シリアへの素朴な疑問-支援とは何か-

ガーディアンのシリアに関する記事は着眼点が素晴らしいと思います。以前に紹介した国連の使途不明金もそうですが、今回はよく話題に上がる「支援」の行方について分析しています。国連への痛烈な批判です。原文を推奨します。

https://www.theguardian.com/world/2016/oct/28/syria-aid-relief-effort-key-questions-guardian-briefing

・シリアではどれほどの人々が支援を必要としているのか

支援が必要とは物資が届かないことであり、つまり包囲されている地域で暮らす人々がその判断基準になります。「包囲」の基準には3つあります。武装組織に包囲されている。人道支援が継続的に行き届かない。病人や負傷者が自由に出入りできない。

国連の推定では17の地域で586200人が包囲下で暮らしています。4880000人が厳しい状況下に置かれています。これに対して、民間団体のSiegeWatchは39の地域で996975人が包囲下で暮らしていますが、この数字にアレッポ東部の275000人は含まれていません。さらに21の地域でアサド政権によって包囲されるかもしれない可能性を指摘しています。さらにある別の団体によれば、アレッポを含めれば、1500000人が包囲下で生活を余儀なくされていると報告しています。同じ数字を出している組織にMSFもあります。

続きを読む

アサド政権の最大の支援者-国連の存在意義-

国際連合の世界での役割とは何なのか。第二次世界大戦の反省を踏まえて、国際連盟から国際連合へと形を変えて、国際平和を願い設立された組織。手元にある細谷雄一氏の「歴史認識とは何か」を参照にすれば、国連憲章第七章第三十九条において、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する」とあります。そして、第四十二条では「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる」と書かれており、軍事的な制裁も可能です。ただし、国際連合の常任理事国には拒否権という便利なツールがあり、実際に発動することは困難です。

そして時間の経過と共に、シリアでは国連の存在などまったく無視され、次から次へと様々な国が軍事介入に乗り出しています。トルコも先週から自由シリア軍と共闘して、ジャラブロス制圧、さらにイスラム国とは名ばかりに、クルド人撃退のためマンビジを奪還するとかしないとか、そんな情報まで飛び交っています。

続きを読む

民衆蜂起から内戦へ-難民の現状と課題-

ムジャヒディーン軍の死者は僕の知り合い2名を含めて、計17名。その他の別の組織にも多数の死者が出ました。今回の衝突は規模が大きなもので、ロイターでも記事になっていました。

http://www.reuters.com/article/2015/02/19/us-mideast-crisis-syria-aleppo-idUSKBN0LM0PW20150219

場所はアレッポ。少なくとも政府軍70名、反体制派勢力80名が死亡しました。アレッポからトルコに至るルートを政府軍が攻めこむことで衝突が起きました。道路は遮断され、別ルートを模索する反体制派と政府軍がさらに衝突、現在も戦闘は続き、死者の数は双方共に増える模様です。 続きを読む

シリア情勢

イスラエルの影に隠れているシリア情勢ですが、最近の出来事を読み解きたいと思います。とはいっても、帰国してからバタバタしっぱなしで、僕もシリアの動向にはそれほど詳しくありません。そんなときに役立つのがロイターです。

http://www.reuters.com/places/syria

ここを見れば、大ざっぱなシリアの動きが目で追えます。政治的な動きとしては、国民連合と国際連合のトップが入れ替わったことでしょう。

シリア国民連合の議長に選出されたのは Hadi al-Bahra氏です。1959年、ダマスカス生まれ、サウジアラビアで病院、メディア、ソフトウェア関連の会社を経営するビジネスマン。「我々の革命の根幹は揺るがないだろう。我々が求めるものは自由と尊厳である」とイスタンブールの記者会見で述べています。そんな彼は今年1月末から2月中旬の和平会議「ジュネーブ2」の責任者を務めていました。 続きを読む

和平交渉の意義

イランと欧米との話し合いに関しては、特に詳しい報道を見ているわけではないので、語ることはできませんが、シリアでの体制派と反体制派との和平交渉、延期が続いていますが、なぜこれほど固執するのか僕には分かりません。とりあえず、化学兵器使用の罪人を交渉の場に招くなど正気の沙汰であり、招くのならば国際司法裁判所の方が適切です。というのは個人的な意見なので、和平交渉に関する記事を読んで、その大切さを実感できればと思います。

http://www.huffingtonpost.com/2013/11/25/syria-peace-talks-iran_n_4338841.html?1385410496

イランの核活動を遅らせることで妥協に至った今回のイランと欧米との協議。全てのものが今回の核協議を一つのお手本としてイランを含めた形で動き出すだろうと専門家が指摘しています。アメリカとロシアが主導するシリアでの暴力を停止するための和平交渉「ジュネーブ2」。バン・ギムン国連事務総長が1月22日に開かれるだろうと月曜日に声明を発表しました。「この機会を逃すことは許されることではないだろう」と力強い決意を述べています。 続きを読む

