The World Abetted Assad’s Victory in Syria

久しぶりのブログの更新になります。シリアの情勢を綺麗にまとめた記事がありましたので、そちらを意訳できればと思います。拙い英語力なので、原文が読める方はぜひそちらに目を通していただければ幸いです。

https://www.theatlantic.com/international/archive/2018/08/assad-victory-syria/566522

7年以上にわたる内戦によりシリアの人口の半分が家を捨て、町は瓦礫となり、50万人以上の人々が命を落とした。そして今、バッシャール・アサド大統領の勝利は目前に迫っている。7月にアサド政権はシリア南部の都市、ダラーを奪還し、制圧した。ダラーは2011年の民衆蜂起が発生するきっかけを作った反体制派にとっては象徴的な革命都市だった。

アサド政権が勝利目前と書き記したが、実際は異なる。戦争が終息するにはまだ先は長い。アサド政権がシリア全土を統一したわけではない。クルド人が主に支配権を確立しているシリア北東部、そして唯一の反体制派が拠点としているイドリブ県が残されている。民衆蜂起直後、数カ月以内にアサド政権は崩壊するだろうと予測した西側諸国の思惑とは裏腹にアサド大統領は7年以上が経過した今も権力の座に留まっている。 続きを読む

シリアのおさらい

シリア情勢は複雑だと一般には言われています。確かにその通りなのですが、民衆蜂起から現在に至るまで、時系列で物事を眺めていくと、それほど道に迷うことなく、すんなりと理解できます。ただ、2011年3月から現在までのシリアでのニュースを拾い集めるとなると、膨大な労力と時間が費やされます。仮に今、2016年9月、「シリアを勉強しよう!」と思った方がいるとしたら、それは大変な作業になります。2012年3月からシリア情勢を眺め続けている僕でも、何とか追いつけている状態です。息切れしてます。こんな記事を見かけたので、補足を交えて紹介したいと思います。

http://www.nytimes.com/2016/09/19/world/middleeast/syria-civil-war-bashar-al-assad-refugees-islamic-state.html

1 シリアで行われている戦争とは何か

今行われている戦争は4つの層で構成されています。まず最も核となるのがアサド政権と反体制派です。さらに両者はシリア人と外国人で組織されています。両者の基本的な意見の相違はアサド大統領を政権から追い出すか、残留させるかです。

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最も成功を収めている者たち-クルド人の圧倒的な存在感-

マンビジが人民防衛隊(YPG)を主体としたシリア民主軍(SDF)によって解放されました。包囲された町で徹底抗戦を誓ったイスラム国は皆殺しにされたのでしょうか。それとも降伏したのでしょうか。映像をいくつか見ているのですが、陥落したマンビジの市内は戦闘の傷跡は生々しいですが、イスラム国の姿かたちは映像にはあまり出てきません。僕が訪れたコバニは戦闘が終結して2カ月が経過したにもかかわらず、ミイラ化したイスラム国の遺体が町中に数多く野ざらしにされていました。

https://www.theguardian.com/world/2016/aug/19/isis-civilians-syria-manbij-human-shield

昨日、金曜日にSDFが公開した写真です。車両が点在しており、周囲には無数の人影が見えます。イスラム国の戦闘員ですが、SDFの許可を得て、堂々と撤退しています。なぜSDFは許可を与えたのか。それは車両には戦闘員の他に一般市民も紛れています。イスラム国は住民を人間の盾、人質にして、マンビジからの安全な退路を確保したようです。

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アレッポとマンビジ

ここ最近のシリアでの大きな戦闘は二つあると思います。アレッポとマンビジです。2015年4月、コバニに訪れた際に、何人かの住民から「家族がマンビジでダーイシュに捕えられている」と聞きました。今回の作戦で彼らの家族は無事に解放されたのか気になります。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-36995759

マンビジはシリア北部の交通の要衝です。2年以上、イスラム国の強力な支配下に置かれていました。それが今回、クルド人(YPG、YPJ)主体のSDF(The Syria Democratic Forces )によってイスラム国から奪還されました。アメリカ率いる有志連合の空爆の援護を受けて、マンビジを包囲、イスラム国への投降を呼びかけたが拒絶、市街戦に突入し、先週の金曜から土曜、8割以上がSDFの支配下に置かれました。

http://www.kurdistan24.net/en/news/0b76a923-38d2-4292-b826-428235fbf911/Kurdish-led-forces-completely-liberate-Manbij–Syrian-Observatory

