ロシアがシリアで成し遂げたこと

http://www.nytimes.com/interactive/2016/03/18/world/middleeast/what-russia-accomplished-in-syria.html?ref=middleeast&_r=0

NYTIMESが地図を用いて、ロシアの軍事介入以降のシリア情勢を分かりやすくまとめています。勢力範囲がどのように変化したのか。空爆はどの地域が激しくやられたのか。文章は多くないので、僕があれこれ説明する必要もないかなと思いますが、簡単に紹介します。

最初の地図は黄色が反体制派、赤がイスラム国と色分けされ、〇の大小によって、空爆の激しさを示しています。ロシアはイスラム国への空爆を積極的に行っていないという指摘が幾人かの識者の方から聞こえましたが、それなりにやっています。ただ、それ以上に反体制派への空爆が容赦ないので、そちらが目立っているのでしょう。

二枚目が今述べたことを踏まえた地図です。青がアサド政権、赤がイスラム国になります。三枚目が青がアサド政権と彼らを支持する民兵等々、黄色が反体制派です。やはり目立つのがアレッポとイドリブです。特にアレッポはイスラム国と反体制派から戦略的に重要な供給ラインなどを奪取しています。ラタキアも反体制派の支配地域を縮小させ、アサド政権の牙城が強化されました。

最後の地図が衝撃的でした。緑がクルド人勢力になりますが、めっちゃ元気です。ロシアの空爆から僅か半年で、これほど勢力範囲を広げたのには驚きです。にもかかわらず、和平協議では招待されることなく、蚊帳の外に置かれています。それに反感を抱いたのか、PYD(民主統一党)が3地区(アフリン、コバニ、ジャジーラ)の連邦制を宣言しました。

http://www.theguardian.com/world/2016/mar/20/syria-opposition-geneva-peace-talks-mohammed-alloush

こちらは反体制派の交渉役の一人で「イスラム軍」の政治部門担当のモハンマド・アルーシュのインタビューです。アサド政権と国際社会への不満を語っています。和平協議、さらなる進展は望めそうにもありません。ただ、今日、イドリブで暮らしているシリア人とチャットしてたんですが、ここ最近、静かだそうです。停戦はある程度の効力は発揮しているみたいです。

5年目を迎えた民衆蜂起-It’s a war on normalcy-

シリアの報道が過熱する中で、全ての記事に目を通すことは僕にはできません。なので、もしかしたら、僕が見落としていただけかも知れませんが、ここ1年ほど海外メディアからの現場報道がなかったのですが、遂にCNNがやってのけました。もちろん、アサド政権側からの取材はありましたが、そうではなく、反体制派エリアからのルポでは久しぶりです。

http://edition.cnn.com/2016/03/14/middleeast/syria-aleppo-behind-rebel-lines/index.html

Clarissa Ward記者。女性です。ニカブで顔を覆い隠して、拘束や誘拐の危険性を除去しています。場所はイドリブとアレッポ。イドリブはここ最近、自由シリア軍とヌスラ戦線が揉めています。アレッポはブログでも紹介したように、現在アサド政権が支配地域を広げ、唯一使える反体制派のルートは一つだけ。空爆で負傷する市民、憤慨する市民、戦闘員や医師、彼らはシリアの惨状を世界に伝えようと必死です。少し長文ですが、シリアを外からではなく、内から理解する非常に参考になる記事です。 続きを読む

飢えに苦しむ人々ーさらにさらに追加ー

“open-air prisons”。包囲された町は天井のない監獄と同等です。今週の火曜日、「Save the Children」が包囲網の中で苦しむ人々の様子を伝える報告書を出しました。いくつかのメディアでそのことに関しての記事が出ています。ここでは「independent」と「nytimes」から引用したいと思います。

http://www.independent.co.uk/news/world/europe/syria-civil-war-quarter-of-a-million-children-in-syria-at-risk-of-starvation-a6919761.html

http://www.nytimes.com/2016/03/09/world/middleeast/report-paints-dire-picture-of-besieged-syria-as-war-enters-6th-year.html