シリアでの死者数の詳細データ

動画を一つ紹介します。

http://www.youtube.com/watch?v=foaQ5RdoY5Y&feature=youtu.be

これまで何度かブログでも取り上げたダマスカス近郊のジョーバル地区での出来事です。英訳が表示されていますが、一応、簡単な説明を付け加えます。政府軍の兵士が女性を拉致し、暴行を加えた上で、半裸の状態で銃弾飛び交う国道のど真ん中に放置。政府側の仕掛けたワナであることを承知の上で、果敢にも自由シリア軍の兵士が彼女に駆け寄る。しかし、彼女に近づいた途端に銃声が鳴り響く。それでも彼は諦めず彼女を抱きかかえるが、途中で銃弾を浴びて殉教した。彼女もしばらくしてその場で亡くなり、彼の他3名が同じように命を落とした。 続きを読む

化学兵器使用による世論の反応

昨日、首都ダマスカスのメッゼ地区でハラキ(Wael Nader Al-Halqi)首相を標的としたテロが発生した。自爆テロなのか自動車爆弾なのか即席地雷なのか、手法は定かではないが、ハラキ首相の護衛を含む数人が死亡した。首相自身は無傷であり、その後に開かれた経済会議に出席、インタビューに答える姿が放映されている。

昨年の8月、アサド政権から離反し、ヨルダンに逃れたヒジャブ(Riyad Farid Hijab)元首相の後任として、ハラキ氏は首相に任命された。両首相共にスンニ派の家系である。メッゼ地区は政府関係者の住居や施設が多いため、警備が非常に厳重なことで知られる。1年前の滞在の際に僕も何度かこの地区を訪れた。当時は和やかなムードで、市内には活気が溢れ、ショッピングを楽しむカップルや家族連れで賑わっていた。今回のテロによる犯行声明は現在のところ出ていない。しかし、数ある検問を潜り抜け、しかも首相をピンポイントで狙ったことから、政権中枢に潜む内部犯行説が濃厚である。 続きを読む

シリア難民

戦争が起きれば、必ず難民が発生します。彼らは生まれ育った村や町、そして国まで捨てて安全な場所を追い求めて、彷徨します。車を所有している者は家財道具を詰め込み、移動手段を持たない者は、二本の手足を頼りに、着の身着のまま逃げ出します。国家そのものが崩壊し、全土が戦火に包まれているシリアでは、難民が大量に発生しています。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計によると、現時点で、登録されている難民の数は、1,078,656人。難民認定はされていないが、そうだと疑われる人々を合わせると、1,324,308人。シリアの人口が約2千2百万(21,906,000)。死者数が約10万人。行方不明者、数十万人。この統計を見るだけで、シリア内戦がいかに深刻な状況下に置かれているかが理解できます。国内避難民に関しては、調査自体も適切に行える環境でないために、難民の数はさらに増える可能性が十分に考えられます。

難民はシリアの隣国へと流れています。シリアと国境を接する国は5カ国。トルコ、レバノン、イスラエル、ヨルダン、イラク。レバノンが最も多く、続いてヨルダン、トルコ、イラクと続きます。ただし、最近ではヨルダンへの難民の数が急増しています。難民キャンプの設置にも多額の資金が必要となるため、受け入れ先によっても対応が異なります。シリアから逃れても劣悪な環境下で暮らしている難民が多くいます。男女の比率は半々。しかし、18歳以下の子供が半分を占めているとされ、その中でも多くが両親、もしくは父母どちらかと離れ離れで暮らしているという報告もあります。

資金面で彼らを支援している国のトップはやはりアメリカ($67,030,000)、次にEUが来て、3番目に位置するのが、日本です。$26,000,000、この数字は全体の支援金の18%に当たります。アフガニスタンに足を運んだ際、よく現地の人々に謝意を述べられました。日本は国連、NGOを通じて、資金面だけでなく、食料や衣料品 医薬品、生活必需品、インフラ整備などを紛争国に提供しています。普段、日本で暮らしていては気がつかないことですが、「日本人」というブランド力は世界を通じて非常に高いです。シリアでもその価値は変わりません。ただし、GDP(国内総生産)から割り出されるgenerous(寛大で気前のよい真意ある)寄付金という面では非常に低いですが、まあ、堅いことは抜きにして、シリアに日本も貢献していることは確かです。

アレッポに滞在していると、多くの人々が家財道具を軽トラの荷台に積み込み、町を離れていく光景を目にします。まるで日本で見かける引越しと同じ。でも彼らはどこに向かうのだろうか。

参考サイト

http://www.guardian.co.uk/news/datablog/2013/mar/06/syrian-refugee-crisis-in-numbers

http://data.unhcr.org/syrianrefugees/regional.php

http://www.savethechildren.org.uk/news-and-comment/news/2013-03/half-syrias-one-million-refugees-are-children