飢えに苦しむ人々

民衆蜂起から武装闘争へと発展する中で、アサド政権が各地域で頻繁に行われた作戦が兵糧攻めです。補給路を断つ。互いの勢力が拮抗している地域であれば、補給路の寸断は容易ではありません。しかし、一つの大きな勢力の中にポツリと存在する敵対勢力には効果を発揮します。僕が思い浮かぶ中でも、ダマスカスのヤルムーク地区、マーダミーヤ地区、ホムスの旧市街、その他にもドゥーマなんかもそうですし、アサド政権が強い地域ではたいてい兵糧攻めは行われています。今回取り上げるのは、ダマスカス郊外の町、マダーヤです。

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/war-in-syria-up-to-40000-civilians-are-starving-in-besieged-madaya-say-campaigners-a6793386.html

マダーヤは半年に渡るアサド政権の包囲網により、数百人が飢えに苦しんでいます。首謀者はアサド政権と共闘するヒズボラです。住民は飢えをしのぐため、雑草や昆虫、猫さえも口にしてきました。新年を迎えた日、活動家のNasir Ibrahim(仮名)は家族に食事を与えるために手入れたのは僅か50gのライスだけでした。 続きを読む

6人の証言者たち-5年目を迎えたシリアの行方-

税務署で確定申告を終え、市役所で保険と年金の切り替えを行い、郵便局で転居届を提出し、歯医者で入れ歯の調整をして、ようやく一息ついたところで、ふと空を見上げると、綺麗な青空が広がっていました。もうじき、春かあ。

http://www.theguardian.com/world/live/2015/mar/12/syria-crisis-four-years-on-a-day-of-in-depth-reports-and-analysis

英紙ガーディアンがシリアの今を振り返った過去の記事をまとめて掲載しています。「Impact of the crisis」、「Diplomatic and political crisis」、「Refugee crisis」、「Video and interactive guides」、「Islamic State 」、「Future prospects」の6項目。丹念に記事を拾っていきたいのですが、それほどの余力が今の僕にはないので、一つだけ気になった記事を簡単に紹介できたらと思います。 続きを読む

アサドの微笑み-追加-

BBCがアサドとの単独インタビューに成功しました。生のバッシャール・アル・アサドです。必見です。出来れば、テキスト化してほしい。リスニングだけだと聞き取れない箇所が多々あるから。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-31327153

インタビュアーはJeremy Bowen。冒頭からアサドに鋭い突っ込みをしています。シリアは国家が破綻(failed state)しているのではないか。もちろんアサドは否定します。外部からの勢力に土地を奪われているんだ。そして我々は国土を防衛するために戦っているんだ。さらに革命当初に話を移し、平和的なデモへの対処にシリア政府の過ちはなかったか。アサドは完全に否定はしませんが、デモ参加者にも問題があった(兵士や警察官を殺害していた)と述べています。 続きを読む

写真と共に綴られる激戦地-ドゥーマ-

ドゥーマの現状-AFPからのレポート-

http://blogs.afp.com/correspondent/?post/syria-s-hospital-of-horrors

私が暮らしている町は反体制派の拠点です。ダマスカス北東部に位置する人口20万人の町、ドゥーマ。既に1年以上もアサド政府軍によって包囲されています。毎日のように地上からも空からも銃弾と爆弾が降り注ぎます。またドゥーマも含めたグータ地域は2013年の8月、化学兵器が使用され、甚大な被害をもたらしました。 私が撮影した「病院」はドゥーマの地下に設営された簡易型の医療施設です。グータ地域から搬送される負傷者はここで選別されます。軽傷であればその場で治療を施し、重傷であればさらに別のより整備された病院へと運ばれます。 続きを読む

ゴーストタウン-アレッポ-

こんな映像がツイッターから流れてきました。

https://www.youtube.com/watch?v=-CvMOqnGo4U

両親がいない子供たちは自力で食糧を見つけなければいけません。この映像が事実なのか、それとも言わされているのか、第三者の目が不在であるため確認は取れません。ただ実際にダマスカス周辺の反体制派地域では飢えに苦しんでいる市民が大勢います。政府軍による兵糧攻めによって。

https://www.youtube.com/watch?v=H1QXZy2ajmA&feature=youtu.be

こちらはダマスカス郊外のドゥーマの映像です。政府軍の砲撃により17人が命を落としました。多数の負傷者も見受けられます。食料だけでなく、砲撃や空爆が容赦なく反体制派地域には降り注いでいます。その翌日も砲撃により、幼い子供とその祖父が亡くなりました。こちらは自己責任での閲覧でお願いします。

https://www.youtube.com/watch?v=Rv0p3GIQ0E8

ガザ情勢の報道が過熱しています。そのためシリアに関する記事が隅に追いやられている気がします。ガザとシリアが報道の度合いに差があるのは、理由は様々あれど、一番なのは外国のメディアが不在なのが大きいかなと思います。以前はシリアにも多くの海外メディアがいましたが、今はほぼ皆無です。取材ビザでアサド政権側から入国している記者はいますが。 続きを読む