18の異なった地域でアサド政権、または反体制派によって包囲され、486700人の人々が飢えの脅威にさらされています。別の支援団体からの報告では190万人になるかもしれないという統計も出ています。しかし、停戦が発効した2月27日以降、いくつかの町や村に支援物資が搬送されました。15万人に食料や医薬品、燃料が届けられましたが、一時的なもので、支援ルートが完全に開放されたわけではありません。数週間分の食料が運び込まれただけで、その先は不透明です。 続きを読む

アレッポ北部の攻防戦

和平協議による事態の打開は虚しくも崩れ落ちました。日程がずれ込み、誰も期待していない最中で開催されましたが、数日後には一時中断を宣告されました。今月末に再開されるようですが、シリアでは戦火は衰える兆しは一向に見られません。

http://www.theguardian.com/world/2016/feb/05/syrian-refugee-numbers-continue-to-build-on-turkish-border

数万人のシリア人が難民となってトルコとの国境に押し寄せています。しかし、トルコ側は国境を封鎖したまま、難民は行き場を失っています。和平協議が行われている最中に、アレッポではアサド政権とその協力者、ヒズボラ、イラク、イランのシーア派民兵が地上から、空からはロシアが尋常ではない空爆を行い、反体制派の支配地域の奪還に乗り出しました。特にロシアの空爆は数分置きに無差別に爆弾が投下され、町や村を薙ぎ払いました。多数の死傷者が出ました。 続きを読む

和平協議に向けて

来月開催予定の和平プロセスに向けて一歩前進でしょうか。話し合いでシリア内戦が解決するとは思いませんが、たとえ結果が絶望的であろうとも、協議が行われるということで、一人でも多くの人々の命が救われればいいと僕は思います。それに水を差したのが先日のロシアによるイスラム軍司令官の殺害ですが、昨日、明るい(真っ暗闇の中にろうそくの炎が一本灯された程度ですが)ニュースが入ってきました。

http://www.nytimes.com/2015/12/29/world/middleeast/evacuations-aim-to-ease-path-to-talks-in-syria-war.html

国連と赤十字の斡旋のもとで反体制派最後の支配地域と呼ばれるダマスカス郊外のザバダーニから一般市民と負傷した戦闘員が救出されました。彼らは隣国レバノンに移送された後、トルコに向かう予定です。ただし、今回選ばれた人々は一部にすぎません。ザバダーニを含めた周辺は完全に政府軍とヒズボラに包囲されていますが、まだ住民と戦闘員は多数閉じ込められています。 続きを読む

シリア和平プロセス

和平への道筋を示したシリアのロードマップが国連安保理で全会一致で採択されました。民衆蜂起が大規模に始まった2011年3月以来、国際社会が足並みを揃えて、和平プロセスに賛同の意を示したのは初めてになります。

ケリー国務長官はこう述べています。「今回の安保理は全ての関心すべき事柄に対してはっきりとしたメッセージを送った。関心すべき事柄とは暴力の停止と長年に渡り被害を受けてきたシリアの国民が支持できる政府の基礎を形作ることである」。

ロシアとアメリカのシリアへの見解には食い違いが見られます。欧米諸国はアサド大統領の退陣を求めています。ロシアはアサド政権を支持しています。そのため今回の決議案ではこの両者の対立を避けることで一致をみました。つまりアサド大統領の今後については触れないということです。 続きを読む

責任の所在-ある若者の死-追加-

最近は読書とアラビア語に時間を費やしています。日本を離れる際に持参する荷物はリュックサック一つ。最低限の衣類や日用品とデジカメとパソコンでリュックはパンパンです。書籍を入れる余地なし。買い込んだアラビア語の参考書も持参できません。辞書ぐらいです。なので、今のうちに読み漁っています。ブログの更新が停滞している言い訳でした。

ロイターを開いてみたら、トップがこれでした。「Mediator Brahimi says Syria election now wont aid peace talks」。ブラヒミをMediatorとはロイターは皮肉っているのだろうか。シリアで選挙が実施され、バッシャールが三期目を務めることになれば、和平交渉が頓挫することをブラヒミは懸念しているようです。ただブラヒミを仲介者という立場から去るべきだという意見が一部の大使から出ているようです。話し合いは必要ですが、今はその時期ではない。前回の和平会議からブラヒミは何を学んだのでしょうか。ウクライナの件もあり、欧米とロシアの仲裁も望めないでしょう。 続きを読む

What is the Geneva II?

