2014年2月から2015年の2月までの1年間での樽爆弾による死者は3万人以上だと見積もられています。犠牲者には5812人の一般市民(子供1733人、女性969人)が含まれています。

樽爆弾が無差別殺傷兵器と呼ばれる所以は目標を定められない点が挙げられます。反体制派地域の上空にヘリコプターを飛ばし、樽爆弾(形状はドラム缶、中身は火薬やガソリン、さらに金属片を詰め込んだ簡易型爆弾)を落とすだけです。そのため学校や病院にも容赦なく降り注ぎます。さらに爆風で詰め込まれた金属片が付近の人々を切り刻みます。手足が切断されるほどの殺傷能力が金属片にはあります。

HRWは樽爆弾だけでなく、政府軍支配地域で反体制派が仕掛けた車爆弾にも非難の目を向けています。シリア人権監視団は反体制派が放った迫撃砲や手製のロケット弾で市民が1102人(子供234人、女性133人)殺害されたと報告しています。

HRWとシリア人権監視団からの報告でした。数字の信憑性はともかくとして、とにかく大量の犠牲者が出ていることは確かです。武器や弾薬には限りがあります。内戦が長引けば不足します。樽爆弾は洗練された兵器ではありません。身近なものを組み合わせただけの安価な爆弾です。爆発すれば周囲のものを片っ端からなぎ倒します。目標も選びませんから、誰もが標的になる。恐怖を植え付けられた住民は反体制派勢力に不満を持つ。そして戦闘員は防ぎようのない樽爆弾の脅威に士気が挫ける。そんな効果もあります。

最後に、僕がアレッポで滞在した反体制派の根城に樽爆弾の残骸が転がっていました。見た感じ「樽」より「ドラム缶」です。これ一発で下手すると建物が一棟丸ごと倒壊するというから恐ろしい。

barrelbomb