レバント征服戦線を標的に-アサド政権と最も敵対する組織-

これは以前からずーと指摘されていることです。アメリカはイスラム国と平行してレバント征服戦線(旧ヌスラ戦線)を標的にしています。上位に位置する指導者をピンポイントで殺害するほどの執着です。これには現地のシリア人からも反感を買っています。なぜならレバント征服戦線(JFA)はアサド政権と最も果敢に戦果を交えている反体制派勢力だからです。その解説になります。

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/obama-directs-pentagon-to-target-al-qaeda-affiliate-in-syria-one-of-the-most-formidable-forces-fighting-assad/2016/11/10/cf69839a-a51b-11e6-8042-f4d111c862d1_story.html

オバマ大統領はペンタゴンに強い要求を突き付けている。アルカイダと繋がりがあると指摘されるヌスラ戦線の指導者を殺害するようにと。ヌスラ戦線は長年に渡り、アサド政権と敵対してきた勢力である。にもかかわらず、執拗に標的にするのはなぜなのか。

オバマ大統領の高官はこう答えている。ヌスラ戦線は今でこそシリア国内で反体制派勢力の一員としてアサド政権と戦火を交えているが、いずれは国内から国外、ヨーロッパへとテロの矛先が向かうだろう。この発言から察するに、オバマ政権はアサド大統領の退陣を望むよりもヌスラ戦線によるグローバルテロリズムを警戒していることがうかがえる。

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停戦の行方

http://www.aljazeera.com/news/2016/09/syria-scores-killed-air-strikes-truce-deal-160910135209691.html

昨日、イドリブ市でロシアによる空爆がありました。標的にされたのは住宅街と市場です。イード(犠牲祭)を目前にして、市場には多くの買い物客がいました。死者は55人に上りました。さらにアレッポでは9人の子供を含めた46人が政府軍の空爆で犠牲になりました。これらの攻撃はアメリカとロシアがシリア内戦の終結に向けた協議に進展があったことを告げた、数時間後の出来事です。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/syria-peace-russia-us-assad-isis-al-nusra-a7236361.html

アメリカとロシアとの協議、その結果で導き出されたシリア内戦終結への道。仮に実行に移されるとしたら、大きな進展です。ロシアはアサド政権に反体制派地域への空爆を止めるように圧力をかける。なぜならアサド政権の空爆の最大の犠牲者は戦闘員ではなく一般市民だからです。ケリー国務長官は述べます。

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ヌスラ戦線からレバント征服戦線へ

7月28日、ヌスラ戦線がアルカイダから決別し、新たな組織を立ち上げました。「Jabhat Fateh al-Sham, or “the Front for the Conquest of the Levant.”」。アラビア語だと「جبهة فتح الشام‎‎」。日本語だと「ジャブハ」が「戦線」、「ファトフ」が「征服」、「シャーム」が、、、ダマスカスを「アッシャーム」と言いますが、ここではシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナを含めた地域の「シャーム」だから、「シャーム征服戦線」か「レバント征服戦線」ですか。頭文字を取って、「JFS」と記すことにします。ヌスラ戦線の最高司令官「Abu Mohammed al-Jolani」の素顔も公開されました。本名は「 Ahmed Hussein al-Shara」です。1984年生まれ、シリア南部のダラー出身です。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/nusra-al-qaeda-split-syria-jihad-jabhat-front-a7161321.html

ロシアとアメリカを筆頭に「ヌスラ戦線」はアルカイダ系に属するテロリスト集団に色分けされていました。それが、「ヌスラ戦線」を叩く理由にもなりました。しかし、今回、アルカイダから脱退したことで、この根拠は事実上は破綻しました。黒を基調とした国旗は柔らかな白へと変わりました。アルカイダの頭目であるザワヒリは今回の決定に神のご加護をと承諾しています。 続きを読む

アルカイダを育てた肥沃な大地-ヌスラ戦線-追加-

現在発売中の「新潮45」8月号に記事を掲載しています。僕自身について書かせていただきました。フリーを始めてから現在に至るまでの経緯を振り返っています。読者の方には「誰だ?こいつ」と思われているかもしれませんが、このブログを見ていただいている方であれば、多少は僕のことをご存じだと思うので、もしよろしければ目を通していただければ幸いです。

http://www.huffingtonpost.com/entry/under-pressure-syrias-rebels-face-al-nusra-quandary_us_578bbd07e4b0e7c8735055e4

