ロシア空爆による犠牲者数

http://www.theguardian.com/world/2015/dec/30/russian-airstrikes-kill-2300-syria-human-rights-group

9月末から開始されたロシアの空爆は、この3カ月間で死者2371人、そのうち792人が一般市民であり、180人が子供であるとシリア人権監視団が報告しました。イスラム国の戦闘員が655人、その他の反体制派組織が924人になります。ロシアの空爆が人権団体や国際社会から批難を受けていますが、この数字を見れば、当たり前でしょう。一般市民の犠牲者数がイスラム国の戦闘員より多いとは意図的に一般市民を標的にしているとしか思えません。

アムネスティはロシアの空爆は戦争犯罪にも該当すると報告しています。アメリカのマーク・トナー副報道官は「ロシアの空爆は多くの民間人を殺害している。医療施設や学校やマーケットも空爆にさらされている」と強く批難しています。

僕もロシアが何を考えているのか理解できません。正気を失っているとしか思えない。救援物資の輸送車を油の密輸車両と言い張り、空爆したり、医療施設や食糧庫、インフラ設備も木っ端みじんです。クラスター爆弾をばらまいたり、空爆した箇所で救援活動を行う人々の上にさらに爆弾を落としたり。やっていることはアサド政権と同じですが、ロシアはシリア内戦をさらに悪化させています。

命を落とした者たち

http://www.nytimes.com/2015/12/30/world/middleeast/syria-and-france-said-to-be-deadliest-for-journalists-in-2015.html

今年、殉職したジャーナリストは69人。そのうち40パーセントがイスラム国、アルカイダ系武装勢力に絡んだものです。the Committee to Protect Journalistsによる報告です。まだ26人が取材中に命を落としたかどうかを調査中とのことです。去年は61人でした。

1月にCharlie Hebdoの襲撃事件で8人が命を落としたフランスは二位です。そして最も多くの記者や写真家が殺害されたのは、やはりシリアです。13人になります。それでも過去の統計からみれば、シリアに関しては減少しています。2012年31人、2013年29人、2014年17人です。

ただこの数字は確実なものでだけです。特にシリアのような外部から閉ざされた世界ではまだまだ多くの記者、写真家、活動家が殺害されているでしょう。それに後藤健二氏が殺害されたのも今年になります。

http://www.middleeasteye.net/news/110-journalists-killed-2015-most-peaceful-countries-report-303324835

こちらは国境なき記者団からの報告です。2015年、110人のジャーナリストが殺害されました。ただし、大半は戦場とは程遠い比較的平和な国々で亡くなりました。67人が取材中に殺害されました。

2015年末までに確認されているところで、54人のジャーナリストが人質に取られており、そのうち26人がシリアです。153人が刑務所に送られ、23人が中国、22人がエジプトで占められています。

和平協議に向けて

来月開催予定の和平プロセスに向けて一歩前進でしょうか。話し合いでシリア内戦が解決するとは思いませんが、たとえ結果が絶望的であろうとも、協議が行われるということで、一人でも多くの人々の命が救われればいいと僕は思います。それに水を差したのが先日のロシアによるイスラム軍司令官の殺害ですが、昨日、明るい(真っ暗闇の中にろうそくの炎が一本灯された程度ですが)ニュースが入ってきました。

http://www.nytimes.com/2015/12/29/world/middleeast/evacuations-aim-to-ease-path-to-talks-in-syria-war.html

国連と赤十字の斡旋のもとで反体制派最後の支配地域と呼ばれるダマスカス郊外のザバダーニから一般市民と負傷した戦闘員が救出されました。彼らは隣国レバノンに移送された後、トルコに向かう予定です。ただし、今回選ばれた人々は一部にすぎません。ザバダーニを含めた周辺は完全に政府軍とヒズボラに包囲されていますが、まだ住民と戦闘員は多数閉じ込められています。 続きを読む

イスラム軍司令官、ザハラーン・アッルーシュの死

昨日、ザハラーン・アッルーシュ(Zahran Alloush, زهران علوش)がロシア軍の空爆により殉教しました。彼は1971年生まれ、ダマスカス郊外のドゥーマ出身です。彼の息子の一人はサラフィー主義の説教師でサウジアラビアで暮らしています。彼自身もサウジアラビアのイスラム大学でシャリーアの修士号を取得している切れ者です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Zahran_Alloush

どのメディアでも彼の死は大々的に報じられています。

http://www.theguardian.com/world/2015/dec/25/zahran-alloush-leader-syria-rebel-group-killed-airstrike

東グータ地域での会議中にロシア軍の空爆を受けました。アッルーシュの他に5名の指揮官が殺害されました。彼は経歴からも分かるように厳格なイスラム教徒です。アラウィー派やシーア派の排除を促す言動も見られました。しかし、イスラム国とも敵対しており、宗派間の抗争を煽るような言動は最近では見られず、西側諸国から受け入れられやすい人物だと思われていました。 続きを読む

シリアのスターリングラード-ホムス-

端折りながら(理解できない箇所など)の意訳になりますが、ホムスの現状です。原文が生々しい文体で書かれているので、ぜひ英語が多少でも出来る方は、こちらから直接目を通していただければと思います。なぜ生々しいかといえば、記者が直接現場に訪れているからです。

http://foreignpolicy.com/2015/12/23/syrias-stalingrad/

革命の象徴都市、ホムスは4年以上にも続く戦闘により廃墟と化した。建物はぼろきれのように崩れ落ち、窓枠は風見鶏のようにキーキーと音を立てる。人と言えば、市内を巡回する政府軍だけ。通りに面した建物からは住民の暮らしの痕跡も見受けられるが、それらは徐々に風景の中に溶け込み、10フィートもの雑草がコンクリートの隙間から顔を出す。

