狡猾な体制派と揺らぐ反体制派

興味深い記事を見かけましたので、紹介しておきます。

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/10198632/Syria-disillusioned-rebels-drift-back-to-take-Assad-amnesty.html

シリアでの民衆蜂起、アサド退陣を掲げた市民による革命、そして内戦へと突入、去年のこの時期にダマスカスとアレッポでは自由シリア軍が総決起し、火の手はシリア全土に燃え広がりました。自由シリア軍がトルコの国境を次々と陥落させ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでアサド政権を窮地に追い込みました。しかし、ロシア、イラン、ヒズボラとアサドの影の立役者が暗躍し、加えて反体制派の強固な基盤も外国人勢力の台頭により腐食、表面化することが懸念されていた宗派、民族間の抗争も今ではシリア各都市で公然と繰り広げられ、誘拐、処刑、虐殺、略奪と目を覆うばかりの惨状が日々伝えられています。果たして革命とは何だったのか。疑問を胸に抱き、冷めた目で周囲を見渡したとき、彼らは現実に引き戻されて、愕然とします。 続きを読む

取捨選択はご自由に

以前にブログでThe Institute for the Study of War(ISW)の記事を紹介しました。政府軍はホムスに兵力を集中させ、自由シリア軍(FSA)を徹底的に叩くと。目的はレバノンからの補給ルートの遮断、同時にホムスから南北に繋がる重要な都市ラタキア、タルトゥース、ダマスカスへの進軍を阻止するためにありました。その作戦(破壊活動)は順調に行われているようです。

昨日、FSAがまた一つ、重要な拠点を失いました。Khalidiya地区。ハーリド・イブン・アル=ワリードの大モスクがある歴史的な都市です。‘‘the capital of the revolution‘‘の象徴として1年以上もFSAの支配下にありました。現時点で60パーセントから80パーセントが政府軍の手に落ちたと国営放送は報じています。革命以前は8万人を擁した賑やかな町並みは砲弾に見舞われ廃墟と化しました。2千人余りの人々が現在もこの町で暮らしているそうです。ちなみに今回のKhalidiya奪還作戦にもヒズボラの濃厚な影がチラホラと散見されます。ホムス攻略後は本格的にアレッポ制圧に乗り出すでしょう。 続きを読む

シリア介入案

日本でもさらっとこの話題が触れられていますが、その中身を海外のメディアの記事からより深く見てみようかなと思います。すると、実行に移される前から形骸化している子供だましの介入案だとすぐに気がつきます。政治のことは分からないけど、シリアへの軍事介入を求める政治家の誰かが軍の背中を小突いて、嫌々ながら書かされたような内容に思えます。

マーティンデンプシー統合参謀本部議長が議会に提出したシリアへの軍事介入には5つの選択肢が用意されています。

・training, advising and assisting the opposition(反体制派の訓練、助言、支援)

・conducting limited strikes(限定された空爆)

・establishing a no-fly zone(飛行禁止空域の設定)

・creating buffer zones inside Syria(シリア国内での緩衝地帯の設置)

・controlling Damascus’ chemical arms(ダマスカスの化学兵器工場の制圧) 続きを読む

Mapping Syria’s rebellion

http://www.nytimes.com/2013/07/18/world/middleeast/momentum-shifts-in-syria-bolstering-assads-position.html?pagewanted=1&_r=4&ref=global-home

シリアの「今」が綺麗にまとめられている記事です。アサド政権が反体制派の領土を徐々に侵食していること。それに対抗するべき武器の援助が欧米諸国から得られないことへの自由シリア軍(FSA)の苛立ち。FSAが存在することで空爆や砲弾の嵐に見舞われ徹底的に破壊される町と市民のFSAへの憤懣、憤怒。一致団結して政府軍に対抗すべき反体制派勢力の内部での分裂。外国人勢力の存在。それに比べて政府側はロシア、イラン、レバノンのヒズボラの支援の下で、クサイルを陥落させ、窮地に立たされた首都ダマスカスに多少の安堵感をもたらした。この記事には触れられていないけど、エジプトの政変にもアサド政権にとっては追い風になっている。左団扇で余裕かましてるのかなあ。アサドさんは。 続きを読む