シリアでの取材

長らく更新していませんでした。理由はアクセス制限がかけられており、帰国するまで解除ができなかったからです。現地から日記形式で書き綴る予定だったんですが。

今回、トルコからシリアへと入国しました。詳しい入国ルートに関してはここでは説明を省きます。正規であれば、紹介できるのですが、今回は少し違ったルートを使ったので。 シリアには1ヶ月滞在していました。あんなことやこんなこと、いっぱいありました。お世話になったのはジェイシュ・アル=ムジャヒディーンという反体制派組織です。詳しくはこちらに掲載されています。 続きを読む

安定からは程遠いシリアの実情

http://www.nytimes.com/2014/04/06/world/middleeast/break-in-syrian-war-brings-brittle-calm.html?ref=middleeast&_r=0

Anne Barnard記者からの報告です。彼女のツイッターをフォローしていますが、ダマスカスの写真が頻繁にアップされていました。

ダマスカスの雰囲気が変化したことは明白である。この文章から始まる彼女は首都ダマスカスの様相を「Brittle Calm(儚げな静けさ)」と形容しています。風船から空気が漏れ出すように町から警戒感が薄れつつある。検問は縦横無尽に張り巡らされているが、歩哨は穏やかで冗談が飛び交うほど市内は落ち着いているように見える。 続きを読む

運び屋-News Smuggler-

終わりの見えないシリアの内戦は3年目に突入し、祖国を捨てて近隣諸国に逃げ込む難民の数は膨れ上がるばかりである。トルコのハタイ県に属するレイハンリも例外ではない。しかし、難民都市レイハンリには別の顔がある。それが、市民記者が集う都市レイハンリである。

省略、意訳しています。僕の誤訳もあると思います。出来れば原文を。ただこの記事に興味を持ってくれる読者が少数だろうと感じて、長い文章だけど邦訳してみました。僕自身は素晴らしい内容の記事だと思いますが。

http://www.newrepublic.com/article/115020/syrias-news-smugglers-they-go-where-professional-journalists-wont

SMC(Syrian Media Center)にはシリア各地で起きている出来事が映像や写真付きで送られてくる。SMCが抱える100人以上の情報屋(活動家)が命がけで撮影してきた動画や静止画である。オフィスで煙草を燻らせながら、編集作業に追われているのは市民記者の一人ワシム(26)である。編集された映像はツイッター、フェイスブックに掲載され、運が良ければBBCやアル・ジャジーラに拾われる。 続きを読む

ラタキアでの虐殺

アサド政権の極悪非道ぶりばかりをこれまで伝えてきましたが、先日、HRWから反体制派による虐殺に関するレポートが発表されました。詳しい報告書もダウンロードできます。

http://www.hrw.org/node/119717

少なくとも190人以上が殺され、200人以上が人質として誘拐されました。全て一般市民です。アラウィー派が居住する村で2013年8月4日に虐殺が行われました。実行犯とされるのは、the Islamic State of Iraq and Sham(ISIS)とJaish al-Muhajireen wal-Ansar(ムハジリーン)の二組織。どちらも外国人勢力による犯行です。人質の大半が女性と子供で、まだ解放には至っていません。 続きを読む

処刑されるという事について

以前にブログで「死にかけた」体験談を語らせていただきました。今回は本題に入る前に「殺されかけた」体験談を少し語らせていただければと思います。カシミール、アフガニスタン、パキスタン、シリアに足を運んで、殺されかけたのはたったの一度だけです。場所はインドですが、カシミールではありません。西ベンガル州の州都カルカッタから約120キロ離れた小さな町ミドナプル。ここでマオイストの自警団に処刑されかけました。

マオイストについての説明は省きます。「インド軍の掃討作戦でマオイストが一名殺された」。地元の新聞社から連絡を受けた僕は地元記者と共に現場に急行しました。しかし、現場とされた場所に入るには村人の許可が必要であり、1時間ほど待たされました。ようやく許可が下り、村人の先導に従って僕はぬかるんだあぜ道を歩き始めました。15分ほど経過した頃、バイクにまたがった2人組みの若者がこちらに近づいてくるのが見えました。5、6人の記者と写真家がいましたが、彼らは私の姿を見つけると、突如怒鳴り声を上げました。彼ら2人は私の所持品であるカメラバッグ、パスポート、現金(3000ドル)を奪い取り、記者からは「抵抗するな。とにかく動くな」と忠告され、黙って従いました。 続きを読む