5月31日から開始されたマンビジ解放作戦は多くの死傷者を出しました。シリア人権監視団の報告によれば、432人の市民、そのうち104人が10歳以下の子供、54人の女性が亡くなりました。ただ、米軍主体の有志連合の空爆で、203人の市民、そのうち52人の子供と18人の女性が亡くなっています。半分程度が誤爆による死者になります。

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ロシアがシリアで成し遂げたこと

http://www.nytimes.com/interactive/2016/03/18/world/middleeast/what-russia-accomplished-in-syria.html?ref=middleeast&_r=0

NYTIMESが地図を用いて、ロシアの軍事介入以降のシリア情勢を分かりやすくまとめています。勢力範囲がどのように変化したのか。空爆はどの地域が激しくやられたのか。文章は多くないので、僕があれこれ説明する必要もないかなと思いますが、簡単に紹介します。

最初の地図は黄色が反体制派、赤がイスラム国と色分けされ、〇の大小によって、空爆の激しさを示しています。ロシアはイスラム国への空爆を積極的に行っていないという指摘が幾人かの識者の方から聞こえましたが、それなりにやっています。ただ、それ以上に反体制派への空爆が容赦ないので、そちらが目立っているのでしょう。

二枚目が今述べたことを踏まえた地図です。青がアサド政権、赤がイスラム国になります。三枚目が青がアサド政権と彼らを支持する民兵等々、黄色が反体制派です。やはり目立つのがアレッポとイドリブです。特にアレッポはイスラム国と反体制派から戦略的に重要な供給ラインなどを奪取しています。ラタキアも反体制派の支配地域を縮小させ、アサド政権の牙城が強化されました。

最後の地図が衝撃的でした。緑がクルド人勢力になりますが、めっちゃ元気です。ロシアの空爆から僅か半年で、これほど勢力範囲を広げたのには驚きです。にもかかわらず、和平協議では招待されることなく、蚊帳の外に置かれています。それに反感を抱いたのか、PYD(民主統一党)が3地区(アフリン、コバニ、ジャジーラ)の連邦制を宣言しました。

http://www.theguardian.com/world/2016/mar/20/syria-opposition-geneva-peace-talks-mohammed-alloush

こちらは反体制派の交渉役の一人で「イスラム軍」の政治部門担当のモハンマド・アルーシュのインタビューです。アサド政権と国際社会への不満を語っています。和平協議、さらなる進展は望めそうにもありません。ただ、今日、イドリブで暮らしているシリア人とチャットしてたんですが、ここ最近、静かだそうです。停戦はある程度の効力は発揮しているみたいです。

5年目を迎えた民衆蜂起-It’s a war on normalcy-

シリアの報道が過熱する中で、全ての記事に目を通すことは僕にはできません。なので、もしかしたら、僕が見落としていただけかも知れませんが、ここ1年ほど海外メディアからの現場報道がなかったのですが、遂にCNNがやってのけました。もちろん、アサド政権側からの取材はありましたが、そうではなく、反体制派エリアからのルポでは久しぶりです。

http://edition.cnn.com/2016/03/14/middleeast/syria-aleppo-behind-rebel-lines/index.html

Clarissa Ward記者。女性です。ニカブで顔を覆い隠して、拘束や誘拐の危険性を除去しています。場所はイドリブとアレッポ。イドリブはここ最近、自由シリア軍とヌスラ戦線が揉めています。アレッポはブログでも紹介したように、現在アサド政権が支配地域を広げ、唯一使える反体制派のルートは一つだけ。空爆で負傷する市民、憤慨する市民、戦闘員や医師、彼らはシリアの惨状を世界に伝えようと必死です。少し長文ですが、シリアを外からではなく、内から理解する非常に参考になる記事です。 続きを読む

アメリカの行き詰まり-クルド人勢力とスンニ派勢力-

シリアで勢力範囲を飛躍的に拡大している組織があります。それがクルド人部隊、YPGとYPJです。YPGとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Gel‎」、YPJとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Jin‎」、その頭文字を取っています。日本語であれば、人民防衛隊と訳されます。YPGが男性戦闘員、YPJが女性戦闘員となります。