シリアの経済状況と内戦下で暮らす人々

長期化する内戦で、シリアの台所事情は火の車。物価の高騰、シリアポンド(SP)の急落、経済制裁。金持ちは祖国を捨て、中間層は貧困層に転落し、貧困層は死につつある国。経済が回らなければ、国家の運営が立ち行かなくなるし、そこで暮らす人々は飢えるしかない。

http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/plunging-currency-adds-to-syrias-gloom/2013/07/16/f0d53210-ed6b-11e2-bb32-725c8351a69e_story.html

海外に取材に行く際、銀行で円をドルに両替します。民主党政権下では未曾有の円高に見舞われ、日本経済は別にして、僕自身は大変助かりました。シリアの通貨はどうなんでしょうか。今回の民衆による革命が起こる(2011年3月)以前は1ドル=47SPでした。その1年後に僕がシリアを訪れた際のレートは1ドル=76SP(闇両替)。正規だと1ドル=61SPぐらいだったかな。そして現在のシリア、先週の闇両替でのレートは1ドル=300SPオーバーです。 続きを読む

一枚岩が築けない反政府勢力-追加-

https://now.mmedia.me/lb/en/nowsyrialatestnews/israel-launched-strikes-near-key-syria-port-report-says

こんなニュースもあります。イスラエルがシリアの港湾都市ラタキアで対艦ミサイル「ヤーホント」を空爆。数日前に報道されていましたが、真偽のほどは定かではなく、今回CNNがアメリカ高官からの話により確証を得られたということです。ただし、イスラエルは報道を否定しています。

それで昨日の続きになります。追加で3つの記事から引用させていただきます。

http://www.nytimes.com/2013/07/13/world/middleeast/syrian-rebel-infighting-undermines-anti-assad-effort.html?smid=tw-share&_r=1

この記事によると、Abu Bassir(Kamal Hamami)はラマダンの食事を友人に届ける最中にIslamic State of Iraq and Al Sham(ISIS)の検問所で停止を命じられた。そしてISISの司令官であるAbu Aymanに射殺された。動機としてはFSAとISISとの意見の対立がある。彼が殺害される前にもイドリブでISISがFSAのメンバーを2人、斬首刑にしている。胴体から切り離されたFSAの頭部はゴミ箱に捨てられていたという。 続きを読む

一枚岩が築けない反政府勢力-自由シリア軍vsアルカイダ系武装勢力

メディアでも大きく取り上げられているので、ブログでも一通り書き記しておこうかと。政府軍と反政府軍の争いは2年以上の月日が流れ、非常に厄介な様相を呈しています。双方共々、厄介です。政府軍の内部構造を把握しようとすると、正規軍、治安部隊、シャッビーハ、リジャーン・シャビーエと大小の組織が蠕動してるし、反政府軍も自由シリア軍の枠内でも、各県により構成されているメンバーや組織名が無数に存在しています。また政府軍にはヒズボラ、イランの革命防衛隊、イラクのシーア派部隊が、反政府軍には外国勢力と言われるイスラムに厳格な組織が、その外国人勢力にも多数の組織があり、自由シリア軍の士気の乱れにあきれ果てて、外国人部隊に志願するシリア人もいたり、頭がパンクします。パンクしたら使い物にならないので、僕は適当に受け流しています。

