シリアの行方-トランプ勝利で何かが変わるのか-

シリア情勢は毎日のように見ていますが、アメリカの大統領選の結果によって何かシリアに変化がもたらされるのか、それについては無関心でした。ヒラリーだろうとトランプだろうと、アメリカのトップが変わっても、シリアには直接の影響はないだろうと感じていました。でもトランプ勝利とシリアを関連付けた記事を多く見かけます。それらを紹介できればと思います。

https://www.theguardian.com/world/2016/nov/11/syrian-opposition-left-with-nowhere-to-turn-after-trumps-victory

シリアの反体制派の政治家、軍の司令官はヒラリーへの期待を膨らませていました。彼女は反体制派への支援が国益につながると主張していました。一方、トランプはアサド政権への支持を打ち出し、ロシアへの賞賛を表明していました。トランプは反体制派を無差別に爆撃するロシアを支持し、そこに残る人々への降伏を望んでいます。

アメリカの指導者が変われば、イスラム国に対する攻撃姿勢にも変化が現れると反体制派の政治家は予測しています。しかし、イスラム国に関してはこれまでのスタンスを維持する傾向に思われますが、オバマ政権が70近い反体制派の部隊に訓練と限られた武器を提供してきた政策には影響が及ぶだろうと推測されます。なぜなら、トランプがその政策に対して懐疑的だからです。

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シリアのおさらい

シリア情勢は複雑だと一般には言われています。確かにその通りなのですが、民衆蜂起から現在に至るまで、時系列で物事を眺めていくと、それほど道に迷うことなく、すんなりと理解できます。ただ、2011年3月から現在までのシリアでのニュースを拾い集めるとなると、膨大な労力と時間が費やされます。仮に今、2016年9月、「シリアを勉強しよう!」と思った方がいるとしたら、それは大変な作業になります。2012年3月からシリア情勢を眺め続けている僕でも、何とか追いつけている状態です。息切れしてます。こんな記事を見かけたので、補足を交えて紹介したいと思います。

http://www.nytimes.com/2016/09/19/world/middleeast/syria-civil-war-bashar-al-assad-refugees-islamic-state.html

1 シリアで行われている戦争とは何か

今行われている戦争は4つの層で構成されています。まず最も核となるのがアサド政権と反体制派です。さらに両者はシリア人と外国人で組織されています。両者の基本的な意見の相違はアサド大統領を政権から追い出すか、残留させるかです。

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アルカイダを育てた肥沃な大地-ヌスラ戦線-追加-

現在発売中の「新潮45」8月号に記事を掲載しています。僕自身について書かせていただきました。フリーを始めてから現在に至るまでの経緯を振り返っています。読者の方には「誰だ?こいつ」と思われているかもしれませんが、このブログを見ていただいている方であれば、多少は僕のことをご存じだと思うので、もしよろしければ目を通していただければ幸いです。

http://www.huffingtonpost.com/entry/under-pressure-syrias-rebels-face-al-nusra-quandary_us_578bbd07e4b0e7c8735055e4

以前にも取り上げたCharles Listerからの記事になります。アレッポの反体制派の中心地へと繋がる唯一の補給路が遂にアサド政権の手に落ちました。内側に取り残されている人々は300000人以上であると推測されています。封鎖されてから数日が経過して、燃料や食糧が枯渇し始め、果物、野菜、肉が市場から消え、食料の値段も400パーセントの上昇率を見せています。シリア全土で600000人がアサド政権、反体制派、イスラム国などに包囲されていますが、今回の一件で一気に900000人に増加しました。兵糧攻めだけでなく、樽爆弾、ミサイル攻撃はなおも続いており、活動家、支援団体は緊急の援助を求めていますが、国際社会の反応は芳しくありません。 続きを読む

誰が味方で誰が敵なのか-アレッポ・イドリブ-

反体制派の地域であれば、誰もが手を取り合って「反アサド」を標榜している。そんな希望のある時代は終わりました。イスラム国の台頭により、「反アサド」に「反イスラム国」が加わりました。そして、現在はさらに「反ヌスラ戦線」、「反ジュンディ・アルアクサ」などのアルカイダ系勢力が市民の中に浸透しつつあります。こちらの記事を詳しく見ていきます。

http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/06/syria-aleppo-idlib-assassinations-oppposition.html

タイトルは「Who is killing Syrian opposition figures in Aleppo, Idlib?」です。答えは簡単じゃないかと思われる方もいるかもしれません。反体制派の重要人物を殺害するなんてアサド政権とそれに追随するロシア、イラン、ヒズボラだろ。あとはイスラム国か。でも、反体制派が殺害されている場所は反体制派地域であり、暗殺は空からではなく、仕掛け地雷だったりします。明らかに反体制派内に修復できない亀裂が走っています。政権側の人間は手を叩いて喜んでいることだろうと思われます。 続きを読む

自由シリア軍とヌスラ戦線との深まる軋轢

停戦以降、シリア各地で反政府デモが盛り上がりを見せました。民衆蜂起の熱気を彷彿とさせるような反政府集会です。しかし、イドリブ県ではこのデモを巡って、穏健派と呼ばれる自由シリア軍とアルカイダ系勢力であるヌスラ戦線が対立しました。僕もツイッターで軽く見ていた程度ですが、結構、現地では大きく揉めているようです。その詳細を見ていきたいと思います。

http://foreignpolicy.com/2016/03/29/the-syrian-revolution-against-al-qaeda-jabhat-al-nusra-fsa/

