カラモン攻防戦

先月、スウェーデン国籍の記者と写真家が誘拐されたばかり。今度はスペイン国籍の記者と写真家がISISに誘拐された(拘束された?)。日時は9月16日だから3ヶ月ほど前になる。その間、誘拐犯と間接的に連絡を取り合っていたらしい。場所はISISが猛威を振るうラッカ県。FSAが4人付き添っていたが、彼らも拘束され、後に釈放された。国境なき記者団が「シリアはジャーナリストにとって世界で最も危険な紛争地である」と警告している。「Nothing venture, Nothing gain」。「A wise man keeps away from danger」。僕は言わずもがな後者です。ただwiseじゃなくてcowardだけど。

参考サイト http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-25314832

何週間にも渡って繰り広げられていたカラモン山脈での攻防戦。ヒズボラの支援により政府軍がある一定の勝利を収めた。ダマスカスとホムスを結ぶ高速道路がカラモン山脈沿いに走っている。地図を見ながらの方が分かりやすい。 続きを読む

犠牲者-ضحايا الحرب-

朝日新聞の村山祐介記者がシリアで取材を行っています。ダマスカス郊外のタダモン地区(去年7月中頃、ダマスカス総決起の中心地)やラタキアの虐殺現場、そして少し前に話題になったキリスト教徒が多数暮らす古都マアルーラ。政府軍の監視下とはいえ、精力的にシリア各都市を回られてるなあと感心しています。その他にも海外の記者がシリアから記事を配信していますが、CBSのElizabeth Palmer記者の取材が非常に興味深かったです。必見です。

http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=50155931n

シリア情報相のOmran Ahed Al Zoubiへのインタビュー、ダマスカス、ホムス、ダマスカス郊外で暮らす人々の様子などをレポートしています。特にダマスカス郊外の取材は命がけです。政府軍のガチガチに固められた監視網の中、反体制派地域に潜り込む。ジャーナリスト魂を感じました。「I will kill them. Everyone of them」。郊外で戦う地元FSAの若者の言葉です。 続きを読む

狡猾な体制派と揺らぐ反体制派

興味深い記事を見かけましたので、紹介しておきます。

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/10198632/Syria-disillusioned-rebels-drift-back-to-take-Assad-amnesty.html

シリアでの民衆蜂起、アサド退陣を掲げた市民による革命、そして内戦へと突入、去年のこの時期にダマスカスとアレッポでは自由シリア軍が総決起し、火の手はシリア全土に燃え広がりました。自由シリア軍がトルコの国境を次々と陥落させ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでアサド政権を窮地に追い込みました。しかし、ロシア、イラン、ヒズボラとアサドの影の立役者が暗躍し、加えて反体制派の強固な基盤も外国人勢力の台頭により腐食、表面化することが懸念されていた宗派、民族間の抗争も今ではシリア各都市で公然と繰り広げられ、誘拐、処刑、虐殺、略奪と目を覆うばかりの惨状が日々伝えられています。果たして革命とは何だったのか。疑問を胸に抱き、冷めた目で周囲を見渡したとき、彼らは現実に引き戻されて、愕然とします。 続きを読む

クサイル陥落後のホムスの現状

エジプトが燃え上がってる。これだけメディアで大々的に取り上げられるエジプトの今回の政変劇、中東にとっては見過ごすことができない重大な出来事なのか。中東に関わって僅か1年足らず、シリアの情勢を理解しようともがいている僕にとって、エジプトの影響力がどれほどなのか、計り知れず。ただ、先月の中ごろ、モルシ大統領が民衆を前にして、アサドとの決別を宣言し、聖戦に向けた反体制派へ支援が着々と進められていたかのように思われたけど、今回の一件で停滞しちゃうのか。「エジプトはナイルの賜物」。一度は足を運んでみたいなあ。

それでシリアに移ります。エジプトの影に隠れて目立った報道がされていませんが、シリア第三の都市ホムスが火を噴いています。反体制派から流れてくる動画は鳴り止まない銃声と数分間隔で飛来する砲弾、その中で暮らす市民の嘆きと破壊され尽くした町の様子。内戦に突入して以降、ホムスは絶えず激しい攻撃にさらされてきました。The Institute for the Study of War(ISW)からのレポートを紹介したいと思います。 続きを読む

クサイル陥落-追加-

政府軍とヒズボラによるクサイル奪還は反体制派にとって大きな打撃でしょう。反体制派はシリア全土で決起していますが、常に悩まされているのが武器の不足です。武器の密輸ルートとして考えられるのがヨルダン、トルコ、そしてレバノンになりますが、ヨルダン経由ならダッラー県、トルコ経由ならイドリブ県、アレッポ県、ラッカ県、レバノン経由はホムス県と区分されているように思われます。レバノン経由であるクサイルが潰されたことで、ホムス県を拠点としている反体制派勢力は一気に弱体化すると予測されます。それに比べて、政府軍はクサイルを奪還したことで、ヒズボラとの連携がより強固になった上に、ロシアやイランからの武器の支援も受けています。 続きを読む

クサイル陥落

政府軍が優勢なのは分かっていたけど、3週間足らずでクサイルが政府側の手に渡るとは。いや・・・3週間も持ちこたえたと言うべきなのだろうか。レバノンからクサイル経由でシリアに入国していた記者や写真家が多数いたけど、政府軍の手に落ちた以上、それも事実上不可能となる。これから先、政府軍と共闘したヒズボラがシリアの内戦にどこまで深入りしていくのかが、シリアの行方を大きく左右すると思う。既にアレッポには千人単位でヒズボラが集結しているという情報もあるし。

クサイルが制圧されたのが、水曜日の朝。前日に自由シリア軍が「町の50パーセントが政府側の手に渡った」と答えていたが、その時点で既に勝敗は決まっていたのだろう。自由シリア軍は市内からの撤退を決断し、クサイル郊外の村々を拠点に再びクサイルを奪還する腹積もりらしい。しかし、今回の戦闘で自由シリア軍を悩ませたのがモノ不足である。武器、弾薬、食料、医薬品、そして人員である。これまでのようにレバノンからクサイルを通じて流れていた人や物の流れが、クサイル自体が戦火に包まれ、補給ルートが完全に遮断された。逆ルートという発想もある。レバノンが駄目なら、シリア側からクサイルに人員や物資を送り込むという手段。しかし、これは不可能である。ホムス県唯一の反体制派地域がクサイルであり、周辺の都市は政府軍が守りを固めている。まさに陸の孤島。密輸ルートを確保しながら、クサイルから脱出するのが精一杯というのが実状だった。それでも、補給ルートが潰された状態で、3週間の踏ん張りはクサイルが地理的にも重要な都市だったからである。 続きを読む

クサイル攻防戦-追加-

5月19日から始まった政府軍と自由シリア軍との攻防戦が3週目に突入しました。ヒズボラの支援と圧倒的な火力を有する政府軍は徐々に自由シリア軍が築いた包囲網を侵食しています。懸念されるのがクサイル市内に取り残されている一般市民です。

今回の戦闘により、1500人ほどの負傷者がクサイルの医療施設で治療を受けています。クサイルの病院は真っ先に政府軍の標的にされ、負傷者は簡易 型の小さなクリニックに収容されています。数少ない医師と看護師による応急処置で辛うじて一命を取り留めている患者は少なくありません。どれだけ優秀な医 師でも治療するためには医薬品が必要です。しかし、クサイルの供給ルートは政府軍により完全に遮断されています。医薬品に限らず、日用品、食料すらも滞 り、インフラが破壊されているため、電気や水道の供給も脆弱です。

赤十字がシリアのアサド政権に、クサイルに取り残されている一般市民への救援物資の支援を申し入れていますが、外相のワリード・モアッレム(Walid Moallem)は「作戦が終了するまでは立ち入りを禁じる」と赤十字の提案を拒絶しています。

クサイルでは廃墟と化した家々の一部を改築して50軒ほどのクリニックを設置しています。それでも増え続ける負傷者に対応できるほどの人員も物資も ありません。今月スイスで開催予定のジュネーブⅡ。アサド政権の代表団が出席するはずですが、反体制派のシリア国民評議会は内部分裂が起きている上に、彼 らが申し入れている「ヒズボラのシリアからの撤退」と「アサド大統領の退陣」の条件を現政権が受け入れることは100パーセントありません。つまり、現時 点で会議が決裂することは目に見えています。対話で解決できるほどシリアの情勢は楽観的じゃない。誰の目から見ても明らかなはずなんだけど。

赤十字のアラブ版「赤新月(arab red crescent)」がシリア国内で活動しています。政府の監視下にあることはもちろんですが、決して政権側の人々だけに手を差し伸べるわけではありませ ん。バニアスの虐殺の際にも、赤新月は現地入りして、遺体の処理や負傷者の手当てを行っています。中立的に活動をしている国際医療団体です。反体制派が牛 耳っている町にも潜り込み、そこで暮らす人々の診療や物資の供給を行っています。そのため政府軍に拘束される職員も少なくありません。それでも彼らはシリ ア国内、ダマスカスを含めた危険な地域での活動を積極的に行っています。

“You save one soul, you see the smile of one child, it gives you power for months,”

命に貴賎はありません。体制派だろうと反体制派だろうと、彼らの仕事は命を救うことです。アレッポのダル・シファ病院での取材中、政府側の民兵 (シャッビーハ)が3名運び込まれてきました。頭や手足から血を流した瀕死の彼らを医師は当たり前のように治療を施していました。その様子を見て、思わず 涙が溢れ出た。でも、その1ヵ月後にダル・シファ病院は空爆され、その際に医師が1名と看護師が数人、犠牲になった。

参考サイト

http://www.reuters.com/article/2013/06/03/us-syria-crisis-icrc-idUSBRE9520MG20130603?feedType=RSS&feedName=worldNews

http://www.dailystar.com.lb/News/Middle-East/2013/Jun-03/219302-battle-for-qusair-enters-third-week-civilians-remain-trapped.ashx#axzz2V8l8ztBU

http://www.nytimes.com/2013/06/03/world/middleeast/syrian-red-crescent-volunteers-sidestep-a-battle.html?pagewanted=1&_r=0&ref=middleeast

続きを読む

クサイル攻防戦-追加-

「Hezbollah leader Nasrallah vows victory in Syria」

昨日、体制派がクサイルを絨毯爆撃しました。三方面からクサイルを包囲し、迫撃砲と空爆で市内各所を蹂躙しました。政府軍を支援しているのはヒズボラで、正確な数は発表されていませんが、既に数十人を越える死者がヒズボラ側に出ているそうです。彼らの遺体はクサイルから国境を越えて、レバノンに運ばれ、市民により盛大な葬儀が行われています。ヒズボラの関与は指導者であるナスラッラーが公式に認め、クサイルでの戦闘での敗北は今後のヒズボラの命運を大きく左右することになるでしょう。そのため、さらなる戦闘員がクサイルに送り込まれることは確実です。 続きを読む

クサイル攻防戦

先日、アブ・サッカルの話をしました。彼の蛮行は多くの非難を浴びました。彼自身はその後のインタビューで、「法の裁きを受ける覚悟はある。ただし、アサドと彼に従うシャッビーハも同じような裁きを受けなければならない」、「このままシリアで流血が続ければ、私のような人間はいくらでも現れるだろう」と述べています。その彼の部隊が展開している場所がホムス県のクサイルという町です。3日ほど前からクサイルでは双方による陣地の奪い合いが続いています。

双方とは体制派と反体制派です。体制派は政府軍とシャッビーハ、反体制派は自由シリア軍。それとクサイルでは体制派を後押しする強力な部隊も加わっています。ヒズボラです。ヒズボラがシリアの内戦に関与していることは以前から報道されてきましたが、小規模なものでした。しかし、クサイルが自由シリア軍の手に落ちて以降、シリア、レバノン領内のシーア派の村に迫撃砲が着弾するようになりました。死傷者も出る事態に危機感を募らせたヒズボラは(イスラエルの空爆にも神経を尖らせていたこともあり)盟友であるアサド政権を徹底的に支持することを誓います。それが先月のヒズボラ指導者のナスラッラーの演説になります。そして彼の演説は今回のクサイル攻防戦へと繋がります。クサイルを自由シリア軍から奪還すれば、少なくとも国境沿いのシーア派の村が攻撃にさらされる心配はなくなります。同時にクサイルは首都ダマスカスとアラウィ派が拠点とする地中海沿いの地域一帯を結ぶ重要な町です。ここを潰せば、反体制派への物資の補給や人員の補充を厳しくなり、政府側にとっても今後の戦況を有利に運べるようになるのは確実です。両者の思惑が合致し、クサイルは火の海に包まれました。 続きを読む