人として

シリアを取材して初めて心の底から伝えなきゃと思いました。以前までは伝えることは「取材に協力してくれた方々への礼儀」、「ジャーナリストとしての義務」という側面が強くありました。でも、初めてシリアを訪れ、そこで目にした光景は、ジャーナリストという職業とは関係なく、一人の人間として、伝えないといけないという思いが自然と湧き上がってきました。

これほどひどいことが行われているのに、どうして誰も助けてくれないのだろうか。一時的ではあれ、現場に身を置くと、そう感じます。この惨状を世界に伝えれば、状況は改善されるかもしれない。多くのジャーナリスト、市民記者、活動家がシリアの窮状を世界に訴えかけました。しかし、戦況は悪化し、死者は増え続けています。それでも報道は止みません。シリアの様子は毎日のように流れてきます。

報じたところで今すぐ戦火が止むわけではない。救いの手が差し伸べられるわけではない。でも伝えなきゃいけない。そう思わせているのは、ジャーナリストだからとかではなく、やはり人間だからだと僕は思います。戦争は殺し合いです。そこに人道だとか人権だとか甘い言葉は通用しません。でもただ殺されている人々を黙って見ていられないのが人だと思います。だから世界はシリアを報道し続けるし、僕もお金にはならないけれど、時間が許す限りブログを更新しています。

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取捨選択はご自由に

以前にブログでThe Institute for the Study of War(ISW)の記事を紹介しました。政府軍はホムスに兵力を集中させ、自由シリア軍(FSA)を徹底的に叩くと。目的はレバノンからの補給ルートの遮断、同時にホムスから南北に繋がる重要な都市ラタキア、タルトゥース、ダマスカスへの進軍を阻止するためにありました。その作戦(破壊活動)は順調に行われているようです。

昨日、FSAがまた一つ、重要な拠点を失いました。Khalidiya地区。ハーリド・イブン・アル=ワリードの大モスクがある歴史的な都市です。‘‘the capital of the revolution‘‘の象徴として1年以上もFSAの支配下にありました。現時点で60パーセントから80パーセントが政府軍の手に落ちたと国営放送は報じています。革命以前は8万人を擁した賑やかな町並みは砲弾に見舞われ廃墟と化しました。2千人余りの人々が現在もこの町で暮らしているそうです。ちなみに今回のKhalidiya奪還作戦にもヒズボラの濃厚な影がチラホラと散見されます。ホムス攻略後は本格的にアレッポ制圧に乗り出すでしょう。 続きを読む

ハトラでの虐殺

虐殺を行っているのは政府側だけではない。長期化する内戦により国土が疲弊し、人心は荒廃している。体制派vs反体制派という構図は、アラウィ派(シーア派)vsスンニ派という誤った方向へと置き換えられている。6月11日、デリゾール県の村、ハトラで虐殺が起きた。

ハトラで殺戮された村人は60名以上にのぼる。政府側によれば、大半が一般市民であり、武装勢力は少数だったと報じている。それに反して、シリア人権監視団は大半が武装勢力であり、戦闘に巻き込まれた一般市民が少数いると政府側との見解に相違が見られた。動画も出回っている。市民記者と思われる人物が撮影した映像には、焼失した家屋や「シーア派の家々に火を放て!」と命じる反体制派の声が入り込んでいる。その他にも「シーア派は駆逐されるだろう。ここはスンニ派のエリアだ。お前たちに入り込む余地はない」と声高に叫ぶ男の姿も見受けられる。

虐殺の発端となった事件がある。デリゾールの市民記者の話によれば、6月10日にハトラを拠点とするシーア派武装勢力が反体制派に奇襲をかけて、4人を殺害した。その報復としてハトラが狙われたようである。シーア派の住民およそ150名がハトラから政府軍の支配地域であるジャフラに逃げ込んだ。ハトラは1年以上も反体制派の支配下に置かれていたが、シーア派の住民が密かに武器を隠し持ち、今回の衝突へと発展した。

