シリアの今後-イスラム国の動向-

日本のメディアでも大きく取り上げられているイラク情勢。ISIS(islamic state of iraq and al-sham)がイラクで猛威を振るい、次々と主要都市を政府軍から奪還しているという報告。僕はシリアが専門です。イラクに関してはさほど注目していませんでした。ただし、シリアを追い続けていれば、イスラム国の話題は避けて通れません。

今回の取材で僕がイドリブ県を経由して、アレッポまで足を運べたのはイスラム国の影響力がこれらの地域から排除されたからです。アレッポに向かう途中に通過する町の大半が元イスラム国の支配地域であり、従軍していたジェイシュ・アル=ムジャヒディーン(JM)が「ここで俺たちはイスラム国と激しい戦闘をした。何人も仲間が殺されたし、何人もやつらを殺した」と説明していました。

ここでちょっと補足します。シリアで戦う反政府勢力は数多くいます。以前は彼らは自由シリア軍と呼ばれていました。今でもそれは変わりません。JMも自由軍と呼称されます。ただし、重要なのが、自由軍の定義です。革命当初、自由軍は三ツ星を国旗として掲げる反体制派の部隊の総称でした。しかし、自由軍の一部は盗み、殺人、誘拐、密輸に手を染め、今では自由軍の評価はガタ落ちです。そのため、JMにしろ、イスラム戦線(IF)にしろ、自由軍から離れて、別部隊を結成して、戦闘に望んでいます。今、シリアで使われる自由軍とは、特定の反体制派部隊に使われることもありますが、JMに関しては、大ざっぱに反体制派、アサド政権に立ち向かう者たちの呼称として自由軍という言葉が使われています。

イラク情勢を見ていると、僕が気になるのが、その後、シリアにどのような影響が及ぶかです。今、イスラム国がシリアで甚大な影響力を誇っている地域がラッカ県です。アレッポ県の隣です。ここは牙城です。さらにその隣のデリゾール県でもイスラム国はヌスラ戦線、イスラム戦線、自由軍、部族民、クルド人と戦火を交えています。デリゾール県はイラクと国境を接しており、今回のイラクでのイスラム国の進撃が大きく波及されると考えられます。気になる記事を紹介したいと思います。

http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2014/06/syria-aleppo-isis-regime-rebels-iraq-mosul.html

反体制派とイスラム国との関係が簡潔に述べられています。当初は双方は良好な関係を築いていたものの、互いの目的の相違、アサド政権を打倒する反体制派とイスラム国家の構築を目指すイスラム国、により戦闘が始まり、昨年暮れにイスラム国はイドリブ県とアレッポ県の大半から姿を消しました。しかし、イラクで資金と武器と人材を確保したイスラム国はデリゾールを手中に収め、やがてアレッポに再度進撃するのではと反体制派は危惧しています。アサド政権側も同様に懸念を表明していますが、彼らにとっては漁夫の利とは言えないまでも、敵同士で体力を消耗してくれるのであれば、願ってもないことでしょう。ただアサド政権もイラクのシーア派の力には助けられているので、イラクの混迷は多少の打撃にもなるかと予想されます。

シリアに入国する手段を考える上で、まずは誰がどの地域で支配権を有しているかを把握する必要があります。イスラム国に従軍するなんてことはほぼ不可能に近いので、アレッポに行きたいのであれば、今はまだ可能性があります。それでもかなりの危険は伴いますが。自己責任でお願いします。僕はもう当分いいです。