誘拐について

紛争が長引けば長引くほど、治安は乱れます。住む家を失い、職を失い、家族を失い、希望を失えば、真っ当な人間でも悪事に手を染めます。真っ当ではない人間は治安の乱れに乗じて、金の匂いを敏感に嗅ぎ付け、積極的に悪事を働きます。打開策が見いだせないまま戦闘に明け暮れている兵士たちは敵側の弱みを握るため、卑劣な手段に訴えかけます。長期化した紛争地に誘拐は付き物です。

http://www.bbc.com/news/world-europe-30838375

2014年7月にアレッポ北部で誘拐されたaid workerのイタリア人女性2人が解放されました。16日の早朝にイタリアの首都ローマの空港に降り立ち、Paolo Gentiloni外相の出迎えを受けました。1500万ドル(16億ぐらい?)をイタリア政府は誘拐犯に支払ったされるが確証は得られていません。

http://www.thedailybeast.com/articles/2015/01/16/italy-accused-of-paying-al-qaeda-ransom.html

無事解放されましたが、イタリアでは歓迎と共に批判も出ています。イタリアの政治家は「仮に1200万ドルが誘拐犯に支払ったとなれば、彼らに手を貸したことになる。その資金で新たなテロが生まれる恐れも否定できない」と述べています。

年の瀬に誘拐犯は彼女たちの様子を撮影した映像を公開しました。その映像の中で女性は「私たちの政府と仲介者は私たちをクリスマス前までに家に戻してください。とても危険な状況です。殺されるかもしれません。政府と仲介者は私たちの命を保護する責任があります」と訴えかけていました。

この映像が公開される以前から解放交渉は行われていました。しかし、なかなか両者(誘拐犯とイタリア政府)の条件が折り合わない中で誘拐犯がけしかけました。それがこの映像になります。さらにある記者はシャルリ・エブドーの事件前は200万ドルで交渉が成立しかけていたのが、事件後に誘拐犯は1000万ドルに額を引き上げたと述べています。

アメリカとイギリスが身代金の支払いには基本的に応じないのに比べてイタリアは「ケースによっては異なる(身代金の支払いに応じることもある)」という立場です。拘束時の様子は女性の家族の話では「十分な食料も与えられず、外傷も加えられた」と語っています。

この他にも主要各紙、テレグラフ、NYTimes、インディペンデント、ガーディアンなどでも報じられていますが、身代金の支払いに応じるべきか否かが主要な論点です。少なくとも5人の欧米人がイスラム国に処刑されています。中には身代金の支払いに応じれば救われた命もあります。しかし、身代金はテロリストの資金源になる、またさらなる誘拐を助長するとの理由からアメリカ、イギリスは拒絶しました。そこに今回のニュースが飛び込んできたわけです。

シャルリ・エブドーのテロで亡くなった犠牲者に100万人の国民が集結し、イタリア人女性の解放に1000万ドルの身代金が支払われ、欧米人を処刑したイスラム国を我々の脅威だと決めつけて空爆する。僕はすごく違和感を覚えます。命が尊いのであれば、なぜもっと早くシリアに手を差し伸べなかったのだと。主権侵害だとか大国の利害関係だとかレッドラインの線引きだとか、その間にイスラム国が芽生えて、育まれてきた事実から目をそらしている今の欧米のスタンスが気に食わない。

あと誘拐犯はヌスラ戦線と報じられています。ヌスラ戦線って金のために誘拐するのかあとちょっと疑問ですが。