犯行に及んだ組織は反体制派側のヌスラ戦線とされる。スンニ派で構成され、世俗的な自由シリア軍とは対照的に、イスラムに対する厳格な姿勢を貫いている外国人武装勢力である。クサイルが政府軍とヒズボラの結託により陥落したことで、宗派間の争いはシリア全土に広がりつつある。また自由シリア軍が決起した去年の夏ごろから既に身を守るために武装する村人がちらほらと現れ始めた。スンニ派の地域に、またはシーア派の地域に、ポツポツと点在する他宗派、他宗教の村々である。彼らを体制派、反体制派で色分けして、根絶やしにしようとする勢力はシリアには存在する。しかし、家族を、子供を、友人を、恋人を、自分自身を守るために武装している村人を「敵」だと判断して殺戮するのは・・・まさに「虐殺」です。

今回のハトラでの虐殺、詳しい報道にはまだ接していません。60人以上が殺害されていますが、バニアスの400人から1000人と推定される死者数とは規模が違います。その分、報道が少ないのかと言えば、たぶん本質はそこではないと思います。つまり、反体制派が報じる情報量が体制派と比べて圧倒的に勝るという点だと思います。僕自身もフォローしている多くが反体制派の人間ばかりです。これでいいのかと考えています。国営放送なんてガン無視していますが、、、彼らも命がけの報道を行っているのは事実です。混沌とするシリア情勢、流れてくる情報を精査するのも難しいものです。

参考サイト

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/10117153/Syrian-rebels-accused-of-sectarian-massacre.html

http://www.thenational.ae/news/world/middle-east/syrian-rebels-target-shiites-in-village-massacre

バニアス虐殺、化学兵器-追加-

さて今日もせっせとシリアのニュースを漁ります。日本にいる限り、ニュースを読み解くぐらいしか僕にはできないから。少しずつアクセス数も増えてきているので、時間があるときはできる限り、ブログを更新できたらなあと思っています。シリアに興味を持っている人がいるだけでもうれしい。もっと日本のメディアの人たちはシリアを取材してほしい。ただ僕は同業者同士の繋がりがほとんどないから、案外、いろんな記者やカメラマンがシリアを取材してるのかも。

以前にバニアスでの虐殺について触れました。詳細は過去のブログを参照にしてください。最近、しばらく報道を見かけなかったのですが、BBCが昨日、この虐殺に関する記事を掲載してました。反体制派の市民記者が今回の虐殺の全容を明らかにするため、生存者から聞き取り調査をしています。BBCも生存者の女性から証言を取っています。 続きを読む

バニアスでの虐殺-追加-

先日、バニアスでの虐殺を取り上げました。宗派間の争いが激化している中で、ある映像が数日前に動画サイトに投稿されました。カニバリズム。そう呼んでいいのか分かりませんが、ホムス県のレバノンとの国境の町、クサイルでFSAの指揮官が政府軍の遺体から心臓と肝臓をほじくり出して、口にしました。実際に食したのかは定かではありませんが、単なるパフォーマンスにしては常軌を逸している行為であると、反体制派側からも批判の声が上がっています。

指揮官の名前はアブ・サッカル(ハリード・アル=ハマド)。彼が所属していた部隊がシリアの反体制派の主力であるファルーク旅団。しかし、去年の10月に除隊し、別の組織を彼自身が立ち上げた。オマル・アル=ファルーク旅団。彼の部隊は宗派間抗争が入り乱れるクサイルを拠点に戦果を上げた。レバノンとの国境沿いの町クサイルは武器の中継地としても反体制派として手放せない地域。政府側にとっても地中海に繋がるこのルートはアラウィ派の支持基盤を固める重要な砦になり、レバノンのヒズボラはシーア派の村々が点在するため、反体制派の進撃は食い止める必要がある。アブ・サッカルは宗派間抗争に積極的に関与しているとされる。映像からも彼のアラウィ派への憎悪が読み取れ、彼自身、レバノンのシーア派の村に迫撃砲を撃ち込んでいる。今回の映像から反体制派側である自由シリア軍、反体制派国民連合はすぐさま非難声明を出した。しかし、人肉を食らうほどの憎悪とはどのようなものなのだろうか。 続きを読む

バニアスでの虐殺

このブログでも書き記したバニアスでの虐殺、その詳細が明らかになりつつあります。ただし、第三者の目が行き届かない地域であり、客観的な視点で今回の虐殺を語ることはできません。それでも、大虐殺が起きたことは事実ですし、現時点で報告されているレポートから何が起きたのかを語ることは決して無駄ではないと思います。