以前にも取り上げたCharles Listerからの記事になります。アレッポの反体制派の中心地へと繋がる唯一の補給路が遂にアサド政権の手に落ちました。内側に取り残されている人々は300000人以上であると推測されています。封鎖されてから数日が経過して、燃料や食糧が枯渇し始め、果物、野菜、肉が市場から消え、食料の値段も400パーセントの上昇率を見せています。シリア全土で600000人がアサド政権、反体制派、イスラム国などに包囲されていますが、今回の一件で一気に900000人に増加しました。兵糧攻めだけでなく、樽爆弾、ミサイル攻撃はなおも続いており、活動家、支援団体は緊急の援助を求めていますが、国際社会の反応は芳しくありません。 続きを読む

誰が味方で誰が敵なのか-アレッポ・イドリブ-

反体制派の地域であれば、誰もが手を取り合って「反アサド」を標榜している。そんな希望のある時代は終わりました。イスラム国の台頭により、「反アサド」に「反イスラム国」が加わりました。そして、現在はさらに「反ヌスラ戦線」、「反ジュンディ・アルアクサ」などのアルカイダ系勢力が市民の中に浸透しつつあります。こちらの記事を詳しく見ていきます。

http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/06/syria-aleppo-idlib-assassinations-oppposition.html

タイトルは「Who is killing Syrian opposition figures in Aleppo, Idlib?」です。答えは簡単じゃないかと思われる方もいるかもしれません。反体制派の重要人物を殺害するなんてアサド政権とそれに追随するロシア、イラン、ヒズボラだろ。あとはイスラム国か。でも、反体制派が殺害されている場所は反体制派地域であり、暗殺は空からではなく、仕掛け地雷だったりします。明らかに反体制派内に修復できない亀裂が走っています。政権側の人間は手を叩いて喜んでいることだろうと思われます。 続きを読む

アルカイダを育てた肥沃な大地-ヌスラ戦線-

Charles Listerからのシリアの分析記事になります。たまに批判されたり、誤りを指摘されたりしていますが、内戦に陥ったシリアを継続的に分析されている一人かと思います。僕も学ばせていただいています。

http://www.thedailybeast.com/articles/2016/07/06/al-qaeda-reaps-rewards-of-u-s-policy-failures-on-syria.html

戦争と外交とは密接な関係にあります。しかし、一方でシリアの現状を見れば、もはや話し合いから有意義な結果を導き出すこと、ましてや解決など望めません。アサド政権は敵対勢力を嘲るか殺戮すること以外には政治的な解決など考えていません。一方で、彼を支持する側の人間に対しては、彼の身の安全を確保するために命を危険にさらしてでも防衛させます。

にもかかわらず、アサド政権の生存に大きな利益を施しているのは、アサド自身でもなく、ロシアでもイランでもヒズボラでも、さらにイスラム国でもなく、実はアルカイダなのです。5年の歳月が流れ、政略的な硬直状態に陥り、過激的な思想が徐々に表明化していく中で、シリア内戦の火種を沈静化しようとする欧米諸国の失策からアルカイダは利益を得ていました。アルカイダとはアルカイダ系のヌスラ戦線を示します。ヌスラ戦線は今年に入り、3000人以上のシリア人の戦闘員を獲得しました。 続きを読む

シリアを伝え続けた二人の市民記者

ご無沙汰していました。約3カ月ぶりにブログを更新します。ツイッターでは度々、近況やシリアのことなどを呟いていました。4月中旬から5月末までトルコに滞在していました。またありがたいことに、拙著「シリア 戦場からの声」が山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞しました。光栄なことです。ただ、今後、シリアを訪れる予定はありません。そのため、今はぽっかりと胸に穴が空いたかのように、考え事ばかりしています。なぜシリア行きをあきらめたのか。これまでも様々な障壁がありましたが、それでも何とかして入国してきました。でも、現在のシリアは誰が敵で誰が味方なのかが把握できない状態です。

今回、久しぶりの書き込みは、ある二人の市民記者の悲報を耳にしたからです。Hadi al-AbdullahとKhaled al-Essaです。Khaled al-Essa(24 or 25)はイドリブ北西の小さな町、Kafranbel or Kafr Nablの出身です。6月16日、彼らが拠点としていたアレッポのアッシャール地区の自宅前で二人は仕掛け爆弾により重傷を負いました。すぐさまトルコに搬送されましたが、24日、Khaled al-Essaは殉教しました。Hadi al-Abdullahは様態は安定していますが、楽観視はできない状態です。

なぜ二人が標的にされたのか。アッシャール地区は反体制派の支配地域です。僕が2012年11月にアレッポに滞在した際、メディアセンターはこの地区に設置されていました。前線からは多少の距離があり、アサド政権側に入り込む余地はありません。二人はシリアでの民衆蜂起から内戦に至る中で、常にアサド政権の暴力をメディアを通して伝えてきました。しかし、今年に入り、反体制派のアルカイダ系勢力と言われるヌスラ戦線にも反感を抱き始めました。

