カラモン攻防戦

先月、スウェーデン国籍の記者と写真家が誘拐されたばかり。今度はスペイン国籍の記者と写真家がISISに誘拐された(拘束された?)。日時は9月16日だから3ヶ月ほど前になる。その間、誘拐犯と間接的に連絡を取り合っていたらしい。場所はISISが猛威を振るうラッカ県。FSAが4人付き添っていたが、彼らも拘束され、後に釈放された。国境なき記者団が「シリアはジャーナリストにとって世界で最も危険な紛争地である」と警告している。「Nothing venture, Nothing gain」。「A wise man keeps away from danger」。僕は言わずもがな後者です。ただwiseじゃなくてcowardだけど。

参考サイト http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-25314832

何週間にも渡って繰り広げられていたカラモン山脈での攻防戦。ヒズボラの支援により政府軍がある一定の勝利を収めた。ダマスカスとホムスを結ぶ高速道路がカラモン山脈沿いに走っている。地図を見ながらの方が分かりやすい。

http://www.understandingwar.org/sites/default/files/Qalamoun-Map.jpg

政府軍はQaraを比較的早い段階で手中に収めたが、その先のDeir Attiya、an-Nabekで反体制派と激しく衝突した。約3週間の激戦の末に反体制派は戦略的撤退の道を選んだ。雪崩れ込む政府軍、そこで虐殺が起きた。an-Nabekの活動家からの報道によれば、女性、子供を含む40名以上が殺害された。少なくとも7名の幼い命が奪われている。政府側の報道によれば、100名以上の反体制派を殺害、もしくは拘束したと発表している。an-Nabekは大半が政府側に手に移ったが、小競り合いは今も続いている。

カラモン山脈の裾野を走る高速道路は「M5」と呼ばれる。M5はダマスカスとホムスを繋ぐだけでなく、レバノンとの中継地でもある。レバノンのArsalからカラモン山を通じて流れ込む反体制派への物資、逆にシリアからArsalに逃げ込む難民も多くいる。M5を押さえることでその供給ルートを寸断させる。それが政府軍の目論見である。さらにM5を北上すればアサドのお膝元であるラタキア、タルトゥースにたどり着く。カラモン山脈は戦略的要衝なのである。

6月にクサイルが陥落、8月にダマスカスで化学兵器が使用された。追い詰められた反体制派はカラモンに集結する。当初は5000名ほどの人員だったのが、初秋には25000人、最大では40000人にまで膨れ上がった。特に外国人勢力の働きが目覚しく、政府軍の主要な基地や武器庫を次々と奪取した。しかし、夏から秋にかけて政府軍はカラモン周辺に砲弾の雨を降らせた。そして11月15日、ヒズボラと政府軍はQaraの攻略に乗り出した。僅か4日で陥落。2200家族が難民となってArsalに逃げ延びた。an-Nabek、Deir Attiyahに反体制派は兵力を集中させて、4度の自爆テロまで仕掛けた。

ヒズボラの存在感はクサイルを凌ぐとも言われている。カラモンからヒズボラを標的にした砲弾がレバノンに着弾することは珍しくない。またヌスラ戦線がベイルートのヒズボラの拠点を叩くため4台の車爆弾をカラモンからレバノンのArsalに運び込んでいる。そのうち2台はベイルートで炸裂させている。カラモンから国境を越えて流れる脅威を払拭することがヒズボラの目的である。

さらにM5を政府軍が押さえることの重要性が化学兵器の破壊活動に関連している。化学兵器の最終的な処分はシリア国内では行われない。技術者や設備不足の上に治安が悪い。第三国か米国の船舶を使っての洋上処分が検討されている。しかし、どちらにせよ化学兵器を輸送するためラタキア港まで運ばなければならない。その際に使用されるルートがM5だと思われる。そのため政府軍はM5の治安を確保するため徹底的な破壊活動を行った。安全に化学兵器を移送させるために女性や子供が犠牲になるのは仕方がないことなのだろうか。。。

参考サイト

http://www.understandingwar.org/backgrounder/hezbollah-and-qalamoun

http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-25299816

http://english.alarabiya.net/en/News/middle-east/2013/12/07/Syria-new-massacre-unfolds-in-Nabk.html

http://news.yahoo.com/syrian-troops-seize-control-strategic-highway-170624842.html?soc_src=mediacontentstory