外国人武装勢力の代表格がヌスラ戦線かなと思います。よくシリア関連の記事でも目にします。彼らは主にシリア北部を拠点としています。イドリブ県、アレッポ県、ラッカ県に展開しており、特にラッカ県の政府軍を撃退したのはこのヌスラ戦線になります。しかし、ラッカが陥落して以降、この土地を巡る自由シリア軍とヌスラ戦線の双方がいがみ合いを始めました。銃撃戦にも発展し、多数の死者が出たり、この県で暮らす市民も自由シリア軍側とヌスラ戦線側とに支持派が分かれて、デモまで起きています。ということを、以前にどこかの新聞の記事で読んだ記憶があります。前置きはここまでにして、とりあえず、今回の事件を4つのメディアの記事から引用したいと思います。固有名詞、組織名などは英語表記にします。読み方分からないから。 続きを読む

クサイル陥落後のホムスの現状

エジプトが燃え上がってる。これだけメディアで大々的に取り上げられるエジプトの今回の政変劇、中東にとっては見過ごすことができない重大な出来事なのか。中東に関わって僅か1年足らず、シリアの情勢を理解しようともがいている僕にとって、エジプトの影響力がどれほどなのか、計り知れず。ただ、先月の中ごろ、モルシ大統領が民衆を前にして、アサドとの決別を宣言し、聖戦に向けた反体制派へ支援が着々と進められていたかのように思われたけど、今回の一件で停滞しちゃうのか。「エジプトはナイルの賜物」。一度は足を運んでみたいなあ。

それでシリアに移ります。エジプトの影に隠れて目立った報道がされていませんが、シリア第三の都市ホムスが火を噴いています。反体制派から流れてくる動画は鳴り止まない銃声と数分間隔で飛来する砲弾、その中で暮らす市民の嘆きと破壊され尽くした町の様子。内戦に突入して以降、ホムスは絶えず激しい攻撃にさらされてきました。The Institute for the Study of War(ISW)からのレポートを紹介したいと思います。 続きを読む

各国の反応-エジプト-

どのメディアもエジプト一色。シリアの話題が隅っこに追いやられています。僕はエジプトにはまったく興味がないんですが、今後の中東の勢力図が塗り替えられる可能性も否定できないので、各国の反応を簡単ですが、一通り目を通してみました。アルジャジーラが簡潔に分かり易く、まとめていました。

http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2013/07/201373223029610370.html

EU-民主的な手続きによる自由で公正な大統領選挙と議会選挙、憲法の制定を早期に実施し、治安部隊は市民の安全を守ることを最優先に混乱の収束を図ってほしい。

サウジアラビア-アブドラ国王は暫定大統領に就任したAdly Mansour氏に祝電を送った。「サウジアラビアの国民を代表して、我々はこの危機的な状況下でエジプトを牽引する貴方(Adly Mansour)を応援したい。エジプトの民は我々の兄弟であり、責任感を持って彼らを主導していけることを神に祈りたい」 続きを読む

暗躍する大国-カタール-

昨日、ラヴロフ露外相と2時間余り会談したケリー米国務長官が少なくとも9月まではシリアに関する平和会議は開催されないだろうと述べました。ラヴロフ外相はロシアのメディアに対して、ケリー国務長官は反体制派の強固な体制が築かれるまでは平和会議は行われないだろうと示唆しました。つまりは今月開催予定の平和会議はお流れになりました。当たり前と言えば、当たり前だけど、政治的解決を模索して時間を浪費する間にも、シリアでは多くの血が流れ続けています。特に最近はホムスが集中砲火にされされています。

http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/kerry-syria-peace-talks-unlikely-until-at-least-september/2013/07/02/f4666752-e300-11e2-a11e-c2ea876a8f30_story.html

シリアの反体制派への積極的な支援で注目を集めているカタール。先月の24日にカタールのSheik Hamad bin Khalifa al-Thani、ハマド首長(61)が息子であるSheik Tamim bin Hamad al-Thani、タミム皇太子(33)に権力を譲渡し、退位する意向であることがアル・ジャジーラによって伝えられました。権力者が交代することで、国家運営がどのように変化するかはわかりませんが、シリアへの対応にはそれほど変化はないものと思われます。 続きを読む