躍動する大国-サウジアラビア-

泥沼化したシリアを救う手立てはもう尽きた。唯一、可能性があったかもしれないと思うのは、化学兵器使用後の軍事介入を実行に移すことだった。もちろんその先に光が見えるわけではないけれど、少なくとも大きな分岐点ではあった。米国が設定した「レッド・ライン」を超えたわけだから、迅速に限定的だろうと介入すべきだった。アサドの大罪はうやむやにされ、ノーベル賞を受賞した化学兵器禁止機関はアサド政権の姿勢に満足し、国連は未だに話し合いの場での解決を模索しようとしている。呆れ返る。そして、反体制派同士の殺し合いが加速する現在、アサド政権には追い風が吹いているように思える。

http://www.buzzfeed.com/mikegiglio/confessions-of-a-syrian-activist-i-want-assad-to-win

外国人勢力の存在がシリアの革命を貶めている。活動家からの悲痛な叫びです。2012年夏、反体制派はアサド政権に猛攻を仕掛けた。アサドが倒れるのも時間の問題だと誰もが感じた。2週間、1カ月、時は流れて、1年が経過すれば、アサドとは別の敵が目の前に現われていた。彼らは三ツ星の国旗を振って、革命を賞賛するわけでもなく、民主主義を嫌悪し、イスラム国家に情熱を傾けた過激な勢力だった。革命はシリア人のためではなく、革命はイスラムのため。革命の位置づけが徐々に変容しつつある。アサドの方がマシだ。そんな声が微かに聞こえる。

この記事について、僕自身、外国人勢力と接したことがないので、何とも言えません。活動家がISISに頻繁に拘束されているニュースは目にします。だから活動家は一般的に外国人勢力に抵抗があるように見受けられますが、FSAや一部の市民からの賞賛の声も聞かれます。実際、ヌスラ戦線なんかは常に前線に立って、いくつものアサドの支配地域を奪取している豪傑ぞろいですし、シリアの革命に大きく寄与していることは疑いようのない事実です。

http://www.nytimes.com/2013/10/26/world/middleeast/saudis-faulting-american-policy-on-middle-east.html?_r=1

サウジアラビア、怒っています。誰に対して?米国です。米国と歩調を合わせるのに抵抗を示したサウジアラビアは独自の対アサド政策に着手しているようです。しかし、サウジアラビアも反体制派の分裂には頭を悩ませており、一枚岩をどのようにして築けばいいのか、有効な手段を打ち出せずにいます。加えて、米国の後ろ盾を排除して単独でシリアの内戦に没入できるほどの施策は思い描けていません。軍事や石油の面で米国に依存していることも足枷となっています。

約800人ほどのサウジアラビア国籍の戦闘員がシリアで活動しています。旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した1979年、サウジアラビアは聖戦と称して多くの戦闘員をアフガニスタンに送り込みました。しかし、1980年代に入り、帰国した彼らが故国で先鋭化するという苦い経験を味わっています。「シリアでサウジアラビア人が戦闘の訓練を受けることはないだろう。実際、我々はそれを望んでいない」と対外情報機関の前長官トルキ・アル=ファイサル王子は述べています。

サウジアラビアの憤りの発端は、米国のシリアへの曖昧な姿勢のようです。軍事介入を示唆しながらも、実行に至らなかった米国の態度に不信感を抱いています。国連安保理の非常任理事国入りの辞退もその表れです。シリアの問題だけでなく、エジプトのモルシ大統領を受け入れ、その後のクーデターにより支援の一部停止、そしてイランとの核を巡る前向きな姿勢にも影響を与えています。

しかし、とりわけシリア問題にサウジアラビアは神経を尖らせています。二つの理由があります。一つは同胞であるスンニ派のイスラム教徒が殺戮されていることに責任を感じている。二つ目は地理的、地政学的な要所であるため。イランの影響力の拡大を懸念しています。2011年の革命勃発から1年間ほどはサウジアラビアは武器支援に消極的でした。2012年に入り、小火器に限った援助を行い、現在はヨルダンとCIAと組んで、FSAの武装化に乗り出しています。カタールが外国人勢力に肩入れしているのをサウジアラビアは苦々しく思っています。しかし、米国がちんたらしている間に外国人勢力は強大になるばかり、アサド政権もヒズボラとイランに支えられ、国連は無能な政策ばかりを提示し、ロシアと中国の拒否権の発動で安保理も機能不全、サウジアラビアが自国の防衛のためパキスタンを通じて核を入手しようとしているのもシリアが深く関わっていることだと思われます。

http://www.foreignpolicy.com/articles/2013/11/06/saudi_arabias_shadow_war

パキスタンと言えば、FPのこの記事。サウジアラビアとパキスタンとの蜜月時代は旧ソ連が侵攻したアフガニスタン紛争から長らく続いています。しかし、サウジアラビアは豊富な資金と人材で育て上げた勢力の一部が先鋭化しオサマ率いるアルカイダが生まれ、自国に牙を向くというトラウマを抱えています。ミイラ取りがミイラになっちゃったみたいな。

重複になりますが、サウジアラビアがシリアで成し遂げたい二つの目標。アサドを政権の座から引きずりおろす。アルカイダ系の勢力を弱体化させる。しかし、米国に期待を寄せていたこれらの目標も達成できずむしろ悪化するばかり。そこでサウジアラビアはパキスタンの指導の下で2旅団、規模としては5000~10000人の反体制派勢力の訓練を行い、最終的には40000~50000人にまで広げたい考えがあるそうです。

サウジアラビアはパキスタンに巨額の資金を投じて、支援を行っています。パキスタンのシャリフ首相が7年間の亡命生活を送った地の大半がサウジアラビアでした。ただ、記事を読む限り、そこまで重要視するような内容ではないと個人的には思います。パキスタンは自国の問題で手一杯ですし、シリアの内戦に首を突っ込んでも得られる益は少なしでしょう。米国と手を切って、新たなパートナーとして選択した相手がパキスタンでは何とも心もとない。

http://www.theguardian.com/world/2013/nov/07/syria-crisis-saudi-arabia-spend-millions-new-rebel-force

えっ、まだ続くの?もう飽きましたという方はごめんなさい。でもここまで読んでいただいて感謝しています。でも最後にこの記事だけ紹介したいと思います。

いくつかのアラブと西側諸国のソースによれば、サウジアラビアが目を付けているのが9月下旬に結成されたJaysh al-Islam (the Army of Islam or JAI)です。43の部隊で結成されたピカピカの一年生です。それで前述した記事に関連しますが、この組織を支援しているのがパキスタンというわけです。対外情報機関のトップのバンダル王子は米国にJAIへの対地・対空ミサイルの供与を強く求めているところです。経由地はヨルダンを指定しています。

JAIを率いるのがZahran Alloush。彼はサラフィストであり、元Liwa al-Islam(ダマスカス拠点の部隊)の司令官。バンダル王子とは既に接触を果たし、サウジアラビアの支援が流れ込んでいます。しかし、JAIがサウジアラビアの強力な駒としてアサド率いる政府軍やISISやヌスラ戦線などの外国人勢力に対抗できる勢力として育つのかはまだまだ未知数です。

この記事を読んでいると、サウジアラビアがかなり焦っているのが見て取れます。またサウジアラビアやカタールが反体制派の武装化に不慣れなことにも意外でした。中東で起きている出来事だからうまく振舞えているかと思えばそうじゃない。金が豊富にあっても適した人物に渡すための手段が彼らには不足しているようです。情報不足と人材不足。そのため情報機関のトップを走る米国を頼りにしていた面もあったのですが、結局思い通りにはいかなかった。サウジアラビアの最近の動向はそんなところから生まれているのでしょう。

疲れました。でもこうやっていろんな記事に触れていく中で、シリアの複雑な構図が少しずつ理解できるようになってきました。もちろん氷山一角の海面に出ている部分ぐらいしか分かってないと思うけど。海中に沈みこんだ氷山がどれほどの規模なのか僕には想像もつきません。