政府軍と自由シリア軍との戦闘が今回の虐殺の発端となりました。バニアス郊外の村、バイダで政府軍、シャッビーハを乗せたバスが自由シリア軍に襲撃されました。死者は少なくとも7名、負傷者は30名を超えたと市民記者は報告しています。5月2日、政府軍による報復が始まります。5月4日までの3日間で死者は400名、行方不明者は300名を数えました。近郊のラス・アル=ナバにも戦火は広がり、700名が殺害されました。 続きを読む

今後のシリアの行方

シリア情勢を眺めていると、中東がどれほど複雑な地域なのかを痛感させられます。もちろんこれまで訪れた紛争地にも複雑な要素は絡み合っています。宗教、領土、民族、貧富、互いの利害関係も含めて、決して譲歩することができない部分が火種となって、紛争へと発展しています。シリアもそれは変わりませんが、規模がでかすぎて、ついていけない僕がいます。そもそも中東に関心を寄せたのも、シリア取材以降なんで、まだ1年足らずだし。ということで、中東専門家の方々にはこのブログは幼稚だったり、事実関係と異なっていたり、鼻で笑われる部分もあるとは思いますが、誤りがないようにあくまで主観は出来る限り控えて、海外の記事の引用を中心に更新していくように心掛けています。あとシリアに無関心な方に少しでも興味を抱いてもらえればと願っています。

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Massacre in Baniyas

先日、ダマスカス郊外のジャデーデ・アルトゥーズ・ファダル地区で400人を超える人々が殺害されたことを、ここでも述べましたし、海外のメディアでも報じられました。その僅か1週間後の5月2日、新たな虐殺が発生しました。映像や画像がFBやTWを通じて、現在も流れていますが、凄惨を極めます。目を覆いたくなるような光景です。女性や子供も容赦なく殺害されています。「slaughter with knives」。家畜を屠殺するかのように喉を抉られ、大量の遺体が村の至る所に山積みにされています。「burn alive」。狭い一室には焼け焦げて身元確認が困難な遺体が何十体と放置されています。ただし、第三者の目が一切行き届かない場所です。正確な死者数も分かりません。バニアスの革命評議会によれば、5月2日から続いている(現在進行形)殺戮で既に800人以上が殺されていると報じています。最終的には1000人を超えるのではとの市民記者からの絶望的な呟きも聞こえてきます。

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Massacre in Jdaydet Artouz Al-Fadl

日本語読みすると、たぶん「ジャデーデ・アルトゥーズ・ファダル」だと思います。初めて聞く名前の地区だったので、ダマスカスに詳しい知人に聞いたら、位置関係が把握できました。ダマスカス郊外になります。以前に手書きしたダマスカスの地図がありますが、そこにも書いてありました。マーダミーエに隣接する地区です。ちなみマーダミーエを挟んで反対側にあるのが、ダーリーヤ、ここでは去年の8月に300人以上が殺害されています。ジャデーデは二つの地区に分けられ、「ジャデーデ・アルトゥーズ」と「ジャデーデ・ファダル」があります。今回の虐殺の大半が「ジャデーデ・アルトゥーズ」で起きたと思われます。

虐殺された人数にも開きがあります。海外メディアは少なくとも80人~85人、SOHR(シリア人権監視団)は250人以上、LCC(反アサドを掲げる活動家の委員会)では6日間で450人が殺害されたと伝えています。そして国営放送のSANAは政府軍による虐殺を否定し、死者数の明示は避けて、テロリストを駆逐したと報じました。 続きを読む

ダマスカス

今朝、ツイッターを眺めていたら、ダマスカス郊外の町で85人以上が死亡というニュースが流れてきた。ロイターからの報道によれば、ダマスカス郊外の町Jdeidet al-Fadelで、政府軍が大量に町に流れ込み、住民を大量に殺害したというもの。シリア人権監視団は少なくとも80人が死亡したと報告している。この町は数日前から政府軍に完全包囲され、自由軍と激しい戦闘を繰り広げていた。そして昨日、包囲網が突破され、政府軍がなだれ込み殺戮が行われたらしい。250人から400人が殺害されたと報告する市民記者もいる。ただし、全容がまったく見えてこない。昨日だけでシリア全土で540名が命を落とし、そのうち470人ほどがダマスカスだとシリア人権監視団は報告している。 続きを読む