誘拐について-追加-

イタリア人の女性が解放されたニュースを取り上げた直後に今回のニュースが飛び込んできました。誘拐の形態も様々です。部隊に従軍している際に敵側の奇襲攻撃を受けて、拘束されるケースもあれば、フィクサーが金に目がくらんで第三者に譲り渡すケースもあります。誘拐がイスラム国の専売特許であれば、イスラム国の取材を避ければ、誘拐される心配もありませんが、残念ながら、イタリア人の女性の誘拐犯はヌスラ戦線とされています。その他にも外国人を狙った犯罪がシリアでは常態化しています。決してイスラム国だけが誘拐に手を染めているわけではありません。

例えば、僕が前回訪れた2014年5月、従軍した部隊「ムジャヒディーン軍」から「タケシを誘拐したら日本政府はいくら出す?」と問われたので、「100万ドルぐらいじゃない」と答えたら、「安いなあ」と笑っていました。もちろん彼らは冗談で言ったつもりですが、「誘拐」がビジネスとしてシリアで浸透していることがうかがえます。

金を積めば質の良い信頼できるフィクサーが雇えるか。2012年11月、2013年2月とシリアに訪れた際は、この論理は通用しました。大手メディアが一日500ドル、600ドル、ときには1000ドル出して、土地勘のある流暢な英語を話すフィクサーを雇い入れていました。しかし、現在はフィクサーも状況が把握できないほどシリアは荒れています。良いフィクサーなら「今のシリアには行くな!」と忠告するでしょう。下手なフィクサーに依頼すれば、仮にこちらが金を積んでも、さらに高い額で「人質」としてその外国人を譲り渡してほしいという人物がいれば、簡単に了承するでしょう。

樽爆弾で木端微塵になっても、スナイパーに頭部を撃ち抜かれても、マシンガンで蜂の巣になろうとも、それでもシリアに乗り込みたいという記者や写真家は少なからずいます。しかし、そこに「誘拐」が加わると、その数は激減します。なぜなら「誘拐」は自己責任では済まされない問題だからです。シリア人の命は地面に転がっている小石ほどの価値しかありませんが、外国人の命はショーケースに陳列されている宝石ほどの重みがあります。それが今のシリアの現状です。

身代金を支払うべきか否か。僕の個人的な見解を述べても、仕方がないことです。助かってほしいと願うのは、当たり前のことですが、議論すべきことは彼らの安否と並行して、シリアで何が起きているのかということです。「誘拐」が交渉の道具としてビジネスとして成り立つ背景には様々な要因が散りばめられています。それらを丹念に拾い上げていく過程でシリアで何が起きているのかが詳しく報道されていくことを願っています。

最近、このブログも停滞気味なんで、あまり生意気なことを言えませんが。さっさと取材に行けよ、そしてお前が伝えろよ!とも叱責されそうですが、今回の事件が起き、ますます腰が重くなっているところです。現場に直接足を運ぶ姿勢は見直すべきだと考えています。