虐殺を行っているのは政府側だけではない。長期化する内戦により国土が疲弊し、人心は荒廃している。体制派vs反体制派という構図は、アラウィ派(シーア派)vsスンニ派という誤った方向へと置き換えられている。6月11日、デリゾール県の村、ハトラで虐殺が起きた。
ハトラで殺戮された村人は60名以上にのぼる。政府側によれば、大半が一般市民であり、武装勢力は少数だったと報じている。それに反して、シリア人権監視団は大半が武装勢力であり、戦闘に巻き込まれた一般市民が少数いると政府側との見解に相違が見られた。動画も出回っている。市民記者と思われる人物が撮影した映像には、焼失した家屋や「シーア派の家々に火を放て!」と命じる反体制派の声が入り込んでいる。その他にも「シーア派は駆逐されるだろう。ここはスンニ派のエリアだ。お前たちに入り込む余地はない」と声高に叫ぶ男の姿も見受けられる。
虐殺の発端となった事件がある。デリゾールの市民記者の話によれば、6月10日にハトラを拠点とするシーア派武装勢力が反体制派に奇襲をかけて、4人を殺害した。その報復としてハトラが狙われたようである。シーア派の住民およそ150名がハトラから政府軍の支配地域であるジャフラに逃げ込んだ。ハトラは1年以上も反体制派の支配下に置かれていたが、シーア派の住民が密かに武器を隠し持ち、今回の衝突へと発展した。
犯行に及んだ組織は反体制派側のヌスラ戦線とされる。スンニ派で構成され、世俗的な自由シリア軍とは対照的に、イスラムに対する厳格な姿勢を貫いている外国人武装勢力である。クサイルが政府軍とヒズボラの結託により陥落したことで、宗派間の争いはシリア全土に広がりつつある。また自由シリア軍が決起した去年の夏ごろから既に身を守るために武装する村人がちらほらと現れ始めた。スンニ派の地域に、またはシーア派の地域に、ポツポツと点在する他宗派、他宗教の村々である。彼らを体制派、反体制派で色分けして、根絶やしにしようとする勢力はシリアには存在する。しかし、家族を、子供を、友人を、恋人を、自分自身を守るために武装している村人を「敵」だと判断して殺戮するのは・・・まさに「虐殺」です。
今回のハトラでの虐殺、詳しい報道にはまだ接していません。60人以上が殺害されていますが、バニアスの400人から1000人と推定される死者数とは規模が違います。その分、報道が少ないのかと言えば、たぶん本質はそこではないと思います。つまり、反体制派が報じる情報量が体制派と比べて圧倒的に勝るという点だと思います。僕自身もフォローしている多くが反体制派の人間ばかりです。これでいいのかと考えています。国営放送なんてガン無視していますが、、、彼らも命がけの報道を行っているのは事実です。混沌とするシリア情勢、流れてくる情報を精査するのも難しいものです。
参考サイト
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/10117153/Syrian-rebels-accused-of-sectarian-massacre.html
http://www.thenational.ae/news/world/middle-east/syrian-rebels-target-shiites-in-village-massacre