シリア政府の見解に限れば、ホムスでの戦いは終結した。1年以上前に反体制派勢力はホムス旧市街での戦闘に敗れた。今月、唯一の反体制派の支配地域、al-Waerはアサド政権と停戦を結んだ。この停戦の合意を国連は好意的に受け止めた。一つの象徴的な革命の町に平和が訪れたことを歓迎した。 続きを読む

白いヘルメットの救助隊

シリアの動画を度々見ている方なら、既にご存知かと思いますが、空爆や戦闘の現場に駆けつけて、多くの犠牲者を救助している中に、白いヘルメットを被った人たちを見かけます。彼らは救助を専門にしている隊員です。そのトレードマークが白いヘルメットであり、本来であれば、彼らは戦闘員とは区別され、攻撃の対象にされませんが、女性子供も容赦なく殺害するアサド政権にはお構いなしです。そんな彼らの声をお伝えします。

https://herofund.whitehelmets.org/donate/crowdfund/

私の名前はRaed Al Salehです。「White Helmets」として知られるシリア民間防衛隊の指揮を執っています。我々はこれまで瓦礫の中から22693人の人々の命を救いました。しかし、隊員が負傷しても、治療するお金もなく、隊員が命を落としても、彼らの家族に与えられるものは何もありません。 続きを読む

ロシア空爆の効果

http://www.theguardian.com/world/2015/dec/21/russias-airstrikes-on-syria-struggle-to-spur-progress-on-the-ground

シリアでのロシアの空爆は地上ではさほど効果がないように思える。

アサド政権を支援するために軍事介入に乗り出したロシアですが、三カ月近く経つロシアの空爆はアサド政権とシーア派民兵に少しばかりの勝利をもたらしたに過ぎません。一方でロシアの空爆で600人以上の一般市民が命を落としています。日曜日には70人が亡くなりました。

過去2週間でダマスカスとハマの反体制派支配地域ではインフラ設備や公共施設が標的にされました。「希望が見え始めたとケリーが主張する理性的なロシアはどこにいるんだ?アサドでさえロシアのようなやり口で空爆をしなかったし、ISISだってこのような手法で我々を攻撃しなかった」。そう語るのはイドリブの病院で働く医師です。

ロシアの空爆が成果を上げない中、アサド政権は地上軍を増強するため徴兵を行っています。ダマスカスでは人員を補給するため、2カ月前から予備役の募集をかけています。既に兵役を終えた若者たちをターゲットにして再び予備役として徴兵するのに必死です。 続きを読む

シリア和平プロセス

和平への道筋を示したシリアのロードマップが国連安保理で全会一致で採択されました。民衆蜂起が大規模に始まった2011年3月以来、国際社会が足並みを揃えて、和平プロセスに賛同の意を示したのは初めてになります。

ケリー国務長官はこう述べています。「今回の安保理は全ての関心すべき事柄に対してはっきりとしたメッセージを送った。関心すべき事柄とは暴力の停止と長年に渡り被害を受けてきたシリアの国民が支持できる政府の基礎を形作ることである」。

ロシアとアメリカのシリアへの見解には食い違いが見られます。欧米諸国はアサド大統領の退陣を求めています。ロシアはアサド政権を支持しています。そのため今回の決議案ではこの両者の対立を避けることで一致をみました。つまりアサド大統領の今後については触れないということです。 続きを読む

戦闘とは異なった形で殺されていく人々

https://www.hrw.org/news/2015/12/16/syria-stories-behind-photos-killed-detainees

国際的な人権NGO「Human Rights Watch」からの報告書です。シリアから極秘裏に持ち出された28000枚以上の遺体の写真を9カ月に渡り調査した結果を報告しています。彼らはアサド政権によって拘束され、拷問の末に亡くなった人々です。遺族やその友人、拘束、監禁された経験者、軍の病院、尋問、拷問施設で働いていた看守、離反兵などから聞き取りを行い、幾人かの身元が判明し、死因もいくつか明らかになりました。詳細な報告書は86ページあるらしいですが、さすがにそこまで目を通せませんので、時間がある方は上記のアドレスからダウンロードしてください。 続きを読む

3年に渡るシリアの取材について

現在、ドイツに難民として移り住んでいる友人から、昨日知らされました。「アブ・カリームが殉教した」と。2週間ほど前には「アリーが殉教した」と聞かされたばかりでした。2014年の5月から1カ月余り、反体制派組織「ムジャーヒディーン軍」に従軍した際に知り合った仲間の幾人かが既にこの世を去っています。彼らと過ごした時間は本当に僕にとって一生の宝物です。

ブログの更新は久しぶりです。ずっと何をしていたのかと言えば、原稿を書いていました。別に誰かに頼まれたわけでもなく、ただひたすらこれまでのシリアでの取材をまとめていました。そしてある程度出来上がったものを出版社に持ち込んでは売り込みをかけていました。なかなか首を縦に振ってくれる編集者がいない中で、何とか拾われました。捨てる神あれば拾う神あり。たぶん来月中旬か下旬に刊行になります。 続きを読む