誰のための空爆か???

お久しぶりです。シリア関連というよりイスラム国関連でしょうか。日本のメディアも騒がしいですね。ただ残念なのは、イスラム国の現地での状況を伝えられる世界でも数少ない方々が今後のシリアでの調査、取材等々に支障をきたすのではと心配しています。

母国語が日本語であるため、海外のニュースに目を通してシリア情勢を追いかける方はごく限られています。今回のイスラム国も日本人が絡まなければ、ここまでイスラム国のことが話題になることもなかったでしょう。 簡単ですが、ここ最近の米国の空爆について少し書ければと思います。まず今回の空爆に関しては誰が得をしているのか。それは間違いなくアサド政権です。イスラム国の台頭は当初はアサド政権への不干渉を貫いていましたが、ラッカに拠点を築き、イラクで主要都市を陥落させ、豊富な武器と人材を獲得、ラッカ県、デリゾール県では油田を奪取し、潤沢な資金が懐に入ると、アサドに牙を向きました。

そのイスラム国を現在は米国と有志連合が空爆をしています。そして最も重要なのが空爆の対象がイスラム国だけでなく!ヌスラ戦線、そして直近ではアハラール・アッシャームまで攻撃対象にしたことです。ヌスラ戦線もアハラール・アッシャーム(イスラム戦線の主要な組織)もアサドだけでなく、イスラム国と戦火を交えています。しかも西側諸国からの資金を私利私欲に費やすシリア革命家戦線をヌスラ戦線は討伐しています。その彼らを爆撃すれば、ヌスラ戦線もイスラム戦線も(既に一部では見られる現象ですが)、イスラム国に加わり反米を掲げて、より国際社会の脅威になりかねません。

こんな簡単な理屈をアメリカ様が理解していないわけもないだろうに・・・どうしてと疑問が生じます。なによりシリアの反体制派側で暮らす人々の支持が圧倒的に高いヌスラ戦線とイスラム戦線を標的にすれば、当初は歓迎されていたシリア国民からの不評を買います。

参考サイト http://www.theguardian.com/world/2014/nov/06/us-strategy-against-isis-working-well-assad-syria?CMP=twt_gu

http://www.csmonitor.com/World/Middle-East/2014/1103/Islamic-State-Is-the-US-led-war-really-helping-Syria-s-Assad-Maybe.-video

ホラーサーンをブログで紹介しましたが、そもそもこの勢力は存在しているのか。少なくとも多少はシリア情勢を詳しく追いかけてきた僕も初耳でした。

アメリカがヌスラ戦線を攻撃するために作りだした幻の組織なのではと勘繰りたくなります。なぜならヌスラ戦線を空爆する動機がアメリカには見当たらなかったから。イスラム国のようにアメリカ人を斬首することもなく、反米の思想を掲げているわけでもなかったですから。

ホラーサーンへの無人爆撃機によって先日殺害された爆発物の製造責任者でフランスの諜報機関だったDavid Drugeonとは実在の人物には違いないですが、彼が本当にホラーサーンに所属して、西側でテロを計画をしていたのか。全てが曖昧のままです。誰も確認のしようがない。

では冒頭でも紹介したイドリブ県でヌスラ戦線がシリア革命家戦線と戦闘を繰り広げている件でも疑問符だらけです。シリア革命家戦線は西側諸国に好意的と見られる穏健派です。その彼らをヌスラ戦線は「欧米の犬」として攻撃しているから、米国は彼らを助けるために空爆を実施した。

ここは多少は納得しますが、そのシリア革命家戦線に武器を提供して、訓練を施して、ヌスラ戦線やイスラム国の防波堤として機能させようと米国は口では言っていますが、その気配は一切ありません。しかも、シリア革命家戦線の一部がヌスラ戦線の軍門に下り、こう述べています。

“If the U.S. continues to attack al Nusra, I and my men will swear allegiance to [Abu Mohammad] al-Golani,(米国がヌスラ戦線への攻撃を続行するのであれば、我々はアル・ゴラニに忠誠を誓うだろう)”

アル・ゴラニとはヌスラ戦線を組織してるトップの指揮官です。米国の空爆のおかげで穏健派がヌスラ戦線に寝返った。僕はシリアで取材している中で、ヌスラ戦線を敵視する声は一切聞かれず、ただアレッポの住民はヌスラ戦線に限らず反体制派、アサド政権全てに嫌気がさしていましたが、賞賛していました。その彼らをあからさまに攻撃する米国の意図が本当に理解できなくて頭を抱えています。

シリア情勢のアナリストでさえこんな救いのない言葉を述べています。 “As long as the U.S. strategy does not specifically seek the destruction of the Assad regime, our tactics will be at best contradictory and at worst counterproductive. (米国の戦略がアサド政権の崩壊を特に望んでいない限りは、我々の戦略は最も矛盾した、最悪の逆効果を生むだろう)“ ということで、分からないことだらけのブログ記事になりました。

あまり陰謀じみたことは嫌いですが、やっぱりアサドとオバマ、もしくはその背後にいる大国、小国同士で何か繋がってるじゃないのかなあって思えてきます。

参考サイト

http://www.thedailybeast.com/articles/2014/11/06/spies-warned-white-house-don-t-hit-al-qaeda-in-syria.html