詳細までは分かりませんが、朗報です。ダマスカス近郊(中心地から僅か8キロ足らず)のヤルムーク地区に物資が搬入されました。ヤルムークはシリアでは最大のパレスチナ人居住区です。1957年に設立された非公式の難民キャンプですが、半世紀以上が経過し、今ではダマスカスの一つの地区として定着しています。それが・・・動画を二つほど掲載します。どちらも英訳が添えてあります。

http://www.youtube.com/watch?v=ryTVsOiOmCI

http://www.youtube.com/watch?v=-d76j9_18VY

2012年12月、反体制派がヤルムークの大半を制圧しました。政府軍は町一帯を包囲し、マーダミーヤと同じく兵糧攻めに転じました。昨年の9月から一切の物資が供給されず、この地区で暮らす住民、約18000人(人口は革命前の180000人から10分の一に激減)が飢餓の脅威に曝されていました。餓死者も多数出ています(少なくとも40人)。どの程度の食料や医薬品が市内に運び込まれたのかは定かではありませんが、悲報から朗報、後退から進展、微かな光が射し込みました。 続きを読む

和平交渉の意義

イランと欧米との話し合いに関しては、特に詳しい報道を見ているわけではないので、語ることはできませんが、シリアでの体制派と反体制派との和平交渉、延期が続いていますが、なぜこれほど固執するのか僕には分かりません。とりあえず、化学兵器使用の罪人を交渉の場に招くなど正気の沙汰であり、招くのならば国際司法裁判所の方が適切です。というのは個人的な意見なので、和平交渉に関する記事を読んで、その大切さを実感できればと思います。

http://www.huffingtonpost.com/2013/11/25/syria-peace-talks-iran_n_4338841.html?1385410496

イランの核活動を遅らせることで妥協に至った今回のイランと欧米との協議。全てのものが今回の核協議を一つのお手本としてイランを含めた形で動き出すだろうと専門家が指摘しています。アメリカとロシアが主導するシリアでの暴力を停止するための和平交渉「ジュネーブ2」。バン・ギムン国連事務総長が1月22日に開かれるだろうと月曜日に声明を発表しました。「この機会を逃すことは許されることではないだろう」と力強い決意を述べています。 続きを読む

What is to be done?

6月も今日で終わりか。来月、政府側と反政府側との話し合い「ジュネーブ2」は開催されるのだろうか。最近は、レバノン、第二の都市トリポリ、第三の都市シドン、宗派間抗争が激しさを増しています。シドンには足を運んだことはありませんが、トリポリには滞在したことがあります。旧市街の迷路のように入り組んだスークがダマスカスを彷彿とさせ、懐かしみを覚えました。でもレバノンの話題はとりあえず隅の方に置いておいて、シリアに移ります。

http://www.crisisgroup.org/en/regions/middle-east-north-africa/egypt-syria-lebanon/syria/143-syrias-metastasising-conflicts.aspx?utm_source=wu28june13&utm_medium=syria-report&utm_campaign=wuemail

International Crisis Group(ICG)からのシリアに関するレポート。冒頭でシリアでの血なまぐさい紛争(horrendous war)を解決するための4つの選択肢が提示されています。一つ目はリビアのような西欧による軍事介入により反政府軍の勢力図を拡大させること。二つ目は政府軍の勝利を受け入れ治安を改善させること。三つ目がアメリカとロシアの外交的解決策を模索すること。四つ目が政府側と反政府側、双方に海外勢が与して、シリア人を将棋の駒のようにして戦わせること。つまり代理戦争。既にその兆候は現時点で見え隠れしていますが。

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