去年の4月、私はシリアの小さな町、コバニを訪れました。コバニはクルド人の支配地域です。イスラム教には寛容というより、宗教の匂いは一切なく、彼らを結び付けている民族の力強い連帯感を肌身を通して感じました。ただアラブ人と同じで外からの人間に対してはとても優しく、歓待されました。そのクルド人がシリア内戦で非常に重要な立ち位置にいます。 続きを読む

ハフィントンポスト-Charles Listerによるレポート-

http://www.huffingtonpost.com/charles-lister/not-just-iraq-the-islamic_b_5658048.html

6月10日、イスラム国がイラク第二の都市モスルを制圧した。8月2日にはヤジディ教徒が多数暮らす町Sinjar、3日には Zumar, Wana、そしてAin Zalahの油田と精油所、7日はキリスト教徒が多数暮らすQaraqosh、the Mosul Dam、クルド人自治区の主都アルビルから30キロ足らずの距離に位置する二つの村、GhwarとMahmourも支配下に置いた。しかし、イラクに限らず熱戦を繰り広げているのがシリアである。

ホムス県の Al-Shaer gas fieldを押さえたのが7月17日、警備員、労働者、政府軍、ざっと270名が殺害された。7月26日にガス田から撤退したイスラム国は重火器、及び15両の戦車を戦利品として持ち去った。

7月24日からイスラム国はSAA(Syrian Arab Army)とアレッポ、ラッカ、ハッサケで本格的に衝突し始めた。7月25日、ラッカにある政府軍の17師団基地が狙われた。26日にはハッサケの121連隊が撃退された。アレッポではKweiris Airbaseが爆撃され、8月6日はラッカの93旅団が制圧された。重要なことはSAAが弱体化しているという見方と並行してイスラム国は軍事施設を制圧することにより豊富な武器を保有していることである。 続きを読む

取捨選択はご自由に

以前にブログでThe Institute for the Study of War(ISW)の記事を紹介しました。政府軍はホムスに兵力を集中させ、自由シリア軍(FSA)を徹底的に叩くと。目的はレバノンからの補給ルートの遮断、同時にホムスから南北に繋がる重要な都市ラタキア、タルトゥース、ダマスカスへの進軍を阻止するためにありました。その作戦(破壊活動)は順調に行われているようです。

昨日、FSAがまた一つ、重要な拠点を失いました。Khalidiya地区。ハーリド・イブン・アル=ワリードの大モスクがある歴史的な都市です。‘‘the capital of the revolution‘‘の象徴として1年以上もFSAの支配下にありました。現時点で60パーセントから80パーセントが政府軍の手に落ちたと国営放送は報じています。革命以前は8万人を擁した賑やかな町並みは砲弾に見舞われ廃墟と化しました。2千人余りの人々が現在もこの町で暮らしているそうです。ちなみに今回のKhalidiya奪還作戦にもヒズボラの濃厚な影がチラホラと散見されます。ホムス攻略後は本格的にアレッポ制圧に乗り出すでしょう。 続きを読む

Mapping Syria’s rebellion

http://www.nytimes.com/2013/07/18/world/middleeast/momentum-shifts-in-syria-bolstering-assads-position.html?pagewanted=1&_r=4&ref=global-home

シリアの「今」が綺麗にまとめられている記事です。アサド政権が反体制派の領土を徐々に侵食していること。それに対抗するべき武器の援助が欧米諸国から得られないことへの自由シリア軍(FSA)の苛立ち。FSAが存在することで空爆や砲弾の嵐に見舞われ徹底的に破壊される町と市民のFSAへの憤懣、憤怒。一致団結して政府軍に対抗すべき反体制派勢力の内部での分裂。外国人勢力の存在。それに比べて政府側はロシア、イラン、レバノンのヒズボラの支援の下で、クサイルを陥落させ、窮地に立たされた首都ダマスカスに多少の安堵感をもたらした。この記事には触れられていないけど、エジプトの政変にもアサド政権にとっては追い風になっている。左団扇で余裕かましてるのかなあ。アサドさんは。 続きを読む