イスラム国の人質戦略

非常に残念な結果になりました。後藤さんに関して僕が感じることは、今後のシリア情勢を追えなくなった、その一言です。シリアのことを愛しているからこそ、シリアの将来の行方が気になるところです。後藤さんに限らず、シリアで殉教した老若男女問わず命を落とした方々も、今後のシリアの行方を見守ることができません。それは本人にとっては非常に悔しいことだろうと思います。

アサドと比べればイスラム国なんてちっぽけなもんだろう。僕はこう思いますが、やはり自国民が犠牲になり、はったりなのか本気なのか分からない憎悪を日本に向けられれば気持ち良いものではありません。人質に関してのNYTimesの記事を紹介します。

http://www.nytimes.com/2015/02/02/world/middleeast/isis-tactics-questioned-as-hostages-dwindle.html?ref=world&_r=0

いったいイスラム国は今回の件で何を達成したというのだろうか。ただ彼らが拘束している人質の数を減らしただけではないだろうか。テロリズムを研究する専門家の多くが懐疑的です。身代金も囚人釈放も達成しないままに人質の処刑で幕を閉じたのはイスラム国にとっても不測の結果に終わったのではないだろうか。

イスラム国が拘束している西側諸国、他の国々の人質は不足しつつある。なぜなら最近では海外のNGOや援助団体、メディアも人質になることを恐れて、シリアでの活動を自粛している。昨年8月にアメリカ主導の空爆が行われた際に、イスラム国が保有していた欧米人の人質は少なくとも23名。そして現在、注目を浴びている人質は4名である。2名は西洋人、残り2名は日本人である。

 “This knife will not only slaughter Kenji, but will also carry on and cause carnage wherever your people are found.(このナイフは健二を殺戮するだけでなく、どこであろうとお前たち日本人を見つければ殺戮が起きるだろう)”

それに対しての安倍首相の返答はテロに屈しない姿勢を見せている。ヨルダン政府は慎重な姿勢を見せて、パイロットと引き換えにリシャウィ死刑囚の引き換えをイスラム国側に提示している。イスラム国側はパイロットの人質をヨルダンと有志連合との関係に亀裂を生じさせたい意図が見えるが、ヨルダンの政治家は「ヨルダンを分断する代わりに我々はより一層団結を強めなければいけない。今回の一件が国民の意思を政府への批判に繋がるようなことはあってはならない」と呼びかけています。

その他の人質として知られているのは欧米人で2名。1人はイギリス人の記者John Cantile。彼はイスラム国のプロパガンダに利用され広報官のような形で映像に度々登場している。あと1人はアメリカ人の人道支援に携わっていた女性。その他に2013年10月から行方不明になっている赤十字のスタッフ3名も人質となっている。

 “Journalists in Syria are seen as walking bags of money.(シリアにいる外国人記者は大金をバッグに詰め込んで歩いているように見える)”とある記者は語っている。FBIが仕入れた情報からはイスラム国と組んで誘拐ビジネスに手を染める輩が甘い言葉を投げかけて外国人記者をシリアに引き入れていると報告されている。

“They disguise themselves as drivers or fixers offering to help journalists work in the south of Turkey, in order to establish good ties with them for a future plan of kidnapping them to the other side of the border,”

欧米人と仕事をしたことがあるシリア人のZaher Saidはトルコ南部の都市ガジアンテップでこう語っています。後藤さんがどのような形でイスラム国に拘束されたのか。彼の言葉が物語っているのかもしれません。シリアに一歩踏み込めば、一人ではどうすることもできない世界です。だからこそ、信頼できるパートナーが必要です。