2016年2月、Hadi al-Abdullahは公然とヌスラ戦線を非難しました。「ヌスラ戦線はアルカイダから離れる意思がないばかりでなく、彼らのエゴのために他の反体制派組織との共闘も考えていない」。またKhaled al-Essaは故郷がヌスラ戦線支配下に置かれたことに不満を抱いており、ヌスラ戦線による住民への人権侵害を訴えかけていた経緯がありました。二人がアサド政権だけでなく、ヌスラ戦線からも煙たがられていたのは事実です。誰に狙われたのか。ヌスラ戦線は特に声明を出しているわけでもなく、現在は調査中ということです。

今月の26日にはイスラム国が5人の市民記者を処刑しました。その他にも報道されることを好まない反体制派組織は少なくありません。Syrian Network for Human Rights (SNHR)によれば、2011年3月から2015年4月までの統計で、463人の市民記者が殺害され、1000人以上が拘束、または誘拐されています。シリア人ですら、身の安全を確保できない状況下で、果たして外国人がシリア内部からレポートできるでしょうか。2015年4月のコバニでの取材を終えて、僕は一冊の本を書き上げました。なぜなら、今後、シリアには入れないだろうという漠然とした感覚があったからです。正解でした。もう二度とシリアには入れないかもしれない。残念で仕方がありません。

http://www.aljazeera.com/news/2016/06/reporting-syria-direct-threat-160628061015960.html

https://now.mmedia.me/lb/en/commentaryanalysis/567144-did-jabhat-al-nusra-assassinate-syrian-activist-khaled-al-issa

自由シリア軍とヌスラ戦線との深まる軋轢

停戦以降、シリア各地で反政府デモが盛り上がりを見せました。民衆蜂起の熱気を彷彿とさせるような反政府集会です。しかし、イドリブ県ではこのデモを巡って、穏健派と呼ばれる自由シリア軍とアルカイダ系勢力であるヌスラ戦線が対立しました。僕もツイッターで軽く見ていた程度ですが、結構、現地では大きく揉めているようです。その詳細を見ていきたいと思います。

http://foreignpolicy.com/2016/03/29/the-syrian-revolution-against-al-qaeda-jabhat-al-nusra-fsa/

FSA(自由シリア軍)のDivision 13を率いるAhmed Saoud大佐はトルコの港湾都市であるイスケンデルンでインタビューに答えました。「デモは日を追うごとに規模は大きくなっていく。我々は1週間ほどで町に戻り、アルカイダの野獣、ロバどもを町から追い出す」。この町というのはイドリブ県に位置するMaarat al-Nu’manです。 続きを読む

5年目を迎えた民衆蜂起-It’s a war on normalcy-

シリアの報道が過熱する中で、全ての記事に目を通すことは僕にはできません。なので、もしかしたら、僕が見落としていただけかも知れませんが、ここ1年ほど海外メディアからの現場報道がなかったのですが、遂にCNNがやってのけました。もちろん、アサド政権側からの取材はありましたが、そうではなく、反体制派エリアからのルポでは久しぶりです。

http://edition.cnn.com/2016/03/14/middleeast/syria-aleppo-behind-rebel-lines/index.html

Clarissa Ward記者。女性です。ニカブで顔を覆い隠して、拘束や誘拐の危険性を除去しています。場所はイドリブとアレッポ。イドリブはここ最近、自由シリア軍とヌスラ戦線が揉めています。アレッポはブログでも紹介したように、現在アサド政権が支配地域を広げ、唯一使える反体制派のルートは一つだけ。空爆で負傷する市民、憤慨する市民、戦闘員や医師、彼らはシリアの惨状を世界に伝えようと必死です。少し長文ですが、シリアを外からではなく、内から理解する非常に参考になる記事です。 続きを読む

誘拐について

紛争が長引けば長引くほど、治安は乱れます。住む家を失い、職を失い、家族を失い、希望を失えば、真っ当な人間でも悪事に手を染めます。真っ当ではない人間は治安の乱れに乗じて、金の匂いを敏感に嗅ぎ付け、積極的に悪事を働きます。打開策が見いだせないまま戦闘に明け暮れている兵士たちは敵側の弱みを握るため、卑劣な手段に訴えかけます。長期化した紛争地に誘拐は付き物です。

http://www.bbc.com/news/world-europe-30838375

2014年7月にアレッポ北部で誘拐されたaid workerのイタリア人女性2人が解放されました。16日の早朝にイタリアの首都ローマの空港に降り立ち、Paolo Gentiloni外相の出迎えを受けました。1500万ドル(16億ぐらい?)をイタリア政府は誘拐犯に支払ったされるが確証は得られていません。 続きを読む