アサド政権の最大の支援者-国連の存在意義-

国際連合の世界での役割とは何なのか。第二次世界大戦の反省を踏まえて、国際連盟から国際連合へと形を変えて、国際平和を願い設立された組織。手元にある細谷雄一氏の「歴史認識とは何か」を参照にすれば、国連憲章第七章第三十九条において、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する」とあります。そして、第四十二条では「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる」と書かれており、軍事的な制裁も可能です。ただし、国際連合の常任理事国には拒否権という便利なツールがあり、実際に発動することは困難です。

そして時間の経過と共に、シリアでは国連の存在などまったく無視され、次から次へと様々な国が軍事介入に乗り出しています。トルコも先週から自由シリア軍と共闘して、ジャラブロス制圧、さらにイスラム国とは名ばかりに、クルド人撃退のためマンビジを奪還するとかしないとか、そんな情報まで飛び交っています。

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革命の都市ダーリヤー

英語表記だとDARAYA、DARAYYAと表示されていますが、アラビア語表記だとداريا 。実際に耳にすると、ダーリヤー、ダーリッヤーと聞こえるので、アラビア語表記で統一したいと思います。革命の都市と言えば、まっさきに思い浮かぶのがドゥーマです。ただダマスカスから最も近い革命の都市となると、ダーリヤーではないかと思います。そこが遂にアサド政権の手に落ちました。何年も包囲されながら、必死の抵抗を続けてきたのですが。。。

http://www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-syria-daraya-idUSKCN11023Q

ダーリヤーはダマスカス中心部から僅か7キロ足らずの距離に位置する町です。2011年から抗議デモが頻繁に発生し、内戦に陥ってからは武装闘争が本格化しました。これまでダーリヤーでは数々の停戦合意がありましたが、今回は反体制派が降伏しました。この数週間、ダーリヤーは空爆の嵐でした。その結果を受けてのことでしょう。

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最も成功を収めている者たち-クルド人の圧倒的な存在感-

マンビジが人民防衛隊(YPG)を主体としたシリア民主軍(SDF)によって解放されました。包囲された町で徹底抗戦を誓ったイスラム国は皆殺しにされたのでしょうか。それとも降伏したのでしょうか。映像をいくつか見ているのですが、陥落したマンビジの市内は戦闘の傷跡は生々しいですが、イスラム国の姿かたちは映像にはあまり出てきません。僕が訪れたコバニは戦闘が終結して2カ月が経過したにもかかわらず、ミイラ化したイスラム国の遺体が町中に数多く野ざらしにされていました。

https://www.theguardian.com/world/2016/aug/19/isis-civilians-syria-manbij-human-shield

昨日、金曜日にSDFが公開した写真です。車両が点在しており、周囲には無数の人影が見えます。イスラム国の戦闘員ですが、SDFの許可を得て、堂々と撤退しています。なぜSDFは許可を与えたのか。それは車両には戦闘員の他に一般市民も紛れています。イスラム国は住民を人間の盾、人質にして、マンビジからの安全な退路を確保したようです。

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牢獄の中で奪われる命

こちらの動画が多くのメディアで取り上げられています。

https://www.youtube.com/watch?v=7cfBmRW3isc

昨日、17日のことです。アレッポ東部の町Qaterji近郊でアサド政権、もしくはロシア軍の戦闘機が空爆を行いました。崩壊した建物から救出された一般市民の中には子供も多数含まれていました。最初に救出された男の子はOmran Daqneesh、5歳です。何が起きたのか分からない様子で一人椅子に腰かけています。その後、さらに二人の子供が救助されます。合計、4人の子供と男性2人、女性1人が負傷しました。

Omranは市内にある病院に搬送され、治療を受けました。この日、イドリブでも空爆があり、17人が殺害され、30人以上が負傷しています。こうした映像は毎日のように伝えられます。その中の一つが外の世界からの関心を呼び起こしましたが、1週間も経てば、風化しちゃいます。シリアの惨状を伝えた記録は風化速度が一瞬です。なぜなら、一般市民を巻き込んだ戦争に終わりが見えないからです。

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アレッポからの手紙-医師からの願い-

シリアの内戦を見ると、秩序が崩壊しています。でもそれが戦争だから、仕方がないのかもしれません。戦争をしていない場所で、現在進行形で繰り広げられている戦争を止める手段を考えても、戦争をしている国で暮らす人々には何の助けにもならないでしょう。それでも、自らの力で戦争を止められない状況では、外からの力に望みを託すしかないのでしょう。目の前で人がバタバタと殺されているのですから。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/aleppo-siege-doctors-syria-starvation-assad-forces-russian-airstrikes-humanitarian-crisis-a7183281.html

包囲されていたアレッポですが、反体制派の猛攻により小さな穴が空きました。それでも物資の不足は著しく、燃料は高騰し、インフラは壊滅状態、衛生面は最悪の状況です。さらに上空からはアサド政権とロシアによる爆弾の雨が降っています。アレッポには数少ない医師が懸命に負傷者の手当を行っています。そんな彼らからオバマ大統領に宛てたメッセージが送られました。翻訳(意訳)してみたいと思います。

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アレッポとマンビジ

ここ最近のシリアでの大きな戦闘は二つあると思います。アレッポとマンビジです。2015年4月、コバニに訪れた際に、何人かの住民から「家族がマンビジでダーイシュに捕えられている」と聞きました。今回の作戦で彼らの家族は無事に解放されたのか気になります。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-36995759

マンビジはシリア北部の交通の要衝です。2年以上、イスラム国の強力な支配下に置かれていました。それが今回、クルド人(YPG、YPJ)主体のSDF(The Syria Democratic Forces )によってイスラム国から奪還されました。アメリカ率いる有志連合の空爆の援護を受けて、マンビジを包囲、イスラム国への投降を呼びかけたが拒絶、市街戦に突入し、先週の金曜から土曜、8割以上がSDFの支配下に置かれました。

http://www.kurdistan24.net/en/news/0b76a923-38d2-4292-b826-428235fbf911/Kurdish-led-forces-completely-liberate-Manbij–Syrian-Observatory

5月31日から開始されたマンビジ解放作戦は多くの死傷者を出しました。シリア人権監視団の報告によれば、432人の市民、そのうち104人が10歳以下の子供、54人の女性が亡くなりました。ただ、米軍主体の有志連合の空爆で、203人の市民、そのうち52人の子供と18人の女性が亡くなっています。半分程度が誤爆による死者になります。

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