FSA(自由シリア軍)のDivision 13を率いるAhmed Saoud大佐はトルコの港湾都市であるイスケンデルンでインタビューに答えました。「デモは日を追うごとに規模は大きくなっていく。我々は1週間ほどで町に戻り、アルカイダの野獣、ロバどもを町から追い出す」。この町というのはイドリブ県に位置するMaarat al-Nu’manです。 続きを読む

5年目を迎えた民衆蜂起-It’s a war on normalcy-

シリアの報道が過熱する中で、全ての記事に目を通すことは僕にはできません。なので、もしかしたら、僕が見落としていただけかも知れませんが、ここ1年ほど海外メディアからの現場報道がなかったのですが、遂にCNNがやってのけました。もちろん、アサド政権側からの取材はありましたが、そうではなく、反体制派エリアからのルポでは久しぶりです。

http://edition.cnn.com/2016/03/14/middleeast/syria-aleppo-behind-rebel-lines/index.html

Clarissa Ward記者。女性です。ニカブで顔を覆い隠して、拘束や誘拐の危険性を除去しています。場所はイドリブとアレッポ。イドリブはここ最近、自由シリア軍とヌスラ戦線が揉めています。アレッポはブログでも紹介したように、現在アサド政権が支配地域を広げ、唯一使える反体制派のルートは一つだけ。空爆で負傷する市民、憤慨する市民、戦闘員や医師、彼らはシリアの惨状を世界に伝えようと必死です。少し長文ですが、シリアを外からではなく、内から理解する非常に参考になる記事です。 続きを読む

アメリカの行き詰まり-クルド人勢力とスンニ派勢力-

シリアで勢力範囲を飛躍的に拡大している組織があります。それがクルド人部隊、YPGとYPJです。YPGとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Gel‎」、YPJとはクルド語で「Yekîneyên Parastina Jin‎」、その頭文字を取っています。日本語であれば、人民防衛隊と訳されます。YPGが男性戦闘員、YPJが女性戦闘員となります。

去年の4月、私はシリアの小さな町、コバニを訪れました。コバニはクルド人の支配地域です。イスラム教には寛容というより、宗教の匂いは一切なく、彼らを結び付けている民族の力強い連帯感を肌身を通して感じました。ただアラブ人と同じで外からの人間に対してはとても優しく、歓待されました。そのクルド人がシリア内戦で非常に重要な立ち位置にいます。 続きを読む

アレッポ北部の攻防戦

和平協議による事態の打開は虚しくも崩れ落ちました。日程がずれ込み、誰も期待していない最中で開催されましたが、数日後には一時中断を宣告されました。今月末に再開されるようですが、シリアでは戦火は衰える兆しは一向に見られません。

http://www.theguardian.com/world/2016/feb/05/syrian-refugee-numbers-continue-to-build-on-turkish-border

数万人のシリア人が難民となってトルコとの国境に押し寄せています。しかし、トルコ側は国境を封鎖したまま、難民は行き場を失っています。和平協議が行われている最中に、アレッポではアサド政権とその協力者、ヒズボラ、イラク、イランのシーア派民兵が地上から、空からはロシアが尋常ではない空爆を行い、反体制派の支配地域の奪還に乗り出しました。特にロシアの空爆は数分置きに無差別に爆弾が投下され、町や村を薙ぎ払いました。多数の死傷者が出ました。 続きを読む

Frontline-Syria’s Second Front-

Frontlineで気合の入ったシリアルポが取り上げられていました。2013年4月9日の「Syria Behind The Lines」から1年ほどが経過しての待望の新作です。必見です。

http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/syrias-second-front/#a

こちらから視聴できる方はいいのですが、僕は制限がかけられていて見られないので、Youtubeにアップロードされるのをじっと待ち続けていました。

http://www.youtube.com/watch?v=vAopr8vIIIA

2部構成となっています。「Syria’s Second Front」と「Children of Aleppo」です。 続きを読む

カラモン攻防戦-追加-

http://www.reuters.com/article/2014/02/14/us-syria-crisis-homs-scene-idUSBREA1D0HR20140214

ホムスの反体制派支配地域から1500人近くが避難していますが、政府側が提示した条件から外れた避難者(15歳から55歳までの男性)が数百人拘束されています。容疑が晴れた者は解放されているようです。旧市街には依然として1500人の反体制派の人間と1000人近い市民が残っています。避難者の列に向かって居残り組みの住民がこんな言葉を投げつけています。「You’ve sold out Homs!」。また政府側は避難を促進するための甘言を垂れています。

“Those who have broken the law will answer to the law. But if you come to the state and say ‘I’ve made a mistake, I was wrong’, then that is it. It’ll be over. Don’t worry.”

「法を犯した者は法の下で裁かれるだろう。しかし、こちら側(アサド政権)に来て、『私が間違ってました』と自らの罪を認めれば、それで全て終わりになるだろう。何も心配することはない」。この「over」の意味をどう解釈すればいいのだろうか。「生」か「死」か。ホムスの住民は究極の選択を迫られています。